新型コロナ がん治療にも影響…患者の不安
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、その影響はがん治療にも及んでいます。手術や治療計画の変更に不安を覚えるがん患者たち。医療現場の現状を取材しました。
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乳がんの女性(49)「コロナの影響で『病院内で4月中の手術の予定が組めなくなってしまった』と言われまして」
私たちが話を聞いたのは、胸に3度目の乳がんが見つかった女性。今年4月、都内の病院で手術を受ける予定でしたが、新型コロナウイルスの影響でおよそ1か月延期になりました。
乳がんの女性「(延期と聞いて)がんが大きくなってしまって他に転移してしまったらどうしようと、不安でしかなかったです」
彼女のように予定されていたがんの手術や治療計画が変更されるケースが相次いでいます。
神奈川県相模原市にある北里大学病院。ここは、新型コロナウイルスの重症患者を受け入れています。
北里大学病院 集学的がん診療センター・佐々木治一郎センター長「がんの中でも3か月ぐらい先の手術でも大丈夫な方はいらっしゃいますので、(手術を)延ばしても大丈夫な患者さんにお願いをして、(感染者受け入れのため)手術の件数を半分ぐらいに入院をだいたい3割ぐらい減らすという方針で行っています」
この日、診察を受けていたのは、神奈川県に住むステージ4の肺がんを患っている女性(55)。
佐々木センター長「今のこの状況だから(感染が)心配ですかね」
肺がんの女性「そうですね。外に行くと…」
佐々木センター長「病院に来るのも?」
肺がんの女性「どこにコロナの感染者がいるかわからないので」
不安を口にする患者に、佐々木医師はある提案をしました。
佐々木センター長「来月の外来を一つ飛ばして2か月後にしようと思うんですけど、それで大丈夫ですか?」
肺がんの女性「それでがんの方が大丈夫っていうのなら大丈夫」
佐々木センター長「そうだね、そこが心配ですよね。腫瘍マーカーというのを見ていくとずーっと正常化。実は今回最低値なんですね。なので、1か月おきでなくても、今のお薬を続けていればほぼ問題ない」
症状が落ち着いているためがんの薬物療法は続け、通院の間隔を2か月空けることになりました。
肺がんの女性「今コロナの方も怖いので、がんとの兼ね合いもみて、なるべくリスクがないような感じで進めていってほしかったので、(通院間隔が)延びたことは良かったと思います」
こちらはがんセンターの外来エリア。院内での感染リスクを下げるため、通院する患者の数を減らし、待合室が「密」にならないよう対策していました。
抗がん剤などを投与する治療室は、カーテンで仕切り、対面にならないよう配慮していました。
佐々木センター長「当然感染のリスクを減らすメリットと、がんの進行治療の計画性を損なってしまうというデメリットと、それをいかに医療者側が判断して『あなたは延ばして大丈夫』と言っているか、患者さんのことを一番知っているのは主治医なので、主治医とよく話し合って今の状況に従っていただくのが一番間違いがないのかなと思います」
がんの手術や治療計画の変更事例は、現状、命に関わるものではないといいますが、今後、感染者が増え続けた場合はどうなのでしょうか。
佐々木センター長「爆発的に感染が増えてきて、患者さんがあふれてしまうということになれば、一時的に診療のロックダウン、診療がしばらくできなくなることも十分あり得ます」
がん患者の命に影響を与えるような治療計画の変更があってはならない。がん治療の現場も危機感を募らせています。