生活保護基準額引き下げ「国の判断は違法」熊本地裁 受給者勝訴は2例目
生活保護の基準額が大幅に引き下げられたことは憲法に違反するとして、受給者が減額の取り消しを求めた裁判で、熊本地方裁判所は25日、「国の判断は違法だ」とする判決を言い渡しました。受給者の勝訴は大阪地裁に次いで2例目です。
この裁判は、2013年に行われた生活保護の基準額引き下げは「健康で文化的な最低限度の生活」などを保障する憲法に反するとして、熊本県内に住む40代から80代の受給者が熊本市など4市を相手に起こしたものです。裁判では、この決定による減額処分を取り消すよう求めています。
国は引き下げの理由について、デフレによる物価の下落のほか、最低賃金で働いた場合の収入が生活保護の受給額を下回る逆転現象を解消するためなどと説明しています。
裁判の争点はこの引き下げ決定が厚生労働相が持つ権限を超えたものかどうか。判決で、熊本地裁の中辻雄一朗裁判長は「厚労省は外部の専門家に諮ることなく引き下げを内部決定した。デフレ調整の根拠とした算定も客観性や合理性が担保されているとはいいがたい」と述べ、「引き下げの判断や手続きは厚生労働相の持つ権限を超えている」と違法性を認めました。
大阪に次いで2例目となる勝訴。主張が全面的に認められた原告は――
原告・浅井勝也さん「驚いた。次にうれしい。暑い日も寒い日もここで立って、みんなで頑張ってきた結果」
弁護団も判決を評価しました。
阿部広美弁護士「(勝因は)裁判官が生活保護を受給している世帯の生活の実態をきちんと見たんだと思う。きちんと検証した判決を熊本で出したということで、これから判決を迎える地域にも一定の影響があると考える」
被告の熊本市、玉名市、宇城市は「他の市や厚労省などと協議して対応を検討する」、荒尾市は「コメントを差し控える」としています。