×

鬼の出番は?広島・100年続く神楽団の存続の危機

2022年4月22日 12:45
鬼の出番は?広島・100年続く神楽団の存続の危機

広島県安芸高田市にある広森神楽団。親から子へと受け継がれながら100年以上続く神楽が、いま存続の危機に立たされています。その逆境に、子どもの頃から一緒に神楽を舞い続けてきた仲間たちが立ち向かいます。

「酒呑童子(しゅてんどうじ)なり!」災いを避けるため、神に舞を捧げてきた、神楽。その神楽団に災いが続く…長引く"禍"(わざわい)に、存続の危機。

100年以上の歴史を持つ、広森神楽団。親から子へと、引き継がれてきた。醍醐味(だいごみ)の一つが、このくるくる回る演舞だ。

金井さん「(目は)回らないですね。ただ不思議と楽がはやしていないと、どんなに熟練の人でも目が回るんです」

団長は家具メーカーに勤める金井勝さん。神楽の主役、酒呑童子を演じる。

金井さん「やっぱり神楽といえば鬼。鬼といったら酒呑童子」

広森神楽団は、いま存続の危機…

金井さん「練習積み重ねていても公演の場がなくて」

多くの神楽団が、毎週末、公演をしてきたが、長引くコロナの影響でおととし2月から、公演は中止に。

金井さん「お客さんがおらんくてとなったら、やっぱりちょっとずつ士気も下がってきますし」

神楽拍子の要となる大太鼓を担当する、聖川弘明さん。

酒呑童子を退治する武士、坂田金時(さかたのきんとき)を演じる、八重尾直都さんは、林業を営んでいます。3人は、こども神楽団の頃から神楽を舞い続けてきた、大切な仲間。

八重尾さん「やっぱり神楽やっていたから田舎に残ったっていう。神楽が好きっていうのもあるんですけど、金井くんとか、聖川くんとか。友情と言ったらなんか変っすけど。仲間との兼ね合いですよね」

大太鼓担当の聖川さんは、大腸がんと診断された。

聖川さん「CT撮ってエコー撮って『ここにがんがあるよ』って、『これががんだから』っていう感じで」

家族のため。神楽のため。早く病気を治したい。

聖川さん「臓器の近くに(がんが)あって手術できないらしいんですよ。手術をしてそのがんを取り除けるようになるっていうのが、一番の目標かな、希望というか…」

八重尾さんは、この年の春から持ち回りで、団長になっていた。

八重尾さん「本当に古い仲なので変に気を遣わないんですよ。聖川くんに対して病気じゃけぇどとか。今まで通りの付き合いのほうが、僕はいいかなと思って…」

この日久しぶりに、練習に訪れた大太鼓の聖川さん。

聖川さん「今日はボチボチ動けそうだったんで来てみました」

この時期、感染者数が落ち着いていたため観客を家族と地域の人たちに限定し、この練習場で、神楽を奉納することに。久しぶりの3人揃っての練習。聖川さんは、神楽拍子の勘を懸命に取り戻そうとしていた。

奉納神楽、本番の日。がんと闘っている聖川さんにとって1年ぶりの神楽。鬼、酒呑童子は金井さん。やはり鬼が登場してこその神楽だ!鬼を退治する坂田金時が、鬼の手を切り落とし、酒呑童子たちは退散する。コロナに振り回されながらも、なんとか神楽を奉納。

神楽のできない災いはまっぴら。今年、鬼の出番は!?

NNNドキュメント2022年2月6日放送『鬼の出番は?広島・コロナ禍の神楽団』(広島テレビ制作)を再編集しました。