地下鉄で“大地震”発生──どうする? 関東大震災直後の“地下鉄誕生”から続く取り組み 東京メトロ・最新車両「2000系」の対策は
今年は関東大震災から100年。この震災からわずか4年後に、日本初の地下鉄が東京に誕生しました。将来、首都直下地震の発生が懸念される中、地下鉄利用者の安全を守るため、様々な取り組みが行われています。
◆もし、地下鉄で大地震に遭遇したら?
東京・中野区にある東京メトロ中野車両基地にあったのは、丸ノ内線の「2000系」車両。2019年に導入され、丸ノ内線の開業当時に使用されたサインウェーブと呼ばれる波模様が描かれた新型車両です。
9路線180駅、一日におよそ522万人が利用するという東京メトロ。首都直下地震が懸念される中、もし、地下鉄で大地震に遭遇したら──。
記者
「いま画面が切り替わりました」
──ただいま地震のため停車しております。状況がわかり次第、ご案内をいたします。
東京地下鉄・鉄道本部 木暮敏昭安全・技術部次長
「お客様に安心していただくために、状況をお伝えすることになっています」
東京メトロでは震度4の場合、運転士が電車を停止。震度5弱以上では自動的に停止し脱線を防ぎます。そしてその後、点検を行います。
その点検の方法を決める上で重要なのが、沿線36か所に設置されている「エリア地震計」です。震度5弱以上になった区間は技術担当者が線路を歩いて点検、震度4以下は回送電車を走らせ安全確認を行うといいます。このように、震度に応じた点検方法で早期の運行再開を可能にしているということです。
◆もし停電し、暗い地下鉄で電車が止まったら、乗客は?
もし停電が発生し、暗い地下鉄で電車が止まったら、乗客はどうなるのでしょうか?
東京地下鉄・鉄道本部 木暮敏昭安全・技術部次長
「電車はその(停止した)あと、ゆっくりゆっくりと次の駅まで走って、そこでお客様を降ろすことになります」
停電の中、電車を動かすための“秘策”が車両の下にありました。
東京地下鉄・鉄道本部 木暮敏昭安全・技術部次長
「次の駅まで走ることができるよう、非常用の走行バッテリー」
東京メトロでは通常、導電レールから車両に電気を送って動かしていますが、停電時にはこのバッテリーから電力を供給して最寄りの駅まで自力で走行するのです。
さらに、乗客が線路上を歩いて避難する場合に備えた工夫も。線路からつながる階段が駅と駅の間が長い一部の区間に設置されていて、損傷などによって電車が動かない場合、乗客が線路を歩く距離を短くするためのものです。
◆「生命が最優先。都市機能の低下をおさえるのも、もうひとつの大事な使命」
日本で初めてとなる地下鉄の建設が始まったのは、関東大震災からわずか2年後の1925年。徹底的に地質調査を行い、トンネルを強固にするなど、地震などにより崩落することがないよう当時から対策が進められていました。
地震対策をさらに強化する大きなきっかけとなったのが、1995年の阪神・淡路大震災です。激しい揺れで地下鉄のホームやトンネルが崩壊したのです。その後、震災を教訓に耐震補強が進められています。
そのひとつとして、線路と線路の間にある中柱を鋼鉄のパネルで補強し、首都直下地震で想定される震度7クラスの揺れでも倒壊しないようにしています。
東京地下鉄・鉄道本部 木暮敏昭安全・技術部次長
「お客様の生命、社員の生命が当然、最優先で守らなければいけないもの。その上で、長期間、列車運行が停止してしまいますと、この東京の都市機能も低下してしまいます。できるだけ(都市機能の)低下をおさえることも、もうひとつの大事な使命であると思っています」
都心の大動脈を担う東京メトロ。安全・安心のための取り組みと地震後の早期復旧という両輪で地震対策を進めています。