サンマ「不漁」「燃料高」「ロシア情勢」の三重苦… ある船長「国からEEZに入るなら自己責任と…」
サンマの漁シーズンが始まり、各地で水揚げが続いています。今年も漁獲量は少ないと見込まれる上、ロシアとの関係悪化が、サンマに暗い影を落としています。
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香ばしいかおりが食欲をそそる“秋の味覚”と言えば、サンマ。
東京・新橋にある飲食店では、まだ今年の新サンマを仕入れず、去年の冷凍のサンマを使っています。
根室食堂 平山徳治オーナー
「(新サンマは)細くて小さくて、値段も高いんですよ。(産地の人は)『今年は、とれる感じがしない』と言ってました」
現場で一体何が起きているのか――。
サンマの水揚げ量“日本一”を誇る、北海道・根室市の花咲港に向かいました。
初物のサンマが水揚げされる中、漁業関係者から聞こえたのは、落胆の声でした。
漁業関係者
「細いですね。今年は(1匹)90g台。去年とかまで120~130gあったので、40gくらい違います」
2021年の全国のサンマ水揚げ量は、ピークだった2008年の5%ほどの約1.8万トンにまで減少し、3年連続で過去最低を更新しています。(全国のサンマ水揚げ量 2008年・約34.3万トン → 2021年・約1.8万トン 全国さんま棒受網漁業協同組合)
国の研究機関である水産研究・教育機構によると、今年も、日本近海の漁場に来るサンマの量は低い水準にとどまり、サイズは去年より小さくなると見込まれています。
根室市内の鮮魚店でも、小ぶりなサンマが並んでいました。
買い物客
「本当にどうなるんでしょうかね。根室もこんな小さいサンマで。つくだ煮にするよりいくらか大きいかなぐらいで」
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サンマの不漁に加え、今年はさらに追い打ちをかける事態が起きています。
サンマ漁船の船長が心配するのは、ロシアのウクライナ侵攻による日ロ関係の悪化です。
第三十八千代丸 前山浩章船長
「ロシアとの関係が、心配は心配ですね」
現在、サンマの漁場ができているのは、北海道から東に1000キロ以上離れた海域です。根室から最短ルートで向かうと、ロシア側が主張するEEZ(=排他的経済水域)を通ることになります。そのため、ロシア当局に拿捕(だほ)されたり、「臨検」と呼ばれる船の検査を要求されたりする可能性もあり、ここを迂回(うかい)する遠回りルートに変更する船もあるとみられています。
第三十八千代丸 前山浩章船長
「今回は(ロシア主張のEEZの)中を通りました。何の保証もないですよね、安全面で。恐怖と言えば恐怖です」
別のサンマ漁船の船長からも「国からロシアのEEZに入るなら自己責任と言われている。ひどい話だよね。4~5日かかる漁で、迂回する場合は、さらに半日余計にかかる」という声が。
また、水産研究・教育機構は、漁場が日本に近づく時期が、例年より遅くなるとみています。
水産研究・教育機構 冨士泰期研究員
「サンマは最近小さいものが主体になってきていて、(サンマが)日本に近づくタイミングとスピードが遅くなっている。漁場が遠くて、燃油などのコストがかかる。ここ数年、非常に厳しい状況が続いている」
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今年のサンマ漁は、「不漁」に加え、「燃料高」「ロシア情勢」の“三重苦”に見舞われています。
東京・築地の鮮魚店では、1匹120グラムの初物が700円で売られていました。
買い物客
「めっちゃ小さい…。メインのおかずにはならないかな」
斉藤水産 統括責任者・斉藤又雄さん
「今なら、本当に高級魚ですよね。“小さい”、“高い”、じゃ、お客さん納得しないですよね」
この鮮魚店では、秋が深まるにつれ、脂がのったサンマの入荷を期待したいとしています。