関東大震災から100年 「首都直下地震」都心に津波の可能性…数十センチの高さでも“流される”
1日は防災の日。100年前、死者・行方不明者約10万5000人を出した関東大震災が発生した日です。いま、首都圏で切迫している「首都直下地震」では、揺れや火災による被害が想定されているほか、「津波」が東京を襲う可能性があるといいます。東京を襲う津波とは、一体どのようなものなのか取材しました。
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私たちは東京・文京区にある中央大学の実験室を訪ね、津波の専門家である有川太郎教授の監修のもと、津波の威力を体験しました。
中央大学理工学部 都市環境学科 有川太郎教授
「津波の流れ・力を再現する装置」
高さは40センチから50センチ、ひざくらいの高さの津波を発生させます。津波が勢いよく押し寄せると、わずか数秒で流されてしまいました。
記者
「あっという間に足が浮いてしまい、気づいたら体が横になっていた」
有川太郎教授
「津波の高さが40~50センチくらいでも、両足に場合によっては100キロ以上の力がかかることがある。非常に怖いところ」
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100年前の1923年9月1日、関東大震災が発生しました。鎌倉市中央図書館には、鎌倉の「津波被害」に関する資料が所蔵されています。大地震によって関東沿岸では津波が発生し、神奈川県では5メートル以上の津波が襲うなど、この地震による津波の死者は約300人にのぼったとみられています。
近い将来、発生が懸念されている「首都直下地震」。都心では震度6強以上の激しい揺れだけでなく、東京湾内で高さ1メートル以下の津波が発生し、津波注意報が発表される可能性があります。(都心南部直下地震の場合)
堤防を越えるような高さにはならないと想定されていますが、もし、“注意報クラス”の津波が街を襲ったら――
有川太郎教授
「数十センチくらいの(津波の)高さでも、人の場合は流される可能性が十分にありえるので非常に危険」
東京ではどのような津波のリスクがあるのでしょうか。
江東区など東京の東側には海面より低い「海抜ゼロメートル地帯」が広がっています。懸念されることについて、有川教授は「低い土地だと水辺が(どちらの方向か)なかなかわかりにくい。脇道にだんだん水が入ってきて、四方八方どこから水が来るのかわからない状況」といいます。
都内では津波や高潮被害を防ぐため、水門や防潮堤が整備されていますが、大地震の揺れによって“水門などが正常に機能しない場合もある”と専門家は指摘します。
有川太郎教授
「(地震の)揺れによってもしかしたら、ずれる・壊れることも十分考えられると思う」
さらに、東京では多くの川が網目のように都市を巡っています。津波が幅の狭い川に入ると、水が集中し、高さと勢いが増すおそれもあるということです。
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もし、街に津波が押し寄せたら、流れる水の中を歩くことができるのか、実験しました。
水の深さは40センチほどに設定。軽々と足を上げて前に進むことができます。徐々に水の流れを速くしていき、秒速1.5メートル(人が早歩きした時の速さ)になると、ひざくらいの水の高さでも思うように前に進めません。
記者
「足を上げるのが精いっぱいです」
さらに、災害時には、がれきなどが流れてくるため、水の中は危険が増すといいます。
首都直下地震でも忘れてはいけない“津波の可能性”。有川教授は「津波だけではないが、東京で水害がおこる実感がある人は、ほとんどいないのではないか。津波も東京では起こりえることを十分考えていただきたい」と話しました。