【解説】中国“秘密警察”世界各地に? 広がる懸念…日本にも拠点が? 仕事は「中国政府に批判的な人物」の監視や脅しか
今、中国の“秘密警察署”に対する懸念が世界中で広がっています。アメリカ・ニューヨークでは2人の男が逮捕され、秘密警察の拠点は日本の秋葉原にもあるという報告があります。どういう活動をしているのでしょうか?
◇“拠点”は身近に?
◇「監視」と「嫌がらせ」
◇「尾行された」 貴重な証言
以上の3点について詳しくお伝えします。
■「秘密警察署」運営か…ニューヨークで男2人逮捕
アメリカ・ニューヨークで、帽子にマスク姿の中国系とみられる男がカメラに囲まれていました。実はこの男ら2人が、ニューヨークのチャイナタウンで中国の「秘密警察署」を運営した疑いで17日、アメリカの司法当局に逮捕されました。ニューヨーク州の連邦検事は、「中国の公安部がニューヨークのど真ん中に警察署を開設・運営している」と憤っています。
こうした秘密警察署とはいったい、どんな活動をしているのか。今回、男らを逮捕したアメリカの司法当局によると、秘密警察署は中国の警察の「出先機関」だということです。逮捕された男2人は「中国本国の警察の指示」で、秘密裏に動いていたとされています。関係者によると、秘密警察とは中国の諜報(ちょうほう)部門の出先機関だという情報もあります。その仕事は主に、中国から国外に出た中国出身者の「監視」や「嫌がらせ」「脅し」をすることだといいます。監視対象の多くは「中国政府に批判的な人物」で、時には圧力をかけて中国に帰国させることもあるといいます。
こうした活動はアメリカからしてみれば、“中国の警察がニューヨークで許可無く活動している”ことになるので、「ここはアメリカだ!」「主権の侵害だ!」と怒って、今回摘発したというわけです。
こうした「秘密警察署」は、実はアメリカ以外にも存在しているとみられていて、スペインの人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」が公開した報告書によると、少なくとも世界53か国の102か所にのぼっていて、その中には日本も含まれるということです。
イギリスメディア「THE Sun」が紹介したスコットランドで撮影した写真です。見た目は本当にごくごく普通の中華レストランですが、実はここが、秘密警察署の「隠れみの」だったと伝えています。
またスペインの人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」によると、たとえば、アメリカ・ニューヨークではラーメン店、カナダではコンビニエンスストア、ロンドンでは法律事務所、ナイジェリアでは鉄鋼販売会社などが隠れみのになっているといいます。そして、日本では東京都千代田区のJR秋葉原駅と台東区の浅草橋駅の間にあるビル、このビルにはホテルも入っていますが、そこが秘密警察署の「拠点」だと指摘されています。
実は、私たちは19日、その拠点とされている携帯電話の番号に実際にかけてみましたが、残念ながらすでに「現在、この番号は使われておりません」というアナウンスが流れるだけでした。
日本の外務省は、すでに去年11月、中国側に対し外交ルートを通じて、「もし国内でもこうした活動が行われているのならば、断じて認められない」という申し入れをしたということです。
ただ、中国は18日、外務省の報道官が「秘密警察署は存在しない」と改めて強調しています。アメリカで男2人が逮捕されたことについては、「アメリカが中国を誹謗(ひぼう)中傷する政治操作を行っていて、ねつ造だ」と猛反発しています。
こうした主張の食い違う「秘密警察」の真相はどうなのか、実はこのような貴重な証言もあります。
香港出身で現在はイギリスに住むサイモン・チェン氏が、NNNの取材に応じて自らの体験を語ってくれました。チェン氏はもともと、香港で民主化運動に携わっていた「民主活動家」です。弾圧が厳しくなってイギリス・ロンドンに移住すると、その直後から秘密警察と思われる人々に尾行されたり、脅迫状が届いたりしたということです。脅迫状にあった言葉というのは、「香港に送り返すぞ」というものでした。
また、「ロンドンでも集会やデモなどをすると、監視する人物が紛れ込んでいるのを常に感じた。参加者の情報などを集めて中国本国に報告している」と言っています。そして、「(参加者が)帰国した瞬間、空港で逮捕される事例もある」ということです。
さらに、秘密警察と思われる人々から「お茶でもどうですか」とカフェなどに誘われて、「金や地位を与えるから、反政府側の仲間の情報を教えろ」と逆にリクルートされるようなケースもあったといいます。
一連の動きは何が中国の目的なのか。中国政治が専門の東京大学の阿古智子教授によると、「中国政府にとって海外にいる反政府勢力は脅威。特に、政府への批判が海外からネットを通じて国内に流されるのことを警戒している」ということです。
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今回、私たちの取材に応じてくれたチェン氏も、「具体的な暴力行為などの証拠が無いと、他国の警察はなかなか動けない。ただ、中国国外でも監視され、帰国後には逮捕されるかもしれない…といったこうした現実に、しっかりと向き合ってほしい」と訴えていました。
(2023年4月19日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)