終の島~ハンセン病と生きる~
山本隆久さん(偽名)「しんどい人生だったなぁとしかないです」
ハンセン病の元患者だけが暮らす終の島。
元患者たちは本名を捨て、別の名前を名乗り、島を出ることも他人(ひと)と交わることもなく、ひっそりと“その時”を待ちます。
山本さん「自分の生存そのものに疑問持つわね。夢も希望もないのにね」
山本隆久さん(偽名)。19歳で入所しました。
かつて、ハンセン病にかかった患者は強制的に瀬戸内海に浮かぶこの島に連れて来られ、生涯にわたって隔離されました。
山本さん「ただなんで、だらだら生きとんかな。毎日がその連続でした。それを引きずってしまいました私、いまだに」
山本さんは、生きることに疑問を持ちながら、一生を終えました。偽名のままの遺骨は家族に引き取られることなく、島の納骨堂に収められています。
19歳で隔離された大西笑子さん。ハンセン病患者は法律によって子どもを持つことを許されず、断種や堕胎が行われました。
大西さん「妊娠が分かって堕ろしましたね。男の子だったね…。何か月ぐらいだったかな。私もちゃんとおぼえてないけどもう60年も前で。情けないけども、その時はつらい、つらいばかりで。普通だったら赤ちゃんができたら喜ぶところを、もうどうしようばかり考えてつらかったから。どうしたら堕りるかなと。一般の人には分からない悩みだったですよ」
患者を隔離する法律は1996年に廃止。
大西さん「これは遺伝するとかうつるとか言われてたけど…。だから皆さんが悪いんじゃない。そういう法律があったのが一番の理由だと思います」
法律が廃止された後も、元患者たちは島に残りました。帰る“ふるさと”がないからです。
この島に暮らしているのは、50人ほどの元患者だけ。そして“その時”が来ると、島で生涯を終えます。静かに…。
※西日本放送で制作したものをリメイク。2020年2月放送、NNNドキュメント50周年特番「あなたは、いま幸せですか?」より。
【the SOCIAL×NNNドキュメントより】