【解説】臨時国会スタート 少数与党・石破政権と野党第一党・立憲民主党…それぞれの戦略は?
衆議院選挙後、初めての本格的な論戦の場となる臨時国会が28日から始まりました。日本テレビ政治部・野党担当キャップの天野裕貴記者が、以下の2つの疑問について解説します。
1.少数与党の戦略は?
2.立憲民主党の戦略は?
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鈴江奈々キャスター
「臨時国会が始まりましたが、少数与党となっている石破政権はどのような戦略で臨む考えなのでしょうか?」
政治部・野党担当キャップ 天野裕貴記者
「臨時国会で政府与党はまず、物価高対策や災害対策などが盛り込まれた補正予算案を成立させたい考えです。また、政治とカネの問題も引き続き課題となっています。石破首相は、年内に政治資金規正法の再改正を実現させたい考えです。不透明なカネとして批判された政策活動費の廃止などを実現させることで、政治とカネの問題に、けじめをつけたい考えです。ただ、ある自民党議員は『先が見えなくて胃が痛くなる』と漏らしていました」
鈴江キャスター
「『先が見えず、胃が痛くなる』ほどというのは、どういうことからなのでしょうか?」
天野記者
「予算案や法案は国会の賛成多数で成立するので、少数与党では、野党の協力がないと何ひとつ法案は通りません。例えば、政治資金規正法にしても、立憲民主党などは政策活動費の廃止だけでなく、企業・団体献金の禁止まで踏み込むよう求めています。与野党の合意がなければ年内の法案成立も、絵に描いた餅となってしまいます。そのため石破首相は28日朝、次のように野党側に協力を呼びかけました」
石破首相
「選挙結果を踏まえて自公というものを基本としながら、各党のご意見、国民各層のご意見、そういうものを丁寧に承りながら国会を運営していきたい」
鈴江キャスター
「石破首相は各党の意見を聞くということですが、首相の意中の政党はやはり、国民民主党ということでしょうか?」
天野記者
「はい。まさに国民民主党です。国民民主党は10月の総選挙以来、所得税などが非課税となるいわゆる『年収103万円の壁』の引き上げを最重点事項と位置づけています。そのため石破首相は、29日の所信表明演説で『壁の引き上げ』を表明する考えで、さらに27日は、国民民主の政策提言をわざわざ首相官邸で受けるという、異例の好待遇で迎えました」
「一方の国民民主党の玉木代表も、もともと『政策実現のためなら与党とも話し合う』というスタンスですし、27日に立憲が呼びかけた政治改革の責任者会議も、国民民主党は『与野党で話すべきで、野党だけで話しても意味がない』と欠席しました」
「ただ、国民民主党も石破政権に対して簡単には妥協しない考えで、強気の姿勢で臨んでいます。『年収103万円の壁』の引き上げ幅をめぐっては与党と国民民主の間でいまだ隔たりは大きく、国民民主は28日に壁を178万まで引き上げる法案を国会に提出するなど、駆け引きが続いています」
鈴江キャスター
「2つめの疑問です。野党第一党の立憲民主党も責任ある対応が求められると思いますが、どう臨んでいくのでしょうか?」
天野記者
「立憲民主党の野田代表は28日朝、一部の野党を巻き込む与党の手法を、次のように批判しました」
立憲民主党 野田代表
「自公を過半数割れに追い込むことができた。その結果、どういうことが起こるのかを、国会活動を通じて国民の皆様にお示ししていきたい。自公にプラスアルファの野党を一部巻き込む、そんなやり方じゃ絶対ダメだ」
天野記者
「野田代表は、法案の協議は国会審議などオープンの場でするべきだという考えで、政党同士が事前に協議することには批判的です。ただ、ある立憲幹部は『別の党なんだから文句を言っても仕方がない』と話していて、野党をまとめきれていない立憲側にも責任があるという声も多くあります」
「立憲のベテラン議員の1人も『野党の方が数が多いのに、何となく与党ペースで進んでいて、よくわからない国会だ』と話していました。立憲にとっても、野党第一党の責任をもって、できるだけ多くの野党をまとめて国会での議論をリードし、与党との間で成果を引き出せるかが問われる国会となります」