コロナ過去最多の東京「近くに救急車がいない」 救急車の出動率98%の日も…
連日4万人近い新型コロナウイルス新規感染者が報告される首都・東京。猛暑による熱中症などの出動も重なり、東京消防庁の救急車の出動率は、98%を超え、現場はひっ迫した状況に。“異常事態”の救急現場で奮闘する当事者たちを取材した。
■「息つく間もない」鳴り続ける119番
東京消防庁への119番が急増している。
“10万4496件”(東京消防庁管内・速報値)
この数字は先月(2022年7月)東京消防庁が受けた119番の入電件数。去年と比べ、およそ2万件増加している。
「1件対応が終わり電話を切ると、 息つく間もなく次の対応をしないと、現在の119番に応えられない」(災害救急情報センター・藤野祐三司令補)
そもそも、夏になると暑さに伴い、増加傾向にある救急要請。しかし、異常とも言える猛暑に加え新型コロナウイルス感染の“第7波”がこの夏の119番件数の急増に拍車をかけている。
一方で、「地域医療もひっ迫していて、発熱相談センターに電話がつながらない状況がある。すると、『電話がつながらないけど、どうしたらいいのか』という相談の119番がくる。これも119番が増えている一つの要因ではないか」と藤野司令補は話す。
119番通報の増加にともない、多くなる救急要請。救急車の運用にも影響が出ている。
■救急車がいない!?
東京消防庁の救急車の出動率は連日98%を超え、救急要請が増加している。出動率とは、各消防署などに配備された全救急車のうち待機しているのでなく傷病人の対応に当たっている状態の台数の割合を示したものだ。
東京消防庁が配備する救急車275台のうち、わずか5台前後しか待機していないことになる。これにより、救急要請があってもすぐに到着できない事態となっている。現場近くにいる救急車が、全て出動していて、駆けつけることが出来る救急車を探すのに時間を要するためだ。
病院への搬送を終えたばかりの救急隊に連絡をとり、すぐに次の現場へとそのまま出動してもらうなど、救急車が1日中稼働し、救急隊員は昼食をとる時間がないほどの異常な状態が続いているという。
また、新型コロナ陽性者の急増により、受け入れ先の病院が見つからず、一つの現場出動に時間がかかってしまうことも一つの要因になっている。
7月18日からの一週間で、救急搬送の要請から病院に到着するまでに3時間以上かかったケースは、187件、このうち84件が5時間以上かかっていた。
■“消防隊員”も救急車に
この“異常事態”に東京消防庁では臨時の救急車を稼働させ対応にあたっている。
救急車があっても、隊員がいなければ稼働はできない。普段は消防車に乗り、消火活動などにあたる隊員でも、救急資格を持っていれば救急車に乗り活動することもあるという。
藤野司令補は、「通常ではないことが毎日続いている」と話す。臨時の救急車を稼働させても、過酷な状況が続いてる。
■「#7119」救急車の適正利用を
限界ともいえる状況でも対応し続ける救急隊員らは、傷病者を早く医療機関に搬送し不安感を軽減したいが、それができないというジレンマも抱えているという。
東京消防庁は、救急車を呼ぶか迷った時は、救急相談センター「#7119」や都の発熱相談センターなど様々な窓口の活用をしてほしいと強くよびかける。
「119番はSOS。多数の入電があっても1件1件確実に対応していく。一方で、救急車にも限りがあるので、ご迷惑をかけますが、救急車の適正な利用のご協力もお願いしたい」(藤野司令補)