119番鳴りやまず「救急車がいない」――東京“非常事態”で出動率98% 搬送「5時間超」も 感染急拡大…1週間で世界最多
新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。感染者数は東京など18都道県、また全国でも過去最多を更新。1週間では世界一でした。この影響で東京消防庁の現場はひっ迫し、救急車が足りない異常事態に陥っています。抗原検査キットの工場もフル稼働です。
■PCR検査に行列…歩いて帰宅する人も
28日夜、東京・渋谷。新型コロナウイルスのPCR検査場には行列ができていました。検査を受けた会社員(40代)は「職場で陽性者が出ましたので、同居の家族に影響がないかどうか確認したくて…」と話しました。
東京では、初の4万人超えとなる4万406人の感染が確認されました。行動制限がない中、自主的に行動を変えた人もいました。
帰宅途中の会社員(30代)は「徒歩で帰ろうと。前は電車で普通に帰っていたんですけど、感染が多いので公共交通機関使うのが怖いかなと思って」。これから40分かけて、歩いて帰宅するといいます。
■3歳女児死亡も…全国の感染「最多」
静岡・沼津市では、3歳の女児が死亡しました。女児には、発熱を繰り返す「周期性発熱」の基礎疾患があり、家族に感染者がいたため、「みなし陽性」として経過を見ていたということです。
感染の急拡大が全国で止まりません。感染者数は18都道県で過去最多を更新。全国では過去最多の23万3100人で、死者は114人に上りました。WHO(世界保健機関)が27日に公表した報告書によると、18~24日の1週間の感染者数は日本が96万9068人で、世界最多でした。
■感染急増…東京の救急、非常事態に
この感染者の急増で非常事態になっているのが、救急の現場です。
岩本乃蒼アナウンサーが28日午後1時すぎに東京消防庁を訪ねると、都内各地の出動状況が分かる大きなボードで、多くの地点が緑色に点滅していました。98%の救急車が出動していました。
■出動の調整に汗…ひっ迫する現場
東京消防庁の災害救急情報センターでは25日、119番通報が鳴りやみませんでした。「東京消防庁です。火事ですか、救急車ですか」「コロナ陽性で病院決まってない。保留しました」と担当者が電話対応に追われていました。
「今救急車の要請がかなり多くて、到着までちょっと時間かかりますので、安静にして待っていてください」
「うーん…。(救急車)いないな」
「救急隊が今いっぱい出ちゃってて、遠くから向かうんだけど、時間はかかるんだけど必ずそこに行くから、ちょっと待っててくれる?」
救急車がすぐに駆け付けられない異常事態になっていました。
「足立第2(救急)引き上げ」「ちょっと待って」「使いたいな」
「谷中(救急)使っていい? じゃあ私、谷中で」
「谷中はコロナの消毒でダメだって」
「5分後に終わるってよ」
「了解。谷中使います」
限られた救急車をどう出動させるか、懸命の調整が行われていました。病院への搬送に5時間以上かかったケースもあったといいます。
■迷ったら…「#7119」の活用を
東京消防庁救急機動部隊・鶴田広樹総括隊長
「傷病者やご家族の不安感や焦燥感を軽減してあげるのが我々の役目ですが、そのためには早く医療機関に搬送しなければなりません。そのことができないという、非常につらいジレンマに今立たされています」
東京消防庁は、救急車の要請を迷った場合は救急相談センター「#7119」や都の発熱相談センターなどの活用を呼びかけています。
鶴田さんは「救急車を必要とする人に救急車が届くように、ぜひともご協力をよろしくお願いいたします」と訴えます。
■2倍に…検査キットの生産急ピッチ
静岡県の工場で急ピッチで作られているのは、抗原検査キットです。医療機関からの依頼を受け、7月から増産を始めました。
抗原検査キットメーカー「タウンズ」の野中雅貴社長は「朝9時から(午後)5時半までの通常の日勤の作業と、夜8時~翌朝4時半までの夜勤、この2交代制をとって工場をフル稼働しています。(7月から)土曜日も稼働しています」と話します。
スタッフも増員し、通常の2倍の生産が可能になっているといいます。
野中社長
「社会のニーズに応えるために、精いっぱい生産をして安定供給していきたい」
(7月28日『news zero』より)