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「ワクチンは肺炎重症化防ぐ」専門家に聞く

2021年2月1日 10:07
「ワクチンは肺炎重症化防ぐ」専門家に聞く

新型コロナウイルスの政府の政策決定やワクチン開発、医療現場などの最前線で奔走する専門家たちに、今更聞けない素朴なギモンから最新情報のアップデートまで聞く企画。第3回は、新型コロナの“国産ワクチン”の開発にも携わる国立感染症研究所のインフルエンザウイルス研究センターの長谷川秀樹センター長に取材した。

■ワクチン「打つべき人」は?

――感染リスクと副反応のリスクで、接種を迷う人もいるが

私は、第一に、感染した場合に重症化する可能性のある方たちというのは、ワクチン接種をしておいた方がいいと思います。具体的にいうと、ご高齢の方、基礎疾患を持っている方です。若い世代の基礎疾患もない方は、強制はできませんが、その年代で重症化して亡くなる方もいますし、軽症ですんでもその後、後遺症に苦しんでいる方は、若い方でもいるので、それを考えると、発症しないようにワクチンを打つというのは1つの手段で、そういう手段があるというのは心強いと思います。

――後遺症も抑えられる?

発症自体が少なければ、後遺症も頻度としては少なくなると思いますが、たくさんの人が接種するので、今後きちんとデータとして出てくると思います。どういった症状に有効かがわかってくると思うので、やはり市販後調査の有効性と安全性に対する評価は重要になってくると思います。

■「数か月で全く効果がなくなることはない」

――ワクチンの効果について。どの程度持つのか?

抗体の維持という観点でいうと、印象としては、少なくともインフルエンザのワクチンと同程度は持つのではないかなと思います。あと、1回免疫を受けておくと、例えば抗体が下がった状態であっても、次に感染がきたときに、素早く抗体応答ができるという特徴がある。数か月で全く効果がなくなるということではないですね。

――抗体応答があるうちは、重症化リスクが下がる?

そう思います。今ほとんどの重症化している人は、感染後1週間後くらいから肺炎が悪化して、重症化している。最初にワクチンで免疫を受けておくと、例え抗体が下がったとしても、おそらく次に感染したときには、1週間以内に抗体が上がることが期待できると思います。ワクチンを打って、例え半年で抗体が落ちてしまうとしても、打っておくことはメリットがあると思います。

■「急な呼吸困難」はワクチンで防げる

――ワクチン打つことで感染予防は難しいと聞くが、感染は防げないのか?

急性呼吸器感染症は、インフルエンザもそうですしコロナもそうですが、(最初にウイルスが感染する)ターゲットが呼吸器、特に上気道(鼻や喉)です。上気道の粘膜には、血中の抗体がなかなか到達しづらくて、少しはにじみ出てくるんですが、十分ではない。よくインフルエンザでも、ワクチンを打ったのに感染してしまったという話は聞きます。感染そのものを抑えるかどうかは、まだ今後調べていかないとわからないですが、血中の抗体は(肺に)誘導されて肺炎の予防にはなるので、重症化や発症が予防できる可能性は非常に高いです。

――コロナの症状で怖いのは急に悪化し息苦しくなって倒れるなどというもの。こうした急変はワクチンで防げる?

急激に苦しくなるというのは何が起きているかというと、元々上気道(喉や鼻)に感染していたウイルスが、肺に広がって、肺でウイルス性の肺炎を起こして症状が出ます。ワクチンによって誘導されるウイルスの中和抗体というのは、肺胞でのウイルス性の肺炎に効果があるということが、インフルエンザの研究ではわかっています。(新型コロナのワクチンも)なかなか上気道での感染を抑えることは難しいですが、肺でのウイルスの増殖、もしくはウイルス性の肺炎を抑える効果はあるので、ワクチンを接種して血中に抗体があるというのは、肺胞に血中の抗体が染み出てくるのですごくメリットだと思います。

■副反応の注意点は

――ワクチン接種後の副反応として一般的によくあるのは?

報告されているのは、接種部位の痛みとだるさ、頭痛です。ほとんどのものが1週間以内には症状がなくなっているように報告されています。接種後2,3日ですかね。特に筋肉内注射なので、痛みを訴える人はいるようです。

――打つときに痛みが?

打つときもそうですけど、打つ時より打った2,3日後に痛みを訴える人が多いです。

――アナフィラキシー様の症状は、どう気をつければいい?

ほとんどの場合は、接種直後に症状が出ます。(接種後)30分以内に起こることなので、接種後しばらくは、その場で安静にして、ということが重要だと思います。

――アレルギーのある人は注意が必要?

アナフィラキシーについては、今まで食べ物や薬品に既往(=アレルギー反応が出た経験)のある人は、少し注意が必要かもしれません。軽いアレルギーではなくて、アナフィラキシー様の症状を呈した人たちです。なので、花粉症とかそういったことではないです。治験2万人の時にはみられなかったことです。接種が一般的に広がった段階で出てきた副反応なので、接種後の調査が非常に重要になります。

(後編へ続く)

■プロフィール
長谷川秀樹
国立感染症研究所・インフルエンザウイルス研究センター長。塩野義製薬などの新型コロナのワクチンと、KMバイオロジクスなどのワクチンの開発にも携わる。

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