藤田アナ鉄道NEWS 京阪5ドア車引退へ
半世紀の時を駆け抜け、まもなく引退の時を迎える「京阪5000系」。この日本初の“オール5ドア”車両が誕生した背景には、高度経済成長期ならではの時代背景と、当時の社員の画期的なアイデアがありました。
■なぜ“ドア”の数を増やしたのか?
京都と大阪を結ぶ京阪電気鉄道が、高度経済成長期の1970年に登場させた「5000系」。関西圏を走る多くの電車には、片側3か所のドアが設置されていますが、この5000系は、すべての車両に片側5か所のドアがある、“オール5ドア”となっています。
当時の社内報をひもとくと、京阪電鉄の社員のアイデアから誕生した車両だということで、その目的は、「通勤電車の輸送力を高めるため」。
車両のドアを増やすことで混雑する時間帯の乗り降りにかかる時間を短縮し、同時に、座席を減らすことで乗車できる人数を増やせるようにしたということです。
■車両には“驚きの仕掛け”が
ラッシュの時間を過ぎ、混雑の少ない昼間になると驚きの仕掛けが作動します。
まず、開くドアを5か所から3か所に限定。そして、開かなくなったドアをふさぐように、なんと天井に収納されていた座席が下りてくるのです。安全面などから、作動させる時は前後両方の運転台で2人が同時に作業し、スイッチを同じ位置にした時だけ動くようになっていました。
ラッシュ時はドアは5か所、客が減る日中は3か所にして、その分座席を増やす。こうして日本初の、“オール5ドア”の車両が誕生しました。
■首都圏でも“導入”されたが…
その後、首都圏でも通勤ラッシュを緩和するために、当時の営団地下鉄や東武鉄道などが一部の車両に“5ドア”を導入したほか、JRは山手線などに6か所のドアを設置した車両を登場させました。しかし、この5000系のように座席を天井に収納する工夫など大胆なアイデアが採用されることはありませんでした。
京阪電鉄によりますと、5000系引退の背景には、駅にホームドアが設置されたことで、5ドアだと扉の位置が合わなくなることがあるということで、今年6月までにはすべての5000系が新型車両に置き換えられるという事です。
■時代の変遷とともに「車両」も変化
1月31日からは、時代のニーズに合わせた新しい特別車両の運転が始まっています。車内の快適性を高めた、座席指定のプレミアムカーで、3列シートのゆったりとした作りに、コンセントや無料のWi-Fiも完備しています。
大量輸送時代から移動にも“質”が求めれる時代へ―。
昭和から平成、令和と半世紀を経て引退することになった京阪5000系は、私たちの働き方や暮らしの変化を象徴しているようにも感じられました。
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「藤田大介アナの日テレ鉄道NEWS」は、日本テレビで1番の鉄道好きアナウンサー・藤田大介が、鉄道に関するニュースや話題をマニアックな目線でお届けするオリジナル企画です。