【解説】温泉などで相次ぐ「レジオネラ菌」感染…死者も 家庭内“3つの盲点”とは
入浴施設などで「レジオネラ菌」への感染が相次いでいます。肺炎などを引き起こし、最悪の場合、死に至ることもあります。特に夏に増える傾向があるため、注意が必要です。
「温泉などで続出」
「『レジオネラ症』とは?」
「家庭にも“盲点”」
以上の3つのポイントについて詳しく解説します。
◇
大分市では、温浴施設「シティスパてんくう」でレジオネラ菌が検出され、18日から営業を休止しています。運営会社によると、今月8日に行った定期検査の結果、女性用の内湯と露天風呂、そして男性用の内湯からレジオネラ菌が検出されました。
女性用の内湯では、基準値の100倍もあったということです。検査翌日の今月9日から18日までに施設を利用した人は約4000人でしたが、今のところ健康被害は報告されていないということです。
実際に感染症を発症したケースも相次いでいます。
鹿児島・薩摩川内市の温泉施設では、今年4月に利用客の男性がレジオネラ症を発症したことがわかりました。大浴場からレジオネラ菌が検出されたということです。発症した男性は一時、入院したといいます。
また、感染者が亡くなったケースもあります。
神戸市によると、温泉施設「かんぽの宿有馬」を今年3月に利用した70代の男性2人が肺炎を発症し、検査の結果、レジオネラ菌に感染していることがわかりました。男性のうち1人はその後、亡くなってしまいました。
レジオネラ菌による感染症、レジオネラ症とはどういうものなのか解説します。
厚生労働省によると、レジオネラ菌は、土の中や河川など自然界に広く生息している細菌です。
水温が20℃~45℃の環境で増殖しやすく、入れ替わることなく循環していたり、タンクなどにたまっていたりする環境を非常に好むといいます。そのため、入浴施設やプールで設備の衛生管理が不十分だと、お湯の中でレジオネラ菌が繁殖して循環してしまいます。
そして、エアロゾルと呼ばれる細かい霧やしぶきを吸い込む事で感染します。一方、ヒトからヒトへ感染することはありません。
感染すると、どうなるのでしょうか。
軽症の場合は熱や寒気、筋肉痛などの症状で、数日で治ることが多いそうです。
しかし、重症となると「レジオネラ肺炎」を発症し、高熱、呼吸困難、意識レベルの低下や下痢が見られるのも特徴とされています。急速に悪化し、死亡することもあるということです。
リスクが高い人についても、ある程度特徴がわかっています。高齢者や新生児、病人に加え、多量の飲酒をする人、喫煙者もレジオネラ肺炎のリスクが高いとされています。
レジオネラ症の患者は、年々増えています。
検査法の開発や普及で発見されることが多くなったことも、患者数増加の一因の可能性がありますが、2005年には281人だった患者が2019年には2316人にまで増加しています。新型コロナウイルス流行以降はやや減少しているように見えますが、受診控えなどが影響した可能性もあるということです。
報告数が多い時期もはっきりしており、夏から秋です。特に7月と9月に増えるということです。
厚労省などによると「温泉への入浴や旅行に関連してみられることがある」ということです。つまり、どこかへ旅行に行き、風呂に入りくつろいだ時に感染することへの注意が必要だというわけです。
家庭でも注意が必要です。
医療法人自靖会の水之江義充理事によると、家庭でよくみられるのは、風呂場などの水分が多いところです。“ぬめり”があるところは細菌の集団とも呼ばれるそうで、多くのレジオネラ菌が棲みついているということです。ぬめりに対しては、次亜塩素酸を含む漂白剤やアルコールなどで洗浄・消毒を行うといいそうです。
厚労省によると、レジオネラ菌は60℃以上で5分熱しても殺菌できるということですが、現実的には難しいです。予防するために、家庭ではどこに気をつけるべきか、レジオネラ菌の対策を専門に清掃などを手がける会社「レジオテック」に聞きました。
とにかく要注意なのは、追い炊き機能のある風呂で、閉ざされた空間を湯が循環し、レジオネラ菌にとって適温という環境です。1日使ったお湯を2日目、3日目も追い炊きして使うと、菌が増殖するリスクが高まっていきます。風呂の湯の中にある私たちの皮脂やあかなどは菌の栄養になるということで、菌がすごしやすい空間です。
さらに、追い炊き機能のある風呂の配管内にはぬめりが生じやすく、一旦ぬめりが発生すると除去しにくいです。最大の予防は「毎日お湯を取りかえること」だと、レジオテックは指摘しています。
家庭内の盲点3つを紹介します。
(1)シャワー
シャワーヘッドの中や管の中にたまっている湯ですが、何日かたつと菌が増殖する恐れがあります。夏休み、旅行に行く人も多いと思います。宿泊先に入った時、何日かシャワーを使っていないと思われる場合は、数分間、湯を流してからシャワーをあびます。数日間留守にした自宅に戻った時も、同じです。
(2)浴槽マット
浴槽の中に高齢者などの転倒を防止するゴム製のマットを敷いている人もいると思います。風呂の湯を毎日取りかえても、浴槽に沈めているマットの裏と浴槽の間に残った水分が要注意です。必ずマットも洗って干して乾燥させます。
(3)子供用プール
つい「あしたも遊ぶから」と2日、3日と同じ水を使いかねないですが、遊んだら水を捨てて、よく洗って乾燥させます。
◇
水道代も決して安くないですし、エコという意味でも水は有効に使おうと思いがちですが、夏はどうしてもぬめりが発生しやすいです。小さい子供や高齢者のいる家庭は特に注意してください。
(2022年6月20日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)