彷徨う外国人技能実習生 夢見た国で
「夢見た国」日本で不当に働かされ、解雇される、外国人技能実習生たち。
雇い主「最低の人間や。卑怯だお前は」
ベトナム人女性のハー・ティ・ジャンさん(27)徳島県内の農園で技能実習生として働いていました。在留期間の3年まであと1か月半を残して突然、不当に解雇されました。
ジャンさん「(解雇された)理由は2つあります」「1つ目は帰宅が遅くなりました」「2つ目はお酒を飲んでいたからです」
飲食店に行くお金もなく、川沿いの公園で缶ビールを飲んでいたジャンさん。別の仕事場で働く友人と故郷の話をしていて、帰りが遅くなったことなどが解雇の理由だといいます。
ジャンさん「どこ行きますか?誰に会いますか?何食べるか?何時に帰るか?」
経営者は技能実習生が出かける際、外出届の提出を義務付け、行動を事細かに、監視していたといいます。
北野さん(労働相談ユニオンセンター)「彼女たちがね、何をするのかは、彼女たちの自由なんですよ」
技能実習生の外出や私生活の自由を不当に制限することは法律で禁止されています。
ジャンさん「(私は)何回も『すみません。ごめんなさい』」
ディレクター「謝ったの?」
ジャンさん「はい、謝った。でも会社は『知らない』とか、会社は『遅く帰るのダメ』と『ビールダメ』だから」
ディレクター「(会社に)ベトナムに帰りなさいと言われた?」
ジャンさん「はい」
ジャンさんは何度も経営者に謝りましたが、聞き入れてもらえなかったといいます。
ジャンさん「私は日本に行くのが夢でした」「きれいで安全で発展している国だから」
シングルマザーのジャンさん。苦しい家計を救うため、1人で日本にやってきました。技能実習生の在留期間は3年。その後、技能検定に合格するなど条件を満たせば最長で5年間、日本で働く事ができます。
ジャンさんがベトナムで送り出し機関に払った金額は…
ジャンさん「100万円です。銀行から借金しました」
ベトナム人の平均年収はおよそ36万円。多額の借金をして来日したジャンさん。
労働相談ユニオンセンターの北野さんと農園に向かいました。話し合いは2時間に及びました。交渉の結果、経営者はジャンさんに残り1か月半分の給料を支払うことに合意。ジャンさんたちの暮らしぶりを確認したところ…
北野さん「劣悪やね」
倉庫の横に建てられたプレハブ小屋。11畳ほどのスペースに3人が暮らしていました。トイレは小屋から15メートル以上離れた屋外の仮設トイレを使っていました。
ジャンさん「みなさん、さようなら」
北野さん「さようなら」
彼女は、夢見た国、安全な国で、技術を学ぶために、来たはずでした。
ジャンさん「徳島では悲しい話が多く怖いことがたくさんあったから、徳島にはもう住みたくないです」
2021年4月放送 四国放送制作 NNNドキュメント’21
『夢見た国でみたものは―彷徨う外国人技能実習生―』を再編集しました。