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特産品を台湾へ「オンライン道の駅」始動

2021年5月10日 20:53
特産品を台湾へ「オンライン道の駅」始動

新型コロナの影響で、インバウンド需要がほとんど消えた日本。地方の観光消費も大きな打撃を受けている。その打開策として、日本に関心が高い台湾人向けに、地域の道の駅の特産品を販売する取り組みがスタートした。


■来日できない台湾人向けに地域特産物をネットで販売

日本は、これまで政府が音頭を取って観光立国を標榜してきた。新型コロナウイルス感染症の拡大により旅行が難しい状況となり、日本の観光業は大きな打撃を受けている。観光消費を頼りにしていた地方では、その影響が顕著だという。

この危機的状況の中、全国の「道の駅」で扱う地域の特産品を、台湾むけにインターネットで販売する取り組みが始まった。一般社団法人全国道の駅連絡会と、台湾最大の日本情報サイト「樂吃購(ラーチーゴー)!日本」を運営する株式会社ジーリーメディアグループによるプロジェクトで、2021年4月1日から9月末まで行われる。減ってしまった観光消費を補う施策として、地域の物産品を販売する。

台湾人の日本への関心は高い。2019年には489万人の台湾人が日本を訪れている。これは台湾の人口のおよそ20%だ。さらに、ジーリーメディアグループ代表の吉田皓一さん(38)によると、日本へ観光に来る台湾人の多くは、「地方」への強い関心があるという。

「台湾からの旅行者はリピーターが多く、東京や京都といった人気都市だけでなく、地方にも目を向けています。台湾人を対象にしたアンケート調査で、新型コロナウイルス感染症収束後に行ってみたい地域を聞いたところ、北海道が1位でしたし、大阪や沖縄を抑えて青森が4位という結果も出ました」

地方への観光とともに、地方でしか手に入らない物産へのニーズも強いという。

「海外旅行をするのが難しくなった今、台湾ではいわゆる「訪日ロス」と呼ばれる現象が起きて、日本のものを求める声が高まっていると聞きます。実際に、台湾では日本の製品が飽和状態といってもいいほど、だいたい何でも手に入ります。しかし、地方の特産品は別です。台湾で手に入る一般的な日本の輸入品ではなく、日本各地の特産品を買い求めるニーズがあると考えられます」


■「道の駅」需要に対応

今回、地方の特産品を求めるニーズの中でも、特に「道の駅」に目をつけた。意外に思う人がいるかもしれないが、日本に興味のある台湾人に「道の駅」への訪問ニーズは一定ある。

ジーリーメディアグループが昨年12月に「樂吃購(ラーチーゴー)!日本」会員を対象に実施した調査(サンプル数5791)では、道の駅に行ったことがある人が33.95%だったのに対して、道の駅の認知率は56.3%と過半数に上った。さらに「道の駅の商品のEC購入意向率は82.4%、コロナ収束後に道の駅へ訪問したいと答えた人は、実に98%以上という結果が出ました」と吉田さんは話す。道の駅への関心の高さがうかがわれる。

このような背景から、全国道の駅連絡会と一緒に、各地の道の駅で販売している特産品を台湾向けにインターネットで販売することにしたという。

道の駅は、2020年から2025年を「道の駅第3ステージ」として、道の駅を世界ブランドにすることを目指している。今回の取り組みについて、全国道の駅連絡会の落合直樹さん(57)はこう話す。

「道の駅第3ステージでは、販路拡大も取り組みの一つと考えていました。まずは国内むけにスタートしていましたが、今回の企画があがり、海外むけに台湾から着手するのはおもしろいと感じました。道の駅は、通常自治体が運営母体になっているのですが、台湾と何かしらの連携をしている自治体は100近くあります。今後、海外への販路拡大を見据える上で、台湾から着手するのは良いスタートになると感じました」


通販サイト上では、現在、群馬県片品村の「花豆甘納豆」などの菓子類をはじめ、全国で最も遅く出荷することから名付けられた秋田県の「北限の桃」を使用したジュース、国内最大の琥珀産地である岩手県久慈市の「琥珀万年筆」などが販売されている。

「事前アンケート調査では、人気商品には菓子類、工芸品や民芸品、お酒やジュース類がランクインしています。ただし酒類については、手続き上の課題があるため、まずは取引しやすいものからスタートすることにしました」(吉田さん)

全国に1187駅ある道の駅(2021年4月8日現在)のうち、まず17の駅から87商品が順次販売される予定だ。

「アンケート結果をもとに、全国の道の駅に公募して、手を挙げてくれたところの商品から販売開始となりました。他の道の駅からも出品希望の声が出ているので、今後増えていく予定です」(落合さん)

台湾への商品発送は、ジーリーメディアグループが行う。道の駅は国内に発送するだけなので、海外輸出のノウハウを必要とせず、海外への販売を気軽に試せることもポイントだと落合さんは話す。


■物産販売と観光誘客を一石二鳥で

物産品の販売は、地方経済に即効性のある施策として期待されるだけでなく「新型コロナウイルス感染症収束後のインバウンド需要喚起」も狙えると、吉田さんは話す。

「物産と観光は本来的には、“表裏一体の関係”にあると考えています。ところが、観光は国土交通省、物産は農水省や経産省が担当している関係で、うまく連携しきれていない部分もあります。それを民間の力で同時に行うことで、観光の情報を発信しつつ、物産品を購入してもらえる可能性があります」

落合さんも、「通販サイトでの売上から、将来的に観光につながることを期待しています」と語る。

「道の駅を世界ブランドにしていくため、観光客が訪れづらい今のタイミングで、多言語化対応やキャッシュレス対応を進めています。今回の取り組みでは、商品情報だけではなく、その地域の魅力と一緒に商品情報を届けています。観光誘致に強いメディアと一緒にこの取り組みを行う一番の価値も、そこにあると考えています」

道の駅の物産品から取り組みをスタートしたが、将来的には地方自治体、観光協会、物産協会などの組織と連携して、地域全体でマーケティングをしたいと吉田さんは話す。

「観光と物産を別々でなく、一気通貫で行える一石二鳥の価値のある事業にしたいと考えています。日本と台湾の双方向で、人とモノが動くようなかたちを作っていきたいと思います。また、日本と台湾は正式な国交はありませんので、その分、民間事業者である我々が頑張りたいと考えています」

※写真は和歌山県にある道の駅「四季の郷公園」


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この記事は、日テレのキャンペーン「Good For the Planet」の一環で取材しました。

■「Good For the Planet」とは

SDGsの17項目を中心に、「地球にいいこと」を発見・発信していく日本テレビのキャンペーンです。
今年のテーマは「#今からスイッチ」。
地上波放送では2021年5月31日から6月6日、日テレ系の40番組以上が参加する予定です。
これにあわせて、日本テレビ報道局は様々な「地球にいいこと」や実践者を取材し、6月末まで記事を発信していきます。