“子育てペナルティ”働き方の課題は? 出産・育児による賃金46%減少…そのワケは?
東京大学などの研究グループが「子育てペナルティ」という問題の仕組みを初めて分析・発表しました。子どもを産んだ女性は産まなかった場合と比べ、出産から10年間の賃金が46%減少したといいます。その理由や出産後の働き方の課題について解説します。
藤井貴彦キャスター
「今回考えたいのは、少しドキッとする言葉づかいですが、『子育てペナルティ』という問題です。東京大学などの研究グループがこの問題の仕組みを初めて分析し発表したんですが、注目したいのは『46%』という数字です。子どもを産んだ女性は、産まなかった場合と比べると、出産から10年間の賃金が46%減少したということなんですが、どういうことなんでしょうか」
「ある大手メーカーの人事データを詳細に分析したモノなんですが、研究グループの1人、東京大学の山口慎太郎教授によりますと、例えば、会社で働く女性が子どもを産まなかった場合は40歳まで右肩上がりで上昇していきます。一方、30歳で子どもを産んだ場合は生まれてすぐは給料が下がります。これは育休や時短勤務などで労働時間が減り、残業手当などが減ったためです。ただ、問題はそのあとで、育休を終えて通常勤務に戻ってからも賃金に差が出続けてしまうということなんです」
藤井キャスター
「何がその差を生んでいるんでしょうか」
小栗委員長
「この賃金差の理由に大きく関わっているのが、『役職手当』です。長時間労働できる社員は昇進機会に恵まれる一方で、出産をして一度働く時間が減ってしまうと、その後昇進の機会が減ってしまって、手当がつく役職に就きづらくなってしまう現状があるというんです」
「その結果、第1子誕生から10年後の40歳の時の賃金は、累積で46%も減ってしまうというんです」
「研究の対象となったこの企業は、育休・時短勤務の制度なども充実しているんですが、それでもこの結果になってしまったというんです」
藤井キャスター
「あくまでこちらは、ある製造業の1企業を分析したものだということで、すべての会社にあてはまるとは限りませんが、女性だけが育児で昇進しづらくなる、それが長く続くとなると、あまりにも厳しい『ペナルティ』という考えになるのでしょうか」
小栗委員長
「山口教授は『企業が労働時間にとらわれない人事評価の仕組みを作れば、優秀な人材が活躍できて、働く側も企業も成長できるのではないか』と話しているんです」
「実際、働き方を変える取り組みをしている企業も出てきています。まず、JR東海は今年度から育休を取得した社員の昇格条件を緩和して、昇格のために必要な一定の勤続年数の中に育休期間を含むようにしました」
「また、大手飲料メーカーのキリンホールディングスでは、2022年から育休後の一定期間、人事評価が下がらないように保障する制度を導入したということなんです」
藤井キャスター
「こういった近年前向きな策がでてきたんですが、私たち男性もじぶんのこととして考えなければならない問題だと思います。かしゆかさんはどう考えていますか」
かしゆか(Perfume・『news zero』水曜パートナー)
「まず、46%減という数字に驚きました。やりたい仕事もあきらめざるを得ない人が出てきたり、その人の人生の選択肢が狭まったりしてしまうのは、社会的にも不本意なんじゃないかと思います」
「そもそも、子育て中の方を『助けてあげている』という感覚が無意識にあるのを変えていくことも大切なんじゃないかなと思います。社会や会社、身近な上司など近くにいる方が、物理的にも肉体的にも大変な中、メンタル的に不安や負担があっても『働きたい』と思っている方を少しでも理解してもらえたら、社会が少しずつでも変わっていくのかな、と思います」
(2月5日放送『news zero』より)