山崎監督
「できれば映画とかCMとか、映像系の仕事をしたいという思いだけはすごく強かったんで、そういうことはものすごく熱心にやっていたんですけど」

映画監督、山崎貴。 その世界をぐぐっとのぞいてみました。

2022年1月3日。お正月、久々の故郷。

山崎監督
「ゆっくりはしていないですね。仕事、山ほど抱えてきたんで。仕事していました。絵コンテを描いていました、ずっと」

山崎監督、国内30作目の実写版。 小学生のときから憧れていたゴジラを、ついにスクリーンに映し出します。

2022年5月。長野県岡谷市での撮影。

山崎監督
「しばらくカチカチになっているだけだから」

スタッフ
「 そういうところを狙っているんです。いつも通りの監督を狙っています。漫画を読んだりしている」

現場は笑い声が絶えません。

山崎監督
「うちは、いろんな人のツッコミを受けながら頑張ってやっております」

1964年、長野県松本市生まれ。 絵を描いたり、物を作ったりするのが得意でした。

母・菊子さん
「会議があって私が一緒に連れていっても、紙と鉛筆があれば静かにいられる子で」

父・義助さん
「モノを作るのがすごかったです。紙でね」

妹・さつきさん
「小さい時に、お兄ちゃんがお父さんに『どうしても映画館でやっているゴジラが見たい』って言って。『もしゴジラを見せてくれたら、もう映画館に行きたいなんて絶対に言わないから』と。そしたらお父さんも、『じゃ約束だぞ、1回だけな」って言って。お兄ちゃんにとってゴジラは、すごく大切」

高校では、迷わず映画研究部へ。 母校の松本県ケ丘高校。卒業以来初めて、当時の部室を訪ねます。

山崎監督「うちの映研ね、いい加減な映研だったんですよ、全然映画作らなくて。僕だけ、相当頑張ってやっていたんですけど」

目指す道はブレませんでした。

山崎監督
「どうやったら、そういう美術系の仕事ができるか、映像系の仕事ができるかをすごく悩んでいるし」

高校を卒業後、阿佐ヶ谷美術専門学校へ。そして映像プロダクション「白組」に入社しました。

2022年7月。白組の調布スタジオ。
「ゴジラ-1.0」の核心部＝VFXを手掛けるのは35人のスタッフです。

山崎監督
「もっとぎりぎりの人たちがいっぱいいた方がいいかな」

この作品で特にこだわったのは、CGでの表現が難しい「水」の描写。
ある海のシーンを任されたのが、入社4年目だった野島さんです。

野島さん
「後半これ多分、見えてくると思うんですよ」

山崎監督
「まあ、見てみるか」

山崎監督
「“こうしたい”って強く思っている人たちの意見は強いので、そういう人たちの意見を“若いから”ってつぶさないで聞くっていうことだと思うんですよ」

若い世代に任せ、その声に耳を傾ける。
この日、何度も確認したシーンがありました。船の下を横切るゴジラ。その形と色がイメージと違う。

スタッフ
「波で形・シルエットが崩れるから、“ゴジラです”という風には難しい」

山崎監督
「今のところ全然わからない。ちょっと明るくしてもいいよ」

譲れないー。

スタッフ
「動いていたら分かりそうな気がしますけど」

山崎監督
「いやぁ、動いているやつ見ても分からないね。立体物に見えないと、なんだかなという感じがするんだけど。もうちょっと明るくして。もっと明るくていいよ」

スタッフ
「もっと！？」

白組 シニア3DCGアーティスト・植木孝行さん
「最終的なクオリティーの詰めの段階になると、なかなかOKが出ないですよね。そういう意味でのすごいこだわり、引かない部分が山崎さんにはすごくあるんだなと。僕は30年一緒にいますけど」

公開された「ゴジラ-1.0」は世界で大ヒット。第96回アカデミー賞で視覚効果賞を受賞。

山崎監督
「（映画少年だった自分へ）“ゴジラ撮ったよ”までは信じる可能性はありますけど、『オスカーとったんだよ』って言ったら、『あ、そっすか…』って言って、頭のおかしいおじさんが来たと思って退けられると思いますけど」

昼間の仕事のあと、夜はパン工場でアルバイト。
授業料を工面してくれた父。その父も、母もずいぶん年をとりました。

2024年4月、長野県松本市。松本城の桜が咲き始めた頃、故郷を訪れました。

山崎監督
「特にそんな特別なことはしないと思いますけど」

帰って来た時にはいつも、母の料理を囲んだ夕飯時のおしゃべり。その時ばかりは、またいつかの映画少年に戻っていきます。

2024年5月12日放送 NNNドキュメント’24『映画監督 山崎貴の世界～少年は夢を追い続ける～』をダイジェスト版にしました。