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アカデミー賞「ゴジラ-1.0」山崎貴監督インタビュー 受賞後テレビ初出演で語った、授賞式での内幕…日本映画への影響は? 

2024年3月13日 6:30
アカデミー賞「ゴジラ-1.0」山崎貴監督インタビュー 受賞後テレビ初出演で語った、授賞式での内幕…日本映画への影響は? 

アメリカ映画界最高の栄誉とされるアカデミー賞の授賞式が行われ、山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」が視覚効果賞を受賞しました。「news zero」に山崎監督が出演。有働由美子キャスターが授賞式での内幕などについて聞きました。

■受賞した瞬間は?

有働由美子キャスター
「オスカー像と共に帰国した今の気持ちはどのようなものでしょうか?」

山崎貴監督
「昨日もホテルに帰ってきてから机の上に置いて、ふと見るとオスカーがあるというのがちょっと不思議な光景でドキドキしましたね。もらった時はアドレナリンが出ていたんで、よく分かっていなかったんですけど、今ここにあるのが夢みたいです」

有働キャスター
「受賞の瞬間はどういう気持ちになるものですか?」

山崎監督
「擬音になってしまいますが、ウワー!という感じ、血液が沸騰する感じでした」

有働キャスター
「あの場にいて、スピーチ原稿もあったということは、選ばれるかも…と思っているわけですよね?」

山崎監督
「一応、スピーチ原稿も書くくらいには期待してはいました。何もなく上がったら大変なことになっちゃうなと、一応書いておこうと思ったんですけど、ものすごい緊張していましたね」

有働キャスター
「見ていて、こちらも手に汗握る…」

山崎監督
「『頑張って、ちゃんと英語読んでね』という感じで、会場の人たちがすごい温かかったんですよ」

有働キャスター
「名だたる監督や俳優が温かかったんですね」

山崎監督
「そういう感じが伝わってきました。直前まで結構推敲していて、トランスレーターの人とやり方を変えていて、僕の字がすごい汚かったんですよ。この単語何だっけ…って読めなくて、それが頭の中でグルグル回っちゃって、あんな焦っていました」

有働キャスター
「スピーチをする瞬間はその“沸騰”は収まっていたんですか?」

山崎監督
「逆にこの単語何だっけ…という感じでドキドキしていました。中学生が英作文の発表会をやっているような感じでしたね。これをとにかく読み終わらないといけないと。45秒になると音楽がかかるんですよ」

「45秒と決められていて、前にあるカウンターにあと何秒、あと何秒って出ているんです。単語につっかかっているから全然読み終えられていなくて、最後の一番大事な『阿部さんに捧げる』というところを言わないといけないのに、音楽がかかっちゃって。隣に渋谷さんっていう一緒に受賞した女性がいたんですけど、『山さん、もう終わりだって! 早く、早く!』って言うからものすごい焦ったんです」

有働キャスター
「そんな内幕があったんですね」

■“ゴジラシューズ”話題に チームでそろえたワケは

佐藤梨那キャスター
「実は今回の授賞式作品だけでなく、山崎監督たちがはいていた靴が話題になったんです。かかと部分が“ゴジラ”の手になっていて『ゴジラシューズ』だと話題になりました」

有働キャスター
「受賞を確信してから作ったのでしょうか?」

山崎監督
「その前のキャンペーンというかロビー活動をしていた時に、僕一人ではいていたんですが、アメリカ人皆にめちゃくちゃウケるんですよ」

「リドリー・スコットの衣装をやっている人とかが『これ何だ、どこで買えるんだ』ってすごい興奮して見てくるくらい、めちゃくちゃ評判よかったんです」

有働キャスター
「どうしてチーム皆でこの靴にしたんですか?」

山崎監督
「ハザマさんというこれを作ってくれたメーカーが、今回、せっかくのノミネートなんで全員分を用意してくれるって話になりました。それで、皆でそろえて“チームゴジラ”で行こうじゃないかということになったという感じですね」

有働キャスター
「ステージでもチーム感をすごい感じたんですが、山崎監督も?」

山崎監督
「やはり視覚効果賞なんで、1人でとったわけじゃなくて、僕ら4人で行きましたけど。35人のチーム全員でとったものだから、何とか皆で一丸となってとったというふうにしたかったですね」

■スピルバーグが「すごい好きで3回もみた」と

有働キャスター
「実際に行って、皆さんとトークするわけですよね。具体的にどんな人とどんな話をしたんですか?」

山崎監督
「Q&Aっていう色々な人たちを呼んでスクリーニングをやって、質問に答えるという会もあったんですけど、一番すごかったのはランチョンっていうノミニーの人たちが集まって昼食会をやったものです」

「そこに行ったらトランスレーターの人から、『スピルバーグっぽい人がいますよ。挨拶しますか』って言われました。『いやいや、スピルバーグはここにいないよ』って言いつつ…」

「だんだん近づいて解像度が上がっていくと本当にスピルバーグなんですよ。何でいるんだろうと思ったら、別の作品のプロデューサーで来ていました。僕の最初のきっかけは『未知との遭遇』ですごい大きいですから、絶対に話したいなと思って」

「その時、スピルバーグはディズニーのボブ・アイガーCEOと話していたんですけど、すごい話が長いんですよ。『ゴジラの者ですけど』みたいな感じで、僕が後ろからゴジラを出していたら気づいてくれました」

「『ゴジラの監督か! すごい好きで3回もみたよ』と言ってくれました。スピルバーグが僕のゴジラを3回もみたんだと思っただけで、すごい気持ちになっちゃいました。ついに本物のスピルバーグにたどり着いたというか、いたんだ本物が! という」

有働キャスター
「スピルバーグさんから『俺がプロデューサーやるから一緒にやらないか?』という話は…」

山崎監督
「そういう話は全くなかったです。その時は」

有働キャスター
「今後はある?」

山崎監督
「ゼロではないと思います」

■VFX“物語への貢献”も評価?

有働キャスター
「名だたる候補作品があるなかでゴジラが選ばれた理由、VFXでいうとどこですか?」

山崎監督
「少ない予算と人数というのは大きな要素だったと思います。こういうやり方でできるんだというのは、1つの大きなインパクトがあったと思うんですけど、後は視覚効果賞というのはVFXがいかに物語に貢献しているか、というのもすごく大事なんです」

「だから、ゴジラの怖さとか、ゴジラの破壊のすごさというのは、恐らくこの物語に効果的に入っていると思うんで、そのこともすごく評価してもらったのかなと思っています」

有働キャスター
「VFXについては、落合陽一さんも聞きたいんじゃないかと思います」

落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「山崎監督、落合です。受賞おめでとうございます。僕は『アバター』のキャメロン監督にインタビューした時に『今の映画制作とVFXは切り離せない』と言っていたのが印象的でした。山崎監督は、今回のゴジラを撮るにあたって新しい視覚体験を見せる映画というVFXの狙いありきで作ったのでしょうか?」

山崎監督
「『ゴジラ・ザ・ライド』というのをその前にやっていたんで、やはり体感する映画、劇場にお客さんが来てもらうには、体感はものすごく大事じゃないかなと思っていました。なので、できるだけゴジラを近くして、お客さんがその世界の中に没入してもらうということは、ものすごい意識しました」

落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「新しい視覚体験のゴジラという点で、すごいと思いました」

■日本映画への影響・これからの作品作りは…

有働キャスター
「山崎監督は受賞のスピーチで『誰にでもチャンスがある』と言っていました。これからの日本の映画にとって、今回の受賞はどのような影響が出るのでしょうか」

山崎監督
「ここ数か月、アメリカで色々なロビー活動をしてみて、アジア人しか出てこない映画でしかも日本語、非英語の作品を字幕でみるってことに対して、ものすごく開かれているようになっている気がするんですよ」

「今まではそれは絶対に無理だって僕らは教わっていました。それがコロナ禍の視聴体験でずいぶんそういうものでも面白いんだなって皆さんが気づいたみたいです。」

「だから、日本国内だけじゃなくて世界市場に向けたものをどんどん作るチャンスはあるし、日本だけじゃなくアジアの映画が世界中でハリウッド映画のようにみられるということも可能なんじゃないかなと思います。これからもっとバジェットを上げた、世界をにらんだ作品を作っていくということもできていくんじゃないかなと思いました」

有働キャスター
「この先はどういう監督でどういう作品を作ろうと思っていますか?」

山崎監督
「僕は賞を狙って作品を作るのは好きじゃないんです。今まで色々な賞をもらいましたけど、全部一生懸命お客さんを楽しませようと思ったら副次的についてきたものなんです」

「だから、これからも自分が作りたい作品をたくさん作っていきたいなと思っています。とはいえ、ターゲットが国よりもっと外にいけるということに気づかされたことはすごい大きかったです」

有働キャスター
「ということは、世界もちゃんとにらんで…」

山崎監督
「世界も視野に入れて作ってもいいかなと思います。でも同時に世界を視野に入れるとダメになるんじゃないかなと。やはりドメスティックなものを作ってこそ、世界に通用するものができる感覚もあります。下手に世界を意識しないほうがいいのかなと、色々考えちゃいますね」

有働キャスター
「形になるのはこれからということですね。次作も含めてめちゃくちゃ楽しみにしています。本当におめでとうございます。お疲れのところありがとうございました」

(3月12日放送『news zero』より)