五輪めぐり…政府と専門家で深まる「溝」
■金曜夜…時短で「ノンアル開業」
ビーフステーキやオマール海老のグリルを提供する、東京・銀座の飲食店を4日訪ねました。店先には大きな花が並んでいます。緊急事態宣言が再び延長された後、初めて迎えた金曜日のこの日、オープンしました。
出だしからノンアルコールのみで、夜8時までの時短営業です。
代表
「本来はできれば5月にオープンしたいなという気持ちはあったんですが、緊急事態宣言が続いていく中で、おいしい料理でお腹も心も、こんな時だからこそエナジーチャージしたいという気持ちだけです」
アルバイトの大学生
「このご時世の中でお仕事させていただけるのは、今までは何も思わなかったんですが、ありがたいなって改めて思いました」
■酒「ナシ」で再開も客まばら
東京・新橋の焼き鳥店を訪ねました。1日から酒を出さずに営業を再開しましたが、店長は「初日は4人でしたね。でも、ほぼ知り合いです」と肩を落とします。再開後、4日間で訪れた客はそれぞれ4人、7人、7人、5人でした。
店長
「『今アルコールの提供をやめているんですが』って言うと、『あっ、じゃあいいです』って帰るお客さんがもう、1日20人以上います。話聞くと、お酒出しているところはけっこういっぱい(客が)入ってるんですよね。“やったもん勝ち”みたいになっちゃってるんですけど、だから様子を見に行かないようにしています。見に行ったら悔しくなっちゃうから。やらなきゃいけないことは、やらなきゃいけないと思って」
店を開けても苦境が続きます。
店長は来店した客に「来てくれるだけありがたかったので。まだ心は折れません」と言って笑いました。
■夜10時過ぎ「渋谷」多くの人
緊急事態宣言が再延長されて初の金曜、都内の駅や繁華街を訪ねました。
夜9時過ぎの新宿駅付近では、繁華街に向かう多くの人がいました。駅とは反対側に歩を進める人も。
一方、同じ時間帯の池袋駅周辺では、歩いている人はまばらで、少なく感じられました。
夜10時過ぎの渋谷では人通りは多く、明かりが照らす中を多くの人が行き交っていました。渋谷駅前のスクランブル交差点も人出が多く、ハチ公像の周りで座る人も多くいました。
感染減少へ、夜の人出を徹底して抑えることが求められています。
■“国内初”変異ウイルス「C36」か
4日の東京都のモニタリング会議で、東京iCDC専門家ボードの賀来満夫座長は「これまで国内で確認されていない(新型コロナウイルスの)新たな変異株『C36』の疑いがあることが判明しました」と報告しました。
5月中旬に北アフリカ地域から帰国した50代男性について、空港検疫では陰性だったものの、自宅待機中に症状が出て、インド型の特徴を持つ変異ウイルスの感染が判明。さらに都の研究センターで調べたところ、国内で確認されていない「C36」変異ウイルスの可能性があることが確認されたということです。感染力の強さなどはまだ分かっていません。
東京の感染状況については、国立国際医療研究センターの大曲貴夫医師が「新規の陽性者数が十分に下がり切らないまま、変異株の影響もあって、高い値で推移しています。依然として昼間の滞留人口、および夜間の滞留人口が増加している」と述べました。
専門家は、主要繁華街の人出で、特に夜8時以降の増加が目立つと指摘。このままだと「早い段階でリバウンドする可能性が高い」と強く警戒を呼びかけました。
■小池知事「かえるシリーズ」で要請
東京都の小池知事は会見でフリップを掲げ、夜の人の流れを抑えるために必要なことを「かえる」で表現しました。
「かえるが出てきました。『8時にはみんなかえる』ということで、『職場からかえる』『お店からかえる』『寄り道せずかえる』『ウチで気分をかえる』ということで、かえるシリーズになっております」
テレワークやステイホームの徹底も改めて求めました。
小池知事
「8時だよみんな帰ろう、これを徹底していく必要がある。リバウンドする時って、あっという間なんですよね。平日の夜8時以降、そして土日の不要不急の外出、ぜひとも自粛していただきたい」
4日は午後11時半時点で、全国の感染者は2595人。85人の死亡が発表されました。3日時点の重症者は1198人で、1200人を下回ったのは5月11日以来です。
■尾身会長の提言は「自主的な研究成果」
東京オリンピックの開幕まで50日を切りましたが、ここにきて政府と専門家の溝が深まる事態になっています。
4日の衆院厚労委員会で、政府分科会の尾身会長は「一般医療にも支障をきたしている時にオリンピックをやれば、さらに負荷がかかるというリスクはあるということは、当然申し上げます」と述べました。
政府などが観客の上限について決定する前に、独自に専門家による提言を発表する考えを示しました。
一方、丸川五輪相は「まったく別の地平から見てきた言葉をそのまま言っても、なかなか通じづらいというのは私の実感」、田村厚労相は「自主的なご研究のご成果の発表ということだ」とそれぞれ受け止めを語りました。
尾身会長らの提言を「自主的な研究成果の発表」と位置づける政府は、五輪のコロナ対策については東京都や組織委員会との調整会議で専門家も含めて議論しているとして、政府分科会には感染リスクの評価について諮問しない方針です。
■橋本会長「政府の基準に則る」
尾身会長は、政府から要請はないとしながら「何らかの形でのわれわれの考えを表明する必要が(ある)、これはプロとしての責任だと思いますので」と強調しました。
首相会見にも同席させてきた尾身会長の動きに対し、ある政権幹部は「オリンピックは尾身会長の所管ではない」、別の政府関係者は「尾身会長の立場では『五輪をやめろ』という提言しかできない」とそれぞれ述べ、不快感をあらわにしています。
大会組織委員会の橋本会長は会見で、「政府の協力なくして東京大会の実現はありませんので、分科会・尾身会長のもとでの提言というもの、そしてそれを受けて政府がどのような基準を示していくか、組織委員会としては政府の基準にのっとって、適切に進めていきたい」と見解を示しました。
(6月4日『news zero』より)