矢部太郎 “変てこなお父さん”描いたワケ
デビュー作『大家さんと僕』がシリーズ累計発行部数120万部以上を記録した矢部太郎さん。大家さんの次に描いたのは自分の“お父さん”でした。
■“変てこなお父さん”描いた新作漫画『ぼくのお父さん』
6月17日に発売した漫画『ぼくのお父さん』。描かれているのは、子供の頃の矢部さんと絵本作家の父・みつのりさんとのおかしな日常です。
例えば、「おやつにしよう」と言って、お父さんが矢部さんを連れていったのは、お店ではなくなぜか“森”でした。幼い矢部さんに「買ったら終わりだよ…」と言い、その場でつくしを採って「美味しいよ」と言ったエピソードなど、“陽気で自由奔放”“ちょっと人とは違う”お父さんが描かれています。
矢部さんはインタビューで「うちのお父さんみんなと違うなって、幼心に嫌だなって思っていました」と当時を振り返っていました。
■お父さんとの思い出“手作りのおもちゃ”
絵本作家のお父さんは、色々な物を手作りし、矢部さんを喜ばせようとしてくれたそうです。今でも矢部さんの手元には、お父さんが作ってくれた思い出の品が残っていました。
見せてもらったのは、誕生日にもらったという「ゲーム」です。
矢部:
「誕生日に作ってくれた同じ絵をつなげていくゲームです。“お魚”だったらこうつなげて(お魚の絵同士をつなげる)というふうに遊ぶんだと思います。(作るのも)大変だと思うんですよ。一個一個、角がケガしないように削ってあって。子供が誤飲しない大きさだし。すごく考えられている」
そんなお父さんの影響から、矢部さんも一緒におもちゃ作りをするようになったといいます。親子で作ったカルタが残っていました。
矢部:
「お父さんが絵を描いて僕が文章を考えて。『けいさん とくいな たろうくん』。“たろうくん”というのが5文字だからリズムがいいのか、文章によく出てくるんです。自分が本当にそのとき考えていたことが残っている感じがします」
■お父さんの教え「結果じゃなくて過程が大事」
物を手作りするという経験の中で、お父さんから大切なことを教わったといいます。
矢部:
「“結果じゃなくて過程がすごく大事だよ”みたいなことをすごく言っていましたね。今なんか特に検索しちゃって、『分かった』とかなっちゃうけれど、自分で体験していく中で知ることがあって、その大切さが分かっているからそれだけで一生やっていけているような気がする」
なぜいま、お父さんとの思い出を漫画にしたのでしょうか?
矢部:
「ちょうど(漫画の)連載を始めた頃から、緊急事態宣言に去年なったりして、みんな外に出られなくなったりしていたから。手作りの遊びとか作り方とかも漫画の中に描くようにして、“手作りの楽しみ”をぜひ体験してみてほしいなと思います」
(6月22日『news zero』より)