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性別変更に“手術”は必要か 「社会の理解より人権」「手術するか、命を絶つか」当事者は…

2023年10月24日 19:52
性別変更に“手術”は必要か 「社会の理解より人権」「手術するか、命を絶つか」当事者は…

戸籍上の性別変更をめぐり、生殖機能をなくす手術を実質的に求めている法律の要件は、憲法違反に当たるのか。最高裁は25日にその判断を示します。性別を変更したい人にとっては高いハードルとなっているこの要件。当事者たちの思いを聞きました。

■子ども授かるも“養母”になるしかなく…「理解より人権が先」

杉山文野さん(42)。女性の身体でうまれたトランスジェンダーです。幼い頃から「女性」として生きることに違和感がありました。今は月に2度のホルモン注射で見た目は男性になりましたが、戸籍上は「女性」のままです。「男性」になれない理由、それは――

杉山文野さん(42)
「生まれながらの体にメスを入れないといけないということは、自分のなかでは納得というか、腑に落ちなかった。子宮と卵巣の摘出はしていないという状況です」

日本の法律では、戸籍上の性別変更を認める要件のひとつに、「生殖機能を失っていること」が定められています。性別変更したい人に実質的に手術を受けることを求めるこの要件は、高いハードルとなっています。

●性別変更に必要な要件(性同一性障害特例法)

 (1)18歳以上である
 (2)現在結婚をしていない
 (3)未成年の子供がいない
 (4)生殖腺や生殖機能がない
 (5)変更する性別の性器に近い見た目をもつ

最高裁ではいま、この要件が憲法違反かどうかをめぐり、大法廷で審理が行われ、25日にその判断が示されるのです。

海外では人権の観点からこの要件を不要とする国が増えていますが、日本の最高裁は2019年、「現時点では、合憲」と判断しました。一方で、「社会の変化に応じて継続的に検討すべき」などと、社会の理解が深まれば、将来、判断が変わる可能性にも含みをもたせていました。

しかし、杉山さんは――

杉山文野さん(42)
「(社会の)理解より人権が先だと思っているんですね。理解がないから進まないだったら、いつまでたっても進まない」

杉山さんは現在、女性パートナーと共に暮らし、友人の精子提供により2人の子どもを授かりました。

杉山文野さん(42)
「僕は子供たちの『養母』という形になって、戸籍上女子なので母親となっている。『パパ』って呼ぶ僕が母のほうが(子供は)混乱すると思うんですけど」

子どもと法的な関係が持てず、養子縁組をして子どもの“養母”となるしかなかったといいます。さらに日常でも、身分証の表記が女性のため、病院や役所の手続きなどで頻繁にトラブルが起きるといいます。

杉山文野さん(42)
「社会はこれだけ変わってきているのに、制度が変わらないことが、多くの生きづらさを生み出していると思います」

■手術を選択し「性別変更」も… 「自分で選んでトランスジェンダーになったのではないのに…」

一方、木本奏太さん(32)は、手術を受けて性別を「女性」から「男性」に変更しました。

木本奏太さん(32)
「手術に対して何でしなければいけないのだろうという気持ちはありつつ、それしかなかったので。条件をクリアしない限り、あなたはこの国に自分らしく存在してはいけないんですよって、言われた気になったんですよね」

女性として生まれた木本さんが性別を変えられると知ったのは、18歳のときでした。

木本奏太さん(32)
「この世で女性として生きていくくらいなら、自分でこの命を絶つ方がマシなんじゃないかというのは何度もありました」

手術を受けなければ自分らしく生きられない。手術するか、命を絶つかの2択だった木本さんは、大学卒業後、手術費200万を貯め、子宮などを摘出する手術を受けました。

そうして裁判所から届いた、「男性」になった証明。性別変更ができると知ってから、すでに7年が経過していました。

木本奏太さん(32)
「それを見た時に正直、これのためにお金もためて、すごく人生悩んで、体にメスをいれて痛い思いもして。すごい虚無感といいますか、これで変わったけれど、すごく拍子抜けしたというか」

「スタート地点に立つのにこんなにお金が必要で手術もしないといけないし、自分で選んでトランスジェンダーになったのではなく、そうだっただけなのに。当たり前の権利を奪われたような気がしましたね」

――手術が法律の要件になっていなかったら手術はしましたか?

木本奏太さん(32)
「僕はしてなかったと思います。お金も身体へのリスクもこれだけ高いので。手術条件がなかったら僕はしてなかったと思います」

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