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東京に4度目の“宣言”飲食店の酒類提供は

2021年7月8日 21:28
東京に4度目の“宣言”飲食店の酒類提供は

オリンピックを目前に控えた東京都に4度目となる緊急事態宣言が出されることが正式に決まりました。オリンピックは開催しつつ、人々の行動を制限することには反発も出ています。政府の判断の背景にはどんな事情があったか詳しくお伝えします。

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■東京に“宣言”背景は?「まん延防止」で押し切れない状況

政府の方針を整理します。現在、まん延防止等重点措置が適用されているのは地図上の黄色で示した東京や大阪など10都道府県です。期限は11日の日曜日ですが、このうち東京都だけは12日から緊急事態宣言に変わる方針です。

また沖縄に出されている宣言と、埼玉・千葉・神奈川・大阪に適用されている「まん延防止」は延長となります。期間はいずれも来月22日までとする方針です。そのほかの北海道や愛知などは解除となります。

専門家が懸念しているのは特に首都圏の感染状況です。厚労省の専門家会議の脇田座長は、「東京を中心に今後も感染拡大が予想され、『周辺への拡大』が懸念される」と警鐘を鳴らしています。

7日の全国の新規感染者は2191人と、ほぼ4週間ぶりに2000人を上回りました。このうち首都圏1都3県の合計は全国のおよそ7割を占めています。中でも深刻なのは東京で7日は920人でした。

東京都の感染者数の推移をみても、3回目の宣言が解除されたあと、すぐにリバウンド傾向になっています。7日の920人は「第5波」の入り口ともみえます。

政府が緊急事態宣言の発出に舵を切ったのは、この920人という人数が大きく影響しています。

政権幹部は、「都内の新規感染者が920人になったことで、重点措置の延長で分科会を押し切るのは絶対に無理だと思った」とのことです。また政府高官は、「なんといってもまん延防止等重点措置が『効いていなかった』ことが理由だ」と話していました。

また、政府の分科会の尾身会長は、宣言に切り替える理由をつぎのように話しました。

政府の分科会・尾身茂会長「40代、50代が非常に重症化しやすい。これが明らかな特徴です。そういうことがどんどん増え始めているので。医療のひっ迫がおきないように早めに手を打つことが重要」

ワクチン接種が進んでいる高齢者は重症者の割合が徐々に減ってきていますが、ワクチンが比較的行き渡っていない40代から50代が重症化して入院するケースが増えている可能性があります。

■緊急事態宣言の期間「6週間」の理由は

また、緊急事態宣言の期間が来月22日までとなったことにも理由があります。今年に入ってからのカレンダーを並べてみます。緊急事態宣言がピンク、「まん延防止」を黄色で塗っています。ほとんどの期間に何かしらの措置が出ています。

今回の宣言の期間は来月22日まで。今月23日の東京オリンピックの開会式、来月8日の東京オリンピックの閉会式、お盆の間も含まれます。

政府は当初、宣言の期間は1か月程度を検討していたそうなのですが、人の移動が増える東京オリンピックや、お盆期間を含めるため異例の6週間となりました。

8月下旬ごろになればワクチンを2回接種した人も増えているかもしれないということです。

――すでに2回ワクチン接種を完了した人も、これまでと同じような自粛をしないといけないのでしょうか?

前回の3回目の宣言の時と違うのが、ワクチン接種が広がっていることです。この点について8日の分科会でも議論がありました。

分科会メンバー・釜萢敏氏「ワクチンの接種がすでに2回行われている人は、もっと制限を緩和してよいのではないかと。地域に流行が広がっている段階で行動制限を緩めるということは、基本的には非常にリスクが高いと(確認した)」

地域の接種率があがっても、感染が拡大している間は行動制限を緩めるのはリスクが高いということです。

■宣言のポイントは酒類の提供、協力金「先渡し」の仕組み導入へ

具体的な宣言の中身をみますと、焦点はやはり酒類の提供です。宣言地域では停止、「まん延防止」の地域では原則停止とし、知事の判断で緩和できるようになる方針です。また酒の販売業者にもルールを守らない飲食店とは取引をしないよう求めるということです。

――酒提供の自粛が続き、飲食店は限界との声も大きいですが。

これまでも協力金の支給の遅れが指摘されてきたので、今回の宣言では、ルールを守った飲食店には協力金を先渡しできる仕組みを導入する方針です。

酒の提供を再び停止することについて、総理周辺は、「かなり議論になった」と明かしていますが「見回りの強化も限界があり、実効性の担保が難しい」と述べるなど、飲食店の協力をどう得るのかが引き続き課題です。

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また、ある専門家は「オリンピックは開催する一方、国民には行動の自粛を求める。そこに『矛盾』を感じないようなメッセージを政府に発してほしい」とも話しています。

東京では今年に入ってからほとんどの期間で、宣言や重点措置が出ていて、もはや緊急事態という言葉がむなしく響くほど、その緊急性は薄れ、日常になりつつあるといえます。

飲食店などに、さらなる痛みを伴う4回目の宣言をどこまで実効性のあるものにできるのか、菅総理には国民が納得できる説明をしてほしいと思います。

(2021年7月8日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)