東京に４回目の緊急事態宣言が発出されることが決まりました。東京医科歯科大学病院では、新型コロナの入院患者が微増傾向にあり、４０代、５０代の男性の重症化が目立っているということです。

東京医科歯科大学病院では７月８日現在、新型コロナの患者が１０人入院、うち３人が重症で、うち１人はＥＣＭＯ＝人工肺で治療中です。

■東京に４回目の緊急事態宣言。東京医科歯科大学病院の荒井裕国副病院長に聞きました（取材は７月８日）。

――緊急事態宣言が発出されます。受け止めを。

このタイミングで緊急事態宣言が出たのは、実に理にかなっていると思います。患者が１０００人近くになっての発出では、８月上旬あたりで入院患者はピークに達します。ピークに達しても、その病床使用率は、全体の５０％をちょっと超えるぐらいで済むだろうという見込みがあります。これは我々現場としても、なんとか持ちこたえられる数字なんです。ただし、全体に緩みがでたり、デルタ株が増えていった時に、予測のシミュレーションを超えるようなことが起こるかもしれない。いろいろイベントがあって、人流が増えることがあると、計算もちょっとずれてくるかもしれません。

――入院患者数は？

６月２６日からまたじわーっと増えてきています。感染者数の増え方を追っかけるようにして必ず、増えてくる。我々今まで経験してきましたので、予兆を感じているという感じでしょうか。かなり構えていますね。

――患者の傾向は？

４０代５０代の重症化が目立ってきています。都全体としても、ことしの２月、３月は、入院患者の３割ぐらいが６５歳以上だったんですけど、今は５％程度に減っています。おそらく６５歳以上の方のワクチン接種が進んだというバックグラウンドがあるんじゃないかと思います。

――重症化の４０代５０代とは？

男性の方が多くて、なおかつ、肥満傾向のある方です。体重が１００キロ以上ある方ですとか。そういう方がやっぱりハイリスクなんだと思います。

――デルタ株への置き換わりは？

現在、入院患者の３割がデルタ株で少しずつ増えているようです。５月の初めから少しずつ増えていって、一般に言われているとおりイギリス株がデルタ株に置き換わることは間違いないと思います。

■東京オリンピック・パラリンピック中の医療体制

――東京オリンピック・パラリンピックの期間中の医療は？

人の流れが増えるということが問題になる訳なんですよね。緊急事態宣言が発出されて、無観客となれば、その分、例えば熱中症になるとか病気になる人の母数が減りますよね。選手とその周辺だけに絞りこまれるわけで、キャパシティーの範囲でなんとか対応できるようになるんじゃないかという気はします。今、現場は、ワクチンの接種もやらなくてはならないし、一般診療もずっと待ってていただいている患者さんがいるわけですよね。通常の診療もやらなくてはならないなかで、オリンピックにある程度、医療従事者を出さなくてはならないし。そういうなかで、人流が増えて、患者さんが増えてしまうと、それは三重苦、四重苦みたいな状況になります。

我々はオリンピック・パラリンピックを行うことを決定する立場じゃありませんので、とにかく決められた状況に応じて、我々の尽くすべき医療従事者としての役割を果たしていくと。これに尽きます。どのような状況になってもそれなりにあわせて柔軟にやっていきます。しかし、ベッドの数には限りがあるし、マンパワーにも限りがある。そこのところはご理解いただかないと、無尽蔵に対応ができるわけではないということですね。ですから、少しでも人の流れが抑えられるようなことが結果的に感染者数を減らすことになる。そのことが医療現場での負担を減らして、結果的に、多くの人が安全に過ごすことができるということじゃないかなと思います。

――東京オリンピック・パラリンピック期間中はベッド数を多く空けておくのでしょうか？

はっきり言って決まっていません。それからオリンピックにどのぐらい医師と看護師を派遣してほしいかということも今の時点（７月８日）ではっきりした要請が出てきていません。本当にたぶん観客を入れる入れないの状況を含めて必要な数というのが割り出せていないのではないかと思います。それにしてもいまだになんの音沙汰もないというのは、どうしちゃったのかなとは思ってます。

――準備はしておかなくてはならないですよね。

ある程度の大きな医療施設ですから、協力をしていくことは我々の使命の一つです。心構えはしています。でも数が出てこないと、どうにもやりようがないですね。正直言って。

――おすすめの応援の仕方は？

専門家会議の資料によると、飲酒に伴う複数人の会食がコロナに感染するリスクをあげるということが、はっきり科学的に証明できています。一緒に集まってマスクを外して、大きな声でひまつを飛ばしあうという状況を作ることが問題。ですから、うちで１人でテレビの前で観戦している、全然ありだと思いますね。でも、どこか路上でお酒を片手にわいわいやってしまうと、これはたぶんまずいことになるんでしょうね。