×

“学校VS生徒”ではない 校則変える挑戦

2021年7月29日 18:44
“学校VS生徒”ではない 校則変える挑戦

「校則を生徒主導で変える」と聞くと、生徒と学校が対立しているように見えるが、必ずしもそうではない。生徒の中にも、教師や保護者の中にも多様な意見がある。都立北園高校の事例を中心に、校則をアップデートするために必要な対話について議論した。

■外部の社会から学校にアプローチする

都立北園高校は、2ちゃんねる創設者のひろゆきさんやジャーナリストの津田大介さんらを輩出した「自由の北園」と呼ばれる学校。しかし近年、教師からの髪染めに関する指導が強化されており、その状況に対して問題提起するために作られたドキュメンタリー映像作品「北園現代史」がYouTubeで公開され話題になっている。

今年の3月に公開された動画は、放送日時点で37万回再生を超え、テレビや新聞でも取り上げられている。この動画は文部科学大臣の目にもとまり、会見で質問を受けてコメントするまでに至っている。ゲストの嶋佐和也さん(お笑い芸人・ニューヨーク) も、学校に訴えかけるための“今っぽいアプローチ”に驚いた。

「YouTubeに上げて、学校以外から注目されて、いろんな意見が出たらそれをまた学校に持っていって、実践していく。このやり方がすごいなと思います」

動画には、ひろゆきさんや津田大介さんなども出演。卒業生を巻き込む手法は大人顔負けだ。

■校則がないのに制限が厳しくなっていた

都立北園高校の前生徒会長・安達晴野さんによると、この動画が作られた背景には「校則がないにもかかわらず、指導が厳しくなっていた」という学校の実情があるという。

「もともと校則というものがなくて、生徒手帳には注意事項として『高校生として学ぶ場にふさわしい服装・頭髪で学校生活を送る』と書いてありました。なので、以前から金髪や紫色の髪をした人はいましたし、行事などではさらにカラフルになる人もいました。しかし、近年、髪染め指導が厳しくなっていて、茶髪で注意される人もいました。その状況におかしいと思っていたのですが、さらに、PTAの作る広報誌に髪染めをしている人の写真が使われる予定だったのに、学校側がPTAに対して髪の色を理由に写真を差し替えることを要請し、実際に写真が変わってしまいました。生徒会の選挙に出る時、そのことを、公にしたところ、生活指導部の先生に呼び出されてしまうこともありました」

安達さんは、髪染めの何が問題なのか、先生に聞いたが、はっきりとした回答が得られなかった。「髪染めはお金がかかるから」「絶対にやらないといけないことではないから」と言われることもあったという。

「もともとこの学校では髪染め指導をしていたから、今後もこの指導方針は変えないというような話をされることもありました。ですが、実際にはここ10年程で厳しくなっています」

「自由の北園」と呼ばれる校風に魅力を感じて、入学を決めた安達さん。生徒会としてさまざまな行事に関わる中で、生徒指導への違和感が募り、活動に至ったという。

■“高校生らしい”は先生への忖度の言葉?

生徒手帳に注意事項として記載されている“高校生として学ぶ場にふさわしい”という言葉は、学内でどのように受け止められているのだろうか。

「その言葉を使うのは、やっぱり先生方ですね。言い方がよくないかもしれませんが、私たち高校生に考える余地が残されているというよりも、先生方の価値観や考えを押し付けられるような印象です。先生方に忖度を求めるような言葉として“高校生らしさ”という言葉が使われていると思います」

一方で、高校生自身もその答えを明確に持っているわけでもない。動画が出たあとに、生徒同士で意見を交わす機会が増えたという。

「生徒側の変化として、頭髪指導の何がだめなのか、自由とは、高校生らしさとは何だろうといったことを考え始めた人が増えているように感じます。僕は動画にも出演させてもらっていますが、動画が公開されてすぐに友達から『髪を染めることが良いのか悪いのか話そう』と言われて。放課後に何時間もカフェで話しました。その友達は、髪染めはやっぱり良くないという意見を持っていますが、意見の異なる人同士とも話し合っていこうという雰囲気が生まれました」

映像が話題になり、教師からの頭髪指導も和らいだそうだが、それは本質的な解決になっていない可能性もあるという。

「注目が集まっているので、ほとぼりが冷めるまでは一時的に指導を控えておこうと考えている可能性もあると思います。なので、これからしっかりと話し合っていこうと思っています」

■立場を超えて話し合う場を

生徒会を引退して、高校生活も残り1年を切った安達さん。今後は「自由について考える場」を学校と一緒に作りたいと話す。

「立場を超えて話し合える場・考えられる場を設けていきたいと思っています。生徒同士だけでなく、生徒と先生の間でも話し合いをしたいです。学校VS生徒ではありません。生徒の中にも、髪染めに関する考え方はいろいろありますし、先生方の中でも、本当は髪染め指導なんてしなくてもいいと思っている方もいるかもしれません。生徒と先生の立場を超えて、本当に自分の思っていることを、腹を割って正直に話し合い、考えられる場にしたいと思っています」

 ◇

この記事は、2021年6月25日に配信された「Update the world #6 校則って、なんなん?」をもとに制作しました。
 
■「Update the world」とは日本テレビ「news zero」が取り組むオンライン配信番組。SDGsを羅針盤に、社会の価値観をアップデートするキッカケを、みなさんとともに考えていきます。
次回のテーマは「地球にやさしいおしゃれ」。オズワルドの伊藤俊介さんや、エシカルファッションに関する活動を行っている方々と一緒に、環境に配慮しながら楽しむおしゃれについて考えます。7月30日(金)20:00から、news zeroの公式Twitterから生配信します。