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コロナ禍で一時危機子どもたちへの髪の寄付

2021年7月14日 22:30
コロナ禍で一時危機子どもたちへの髪の寄付

普段のカットだと、ただの“ゴミ”となってしまう自身の髪が、必要とする誰かの役に立つヘアドネーション。およそ5年伸ばした髪をヘアドネーションした岩本乃蒼アナウンサーが子どもたちにウィッグを届けるNPOにコロナ禍で危機的状況におかれた活動の現状を聞きました。

■小児がん、脱毛症、けが…医療ウィッグを必要とする理由は様々

小児がんや脱毛症などで、頭髪を失った子どもたちに対し、髪の毛を提供するNPO法人JHD&C(以下ジャーダック)。12年で約500個の医療用ウィッグを子どもたちに送りました。

その内訳は、「小児がんなどの治療に伴う薬の副作用」が約3割。残りの約7割は、脱毛症や無毛症などの病気や、けがで髪の悩みを抱える子どもでした。

ジャーダック代表の渡辺さんは、「体は元気だけど髪が生えずに悩みを抱えている子どもは多くいる。原因がほとんど分からないため、治療法がないケースもある」とヘアドネーションの意義を語りました。

■50人分の髪を集めて、ひとつのウィッグに

ひとつのウィッグを作るには、約50人分の髪が必要だといいます。この団体には年間12万件ほどのヘアドネーションが寄せられますが、それでも足りず、ウィッグを待っている子どもは約300人にのぼるということです。

実際に髪を寄付するにあたって、ジャーダックの場合、31cm以上の長さが必要になります。私は一番長いところで47cm、あわせて約140g分カットしました。

渡辺さん:「寄付された髪に31cmの長さがあっても、実際にウィッグとして仕上がる長さはショート、ボブスタイルくらいになります。ウィッグを待っている子どもたちのほとんどがロングヘアのウィッグを希望するため、寄付していただく髪は長ければ長いほどありがたい」

■パーマやカラーリングはOK

当日の洗髪はNG、また、私のようにヘアカラーをした髪や、ブリーチ、パーマをかけた髪でも寄付できるそうです。

一方で、できるだけ多く長い髪を寄付するために、髪をすかずに伸ばすほうがいいため、シャンプーの減りが早かったり、ドライヤーに時間が割かれたり大変なこともありました。

そして、カット当日は、髪の湿気がカビの原因になってしまうため、シャンプーはNG。

カットでは、できるだけ長さのある髪を寄付するため、細かい束に分ける「ブロッキング」と呼ばれる作業が重要です。私は毛量が多く13束に分けてカットしました。

カットしたあとに乾いた髪を密閉袋に入れて、髪の情報を書いた「ドナーシート」と一緒に郵送して、ドネーションは終了です。

子ども用ウィッグのためにヘアドネーションを行うのは、10代以下の子どもが全体の約4割を占め、夏休みシーズンには5割近くになるということです。

“お金がかからない寄付”ということもあり、「初めての社会貢献」としてヘアドネーションを経験する子どももいるということです。

■生産ライン停止で提供ストップも…コロナの影響

ヘアドネーションにも コロナ禍の影響は及びました。去年、感染対策のため事務局を閉鎖したことで髪の仕分け作業が難航した上、海外に委託している製造ラインが止まりました。

ウィッグの提供が一時的にできなくなり、寄付の新規受け付けを一時中止したということです。

渡辺さん:「団体の閉鎖まで視野に入れてギリギリのところでなんとか踏ん張ってきました」

以前は、ウィッグを受け取る子どもと対面で採寸を行っていましたが、コロナ禍でできなくなりました。そのため、郵送で採寸できる新たなシステムを昨年秋に導入し、寄付を再開することができたということです。

■「必ずしもウィッグを必要としない社会へ」

ウィッグを提供してきた団体の代表の渡辺さんが目指すのは「ウィッグを必要としない社会」。ヘアドネーションは第1歩であり、なぜウィッグは必要なんだろう、使う人はどういう気持ちなのかを知り、考えることが大切だといいます。

渡辺さん:「小さな子どもがウィッグをつける理由の多くは“他人と違うから”、“目立ちたくないから”ということがあります」

「色んな髪形が個性として認められるように、髪の有無に関わらず、人の見た目を他人がジャッジしない社会、誰もが他人の目を気にせず伸びやかに生きられる社会が訪れることを願っています」

■やってみて変わった“髪”への意識

今回、髪をカットしてみると「ヘアドネーションしたの?」と聞いてくれる同僚や友人が結構いました。大幅に髪をカットする=ヘアドネーションという考えが、広がってきていることをとても感じますし、見た目の変化以上に、月に1cm無意識に伸びていた髪に対する思い入れが変わりました。

ヘアドネーションをして終わりではなくて、これは第1歩にすぎません。私自身も髪の行き先、使ってくれる子どもたちに思いをはせる機会になりました。

取材・文:岩本乃蒼(日本テレビアナウンサー)