×

容体急変で…訪問看護の「酸素投与」依頼増

2021年8月14日 11:56
容体急変で…訪問看護の「酸素投与」依頼増

入院が必要な新型コロナウイルス患者を受け入れられないなど、医療がひっ迫する東京。都県をまたいだ搬送が増え、隣県の病院もベッド数が足りません。都内の自宅療養者は2万人を超え、容体急変時に酸素を投与する訪問看護業者への依頼が増えています。


■東京の救急隊から…都県またぎ搬送

新型コロナウイルスの感染拡大と医療のひっ迫を受け、神奈川県伊勢原市の東海大学医学部付属病院では、これまでになかったことがいくつも起きています。

1つ目は、都県をまたいだ搬送です。

赤色灯を回した救急車が到着。7人がかりで、慎重にストレッチャーを動かします。都内に住む30代男性の重症患者が、約40キロ離れたこの病院に搬送されてきました。埼玉や山梨からも受け入れを断られたといいます。

「週末は東京も(医療)崩壊してて、東京の現場から、救急隊から電話かかってきて(対応する状況)」

医師はミーティングの席上、こう説明しました。

■病床増やすも…「ほぼ満床で危機的」

2つ目は、病床不足です。

この病院の医師は「(8月4日から)重症ベッドを10床から20床に増やしましたが、一気に重症患者さんが増加している状況で、ほぼ満床の状態です。かなり危機的な状況です」と言います。現在36床あるベッドはほぼ満床で、近く、さらに8床増やす予定です。

病床不足は、この病院だけの問題ではありません。


13日のミーティングで医師は「神奈川県内が重症者192。県内の重症ベッドが200程度なので、(県内)ほぼ全部埋まってきているような状況です」と伝えました。

搬送者数も急増しています。

予定表のホワイトボードには11日、「16時」が3つ並んでいました。同時刻に3人の患者を受け入れる状況になっていて、うち2人はコロナの重症患者です。

その16時になると、予定になかった患者がさらに1人増え、結果、4人を受け入れることになりました。

■重症者「大半が30代から50代」

3つ目は、高齢でなく基礎疾患もない人の重症化が急増していることです。

40代男性の重症者のCT検査結果を見た医師は「けっこう悪いね、もう」と言い、放射線技師も「悪いですね」とうなずきました。重度の肺炎を示す白い影がはっきり写っていました。

この病院に入院している重症患者の大半が、30代から50代の働き盛りの世代といいます。

東海大学医学部付属病院高度救命救急センター・守田誠司所長
「ピークが全く見えず、非常に怖い。本当にもう、物理的に患者さんを受け入れる場所がなくて、(入院を)断らざるを得ないことが増えてしまうのは、非常に危機感というか、我々現場にいると怖いんですね」

■自宅療養で悪化…「酸素投与」

入院が必要でもできない人が増加している東京都。13日時点で、2万1723人が自宅療養をしていますが、容体が急変した場合の対応が課題になっています。

訪問看護業者が12日、自宅療養中の30代男性と電話をしていました。

ソフィアメディ官民連携室・中川征士室長
「必要でしたら在宅での酸素療法などを行ったり…」

世田谷区の保健所と提携し、症状が悪化した患者の自宅を訪問しています。

男性患者の自宅に酸素濃縮装置を運び入れ、担当者が「ちょっと酸素とお熱を測っていただきつつ…」と声を掛けます。

一般的に、酸素飽和度が96%未満だと入院が必要といいますが、男性はそれを下回る91%ほど。装置を使って酸素を投与すると、変化がありました。

訪問看護業者
「(酸素)入れたら楽な感じありますか?」
男性
「そうですね」

吸入後は96%前後になり、すぐに症状は落ち着きました。

8月に入り、酸素投与の依頼は一気に増えたといいます。ただ、自治体と連携して酸素を届ける体制が整っているところは、ごくわずかです。

ソフィアメディ官民連携室の看護師・田中亜希子さん
「受け入れがやはり難しいということもありまして、自宅で粘らざるを得ない状況です」

中川室長
「(入院調整の人が)日に日に増している感じで、昨日まではこうだったのにという方が、今日中になかなか調整が終わらないなというのが増えている」

(8月13日『news zero』より)