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ネット上のウソ広告 その卑劣な手口とは

2021年8月16日 14:02
ネット上のウソ広告 その卑劣な手口とは

ウェブサイトを見ていると、必ずと言っていいほど出てくるのが「広告」です。広告による収入は、ウェブサイトの運営や維持に欠かせない一方で、ウェブ上の広告には様々な落とし穴もあり、消費者側の「リテラシー」も重要です。

■医師が登場する「ウェブ広告」

記者がウェブサイトを閲覧していると表示された、とある「バナー広告」。そこには「顔の“シミ”は冷蔵庫のアレで一発ですよ?」とか「塗ってみな、シミ飛ぶぞ」(ともに原文ママ)という文言とともに、医師とみられる男性の写真が掲載されています。

広告をクリックすれば「顔のシミ」が消える裏技を医師が教えてくれるように読み取れますが、実際にクリックしてみると、ある美容クリームの利用者とされる人物たちの体験談とともに、延々と商品紹介が続くページに移動します。

■アフィリエイト広告に関するトラブル相談は急増

そこには、美容クリームがテレビで特集された、使用されている美容成分が新聞に取り上げられたなど、美容クリームがいかに優れているかを説明する文字や写真が並んでいますが、リンク画像にあった医師風の男性は、なぜか一切登場しません。ページの最後には「残り個数7」とか「このページを閉じてしまうと二度と開けません」といった購入者のあせりを誘う文言が表示されています。

これらの広告は「アフィリエイト広告」と呼ばれています。自身のサイト内にアフィリエイト広告を表示させることで商品を宣伝し、商品が実際に購入された場合、販売実績に応じた報酬がサイト主に支払われる仕組みです。商品の販売者から依頼を受けた広告代理店や、そこから依頼を受けた個人などがアフィリエイト広告を作成している、とされています。

このアフィリエイト広告を巡っては、様々な問題が起きています。国民生活センターによると、ネット上の広告(電子広告)に関する相談件数は、2020年には約11万3000件を超え、5年前と比較しておよそ倍になっているといいます。特にアフィリエイト広告に関しては「表示内容に根拠があるのか」とか「体験談が当該商品を使用した個人の感想なのか不明」など多くの消費者から困惑の声が寄せられているということです。

■ネット広告の「ウソ」… 写真の無断使用に病院は

こうした現状を踏まえ、冒頭の広告の表現を一つひとつチェックしていくと、複数の「ウソ」が紛れ込んでいることが明らかになりました。

まず、記者が最初にクリックした「バナー広告」に使用されている医師風の男性。取材を進めると、実在する韓国人の外科医であることがわかりました。外科医が所属する亜洲大学病院(韓国)の担当者は取材に対し、広告の人物が「大学に在籍する先生で間違いない」と認めた上で「先生は韓国国内では有名な医師。美容とは全く関係ない外科医。勝手に写真が使われている」と話し、早く広告を削除してほしいと訴えました。「ウソ」は海外の医師の写真を無断で広告に利用しているだけにとどまりません。

■新聞を改ざんし広告に悪用も

美容クリームに入っているとされる成分が「新聞」で特集されたと消費者が思いかねない広告内の表現。しかし、よく本文に書かれた記事を読み解いて検証したところ、神奈川県内にある大学付属病院で発生した医療事故に関する記事で、2000年4月21日に発行された大手紙の紙面であることがわかりました。新聞記事の見出しや写真を改ざんし、あたかも美容クリームの成分が新聞で紹介されたように見せかけているのです。

■販売会社「広告は別会社が作っている」

こうした明らかな「ウソ」が含まれる広告を出していることについて、千葉県内にある美容クリームの販売会社・X社に取材を試みたところ「広告は別の会社が作っている」と説明するにとどまり、具体的な回答は得られませんでした。広告会社について聞いてみても、教えることはできないの一点張りでした。

また、東京都内にあるX社の関連先を訪ねましたが、取材に応じることはありませんでした。さらに、記者がチェックしていたページは、問い合わせの直後に削除され、閲覧することができなくなっていました。(現在は再び閲覧可能に)

■金儲けのためのウソ、誇大表現が後を絶たず

現役のウェブ広告代理店関係者は、アフィリエイト広告が作成される過程で「ウソや誇大広告が入り込みやすくなる」と指摘します。アフィリエイト広告の作成者には、広告を通じて売れた額に応じて報酬が支払われるため「多く売れれば、広告内容はウソや誇大表現でもかまわない」と考える作成者もいて、トラブルに発展することも少なくないといいます。

また、商品の販売会社が、ウソ広告が作られている実態を把握しているにもかかわらず、広告代理店やアフィリエイト広告作成者が勝手にやったと説明し、責任逃れに走るケースもあるといいます。このようなずさんな方法で作成される広告が後を絶たず、業界内ではかねて問題視されてきたとも打ち明けます。

■消費者庁も実態把握、対策も

消費者庁の担当者は「アフィリエイト広告自体が悪いものというわけではない」と前置きしつつ、広告の不当表示があれば、広告の作成者だけでなく広告主の責任も問われる可能性があると指摘。今年6月にアフィリエイト広告の実態把握に乗りだし、何らかの対策ができないか、検討を進めているということです。

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