自宅療養で子どもへ…「家庭内感染」の現実
東京では今も、6000人超の新型コロナウイルス感染者が自宅療養しています。家庭内は隔離が難しく、家族全員が感染して長期間買い物に行けない例もあります。一方、ワクチン接種が順調な千代田区は、不足する自治体へのワクチン提供の方針を示しています。
■家族6人感染…自宅で「酸素吸入」も
東京では、新型コロナウイルスに感染し自宅療養する人が今も6000人以上います。
都内の「ひなた在宅クリニック山王」の医師が6日、8月にコロナに感染した63歳の男性宅を訪ねました。少しの歩行で息切れするなど、後遺症に苦しんでいます。
8月に往診した際には、血中の酸素濃度が80%台にまで低下していました。「中等症2」と診断され、2週間以上も入院先を探しましたが見つからず、自宅で酸素吸入を行っていました。
9月6日の往診時、男性は「自転車で遠くへは行けないですね。お店着いた途端『はあはあ』って」と、後遺症を訴えました。
医師
「今まで(感染前)はそんなこと、何もなかったんでしょ?」
男性
「一切なかったです」
61歳の妻から感染したといい、26歳の娘や3、5、7歳の孫にも広がり、家族6人全員が感染しました。
■難しい家庭内「隔離」…カギは
ひなた在宅クリニック山王・田代和馬院長
「家庭内での感染者隔離というのは非常に難しいです。親からお子さんへの感染が一番多かったのですが、やはりその場合は、大人の方を時間的・空間的にいかにきちんと隔離できるのかがカギだとは思います」
「現在は感染者数が減少のトレンドに転じてきているとはいえ、8月の医療崩壊の光景は忘れないでいただきたいなと思っています」
家庭内での感染は、防ぐのが難しいといいます。
■家族感染「時間の問題」…全員陽性
都内に住む30代の女性も、7月に30代の夫、5歳の長男と長女、1歳の次男の家族全員が感染しました。
女性
「子どもたちは密に過ごしているので、うつるとしても時間の問題だなと思って、お願いして一緒に検査していただいたところ、全員陽性の結果が出た」
女性から夫、そして子どもたちに感染が広がりました。家族全員が完治するまでの約1か月、外へ買い物にも行けず、友人らから食料を送ってもらっていたといいます。
女性
「家でもなかなかソーシャルディスタンスを保つわけにはいかないので。実際かかってみると、やはりすごく大変だし、長期戦になる」
■若者向け接種会場…倍率「約10倍」
東京・渋谷に設置された若者向けのワクチン接種会場を訪ねました。
抽選が5回目という高校生(17)と会場に来た母親は「やっと当選したので。(自治体で)打てる病院ですとか会場を、1つずつ探したんですが1個も取れず、それがもう、数日間続くという状態だった」
スポーツ用品店で働く男性(30)は「『明日(打てる)』というのはすごく魅力的ではありました。お客さんと接するお仕事なので、安心感を持ってもらうためにも、ワクチンは早く打っておきたいなと」と話しました。
男性は知人とルームシェアし、3人で住んでいるといいます。「僕だけ打っていなかったので、というのもありますね。1人暮らしよりリスクが高いと思うので、不安はあったので」
この会場での1回目の接種は16日までで、この日は4123人が申し込み、抽選倍率は9.82倍でした。
都は接種を希望する若い人に対し、「接種の機会(会場)は複数あるので、それぞれの事情に合わせて活用してほしい」と説明しています。
■不足自治体に「ワクチン」提供方針
東京・千代田区では接種率が約64.3%(2回、15日時点の速報値)と、順調に接種が進んでいます。樋口高顕区長は「来週以降も比較的(予約は)空いている状況が続いていますね」と言います。
10月中には接種率が目標の80%に達する見通しで、9月いっぱいで区の集団接種会場2か所を閉鎖する予定です。そこで考えているのが、ワクチンの融通です。
樋口区長
「ワクチンの在庫を精査した上で、お困りの自治体には率先して提供していきたい」
都などと相談し、今後、都内で不足を訴える自治体に提供する方針です。
(9月16日『news zero』より)