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“体験し触れあう”天皇陛下とパラスポーツ

2021年9月20日 8:59

天皇陛下は8月24日、東京パラリンピックの開会式を前にパーソンズ会長らIPC関係者10人を皇居に招き、面会されました。陛下は、コロナ禍での選手や支える人たちの努力に敬意を示し、パラリンピックの意義などを「この大会を機に、わたしたちが、障害がある人もない人も、お互いを尊重し思いやることをこれまで以上に大切にしながら共に生きていく社会づくりが進んでいくことを願います」と、英語で述べられました。陛下はこの夜、国立競技場で開会式に臨み、開会を宣言されました。

――陛下のお言葉をどのように聞かれましたか 

陛下のお言葉には、力こぶを入れて訴えるような「力み」がないと感じました。平成の30年間、両陛下は障害者スポーツ大会に足を運んでアスリートを見守り、時には愛子さまも交えて、車いすバスケを観戦して選手たちと触れ合ってこられました。こうした経験が生きていると思います。

――実際にパラスポーツの体験もされているそうですね

2018年には、今回、東京パラリンピックで金メダルに輝いた視覚障害マラソンの道下美里選手の「伴走」を赤坂御用地内でされました。これは園遊会で、道下選手から「ご一緒する機会があれば」と言われ、陛下が応じられたものです。陛下は「2メートル先にマンホールがあります」などと声をかけながら伴走したそうですが、事前に書物を読んだり映像を見たりして研究されたそうです。後に会見で「伴走の方がどのように選手をリードされているかわかり、大変いい経験になったと思います」と振り返られています。

――園遊会での言葉がきっかけでこのように実行されたんですね

こういう1回1回の触れあいを大切になさるんだと思います。 

――一緒に走られた経験があるからこそ今回の道下選手の活躍にも喜びもひとしおだったでしょうね

陛下のお言葉は、こうした日ごろのパラアスリートとの交流や経験があって、ごく自然な願いとして述べられたと思います。関係者や選手だけでなく、広く一般の人にも響いたのではないでしょうか。 

【井上茂男(いのうえ・しげお)】
日本テレビ客員解説員。皇室ジャーナリスト。元読売新聞編集委員。1957年生まれ。読売新聞社で宮内庁担当として天皇皇后両陛下のご結婚を取材。警視庁キャップ、社会部デスクなどを経て、編集委員として雅子さまの病気や愛子さまの成長を取材した。著書に『皇室ダイアリー』(中央公論新社)、『番記者が見た新天皇の素顔』(中公新書ラクレ)。