休眠美容師、16年ぶり復帰“3つの工夫”
免許を持っていても働いていない「休眠美容師」は全国で75万人以上と推計されています。出産・育児で現場から16年離れていたものの復帰した、ひとり親の女性を追いました。再び美容師として活躍できた背景には、美容室側の“3つの工夫”がありました。
■「不規則勤務」と「研修」が壁に
首都圏などで展開する美容室チェーンが、埼玉県川口市に構える店舗。朝9時半の開店後すぐ、客で席が埋まりました。
今年5月からこの店で働き始めたのが、美容師の大川沙保里さん(40)。12~18歳の3人の子どもを育てる、ひとり親です。
美容学校を出た後、都内などの美容室で働いていましたが、出産のため退職。育児との両立は難しく、16年間、復帰できずにいました。
大川さん
「一番上の子が1歳の時に、少しパートで美容室で働いたんですけども、やっぱり夜練(閉店後の研修)には少しでも出てほしいということで…」
不規則な勤務や閉店後の研修などが壁になったといいます。
出産などをきっかけに、美容師の仕事から離れた「休眠美容師」は、全国で75万人以上いると推計されています。
■「休眠美容師」生かす美容室の工夫
大川さんが復帰できたワケは、美容室側の工夫にありました。
店で大川さんは、「(カラー剤が)染みたらおっしゃってください」と客に声を掛けます。
1つ目の工夫は、メニューの単純化です。メニューをカットとカラーに限定し、大川さんのようにブランクがある人は、カラー専門で働くこともあります。シャンプーはロボットが自動で、セットは客が自分でそれぞれ行います。
2つ目の工夫は、勤務時間です。勤務は最低、週1日、3時間から。取材した日、大川さんは明るい午後3時に帰宅しました。
店長
「大川さんの場合は、週に2回、火曜日と日曜日という約束を、入社の面接の段階でさせていただいています」
3つ目の工夫は、かつて大川さんにとっての「壁」だった研修です。今は自宅に帰って、スマホの動画で受けます。閉店後まで残らなくても、自分のペースで新たな技術を学べます。
■大川さん「ひとり親が働ける店を」
大川さんの次女(14)
「(母が)やりたいことをちゃんとできているから、うれしい」
長男(12)
「頑張っているお母さんです」
大川さんは、美容師と事務の仕事とのダブルワークを実現しています。美容室側も、人手不足の中、休眠美容師の力を生かすことで、店舗を拡大しています。
大川さん
「(子育てが終わる)10年後の自分を考えたときに、その後私ができることを(思い描いています)。シングルマザーの人が働ける場所(自分の店)を、もしつくれたらなって」
(9月24日『news zero』より)