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見た目に“偏見” 人種などで職務質問「レイシャル・プロファイリング」 違法訴え国などを提訴

2024年4月15日 19:54
見た目に“偏見” 人種などで職務質問「レイシャル・プロファイリング」 違法訴え国などを提訴

15日、東京地裁で人種などを理由に職務質問を受けてきたとして、国などを訴えた裁判が開かれました。こうした差別は「人種(レイシャル)」「犯罪捜査(プロファイリング)」という意味の「レイシャル・プロファイリング」と呼ばれています。人種や肌の色、国籍だけを理由に、警察官が職務質問や取り調べなどを行うことをいいます。外国にルーツを持つ人たちがどのような苦痛を感じてきたのかを取材しました。

愛知県に住むゼインさん。私たちと待ち合わせをした名古屋駅で、何度も嫌な思いをした経験があるといいます。

パキスタンにルーツを持つゼインさん(27)
「1日に2回、ここだけで職質をされてびっくりしました」

駅を利用したとき、何度も警察官から職務質問を受けたといいます。

パキスタンにルーツを持つゼインさん(27)
「(名古屋駅だけで)5回以上は間違いなく職質されている。少なくともですよ、僕もありすぎて忘れているぐらいなので」

パキスタンで生まれたゼインさんは、8歳のときに母親や兄弟と来日。父親はその10年以上前から日本に住んでいて、ゼインさんが13歳のとき、家族全員で帰化を申請。日本国籍を取得しました。日本で暮らして、もう15年以上になり、日本語も流ちょうですが…

ゼインさん(27)
「自転車で来ていた時に(警察に)『止まりなさい』と言われて。一番最初にかけられた言葉が『これ、お前のチャリ(自転車)じゃないだろ』だった」

別の日には…

ゼインさん(27)
「(警察が)僕の免許証を見ながら『日本国籍をとると在留カードなくなるの?』と」

日本国籍を取得したため在留カードは必要ありませんが、持っていないことを警察官になかなか納得してもらえなかったこともありました。次第に、ゼインさんの中である思いがわいてきたといいます。

ゼインさん(27)
「日本人として(日本で)生まれ育った人に話を聞くと『職質なんてされたことない、 人生で1回か2回かな』と。周りの外国ルーツの人たちだけ職質される事が多い。これって自分だけじゃないんだな、みんな感じているんだな、じゃあ何かおかしい。みんなのために何か変えなければ」

頻繁に職務質問を受けるのは、自分の「見た目」で判断されているのではないか。ゼインさんは今年1月、警察が肌の色や人種などをもとに職務質問をするのは差別で違法だとして、同じく外国にルーツを持つ2人と、国などに対し1人あたり330万円の損害賠償などを求め、東京地裁に提訴。15日に第一回口頭弁論が開かれました。

肌の色や人種、国籍だけを理由に職務質問などをすることは「レイシャル・プロファイリング」と呼ばれ、国連の機関も対策を講じるよう勧告を出しています。

15日の意見陳述でゼインさんは「海外ルーツの人に対する偏見に基づく言動がまん延しているのではないか」などと主張。一方、国などはレイシャル・プロファイリングの存在を否定するなどして、争う姿勢を示しました。

ゼインさんはこの裁判をきっかけに、外国にルーツがあると判断される見た目を持った人への認識を、社会全体で変えたいといいます。

ゼインさん(27)
「偏見や差別も一つ一つ疑問をもって考え直すのが大事なんじゃないかなと思います。海外にルーツがあっても、日本で生まれ育って日本の文化にしか触れていない人たちの立場になったときにどう思うのか、ぜひ考えてもらいたいなと思います」

■外国にルーツ持つ記者が解説 見た目で“職務質問” 

森圭介キャスター
「取材した日本テレビ社会部の白賀エチエンヌ記者に聞きます。まず、原告側と被告側の意見・主張は対立しているということですが、レイシャル・プロファイリングはあると訴える原告側は、どんな主張をしているんでしょうか?」

白賀エチエンヌ記者
「ゼインさんら原告側は、自らの経験に加えて、レイシャル・プロファイリングが行われていることを裏づける警察内部の資料があるとしていて、訴状によりますと、例えば、愛知県警の職務質問のマニュアルでは、外国にルーツがある見た目で、日本語を話さない人には『必ず何らかの不法行為があるとの固い信念を持つ』などの記載があったとしていて、レイシャル・プロファイリングは存在すると主張しているんですね」

斎藤佑樹キャスター
「実際に外国にルーツがある人で、レイシャル・プロファイリングを受けたと感じている方は多いんでしょうか?」

白賀記者
「はい、東京弁護士会が外国籍や外国にルーツがある人を対象に2022年に採ったアンケートによると、約2100人中、過去5年間で職務質問を受けたことがあると答えた人は62.9%で、そのうち半数は2~5回、さらに10回以上受けたことがあると答えた人の割合は11%を超えていました。また、警察官に外国にルーツがあると判断された理由として、9割以上が身体的特徴からだと感じたということです」

森キャスター
「つまり見た目も含めた特徴で、ということですね。白賀記者も外国にルーツがあるということですが、こういった思い、経験というものは、これまであったんですか?」

白賀記者
「私は父がフランス人で、8歳のときに日本に移住してきたんですが、実際に職務質問を受けたことは実は複数回あります。例えば、新幹線から降りようとして、他の乗客はすんなりと降りていったんですけれども、最後に車両に残った私が降りようとすると、なぜか警察に呼び止められて身分を証明できるものを出すように言われたこともあったんです」

森キャスター
「何も不審な行動をしていないにもかかわらず、ということですね」

白賀記者
「私は理由とか、わからなかったです」

森キャスター
「今回は警察官という話でしたが、警察官だけではなくて、日常生活でもそういった偏見というのはありましたか?」

白賀記者
「取材したゼインさんも職務質問を通して『外国にルーツがある見た目』でも日本人として暮らしている人がいるという認識が、まだ少ないんじゃないかと考えるようになったと話していて、今回の裁判ではレイシャル・プロファイリング、職務質問に限らず、日常生活のレベルでも外国ルーツの見た目に対するまなざしについて、考え直すきっかけになってほしいと語っています」

森キャスター
「いま、そういった方が増えていますね」

白賀記者
「遠いことのように思うかもしれませんが、自分が『外国にルーツを持った見た目』をみてどう思っているのか、この裁判はそれについて考えるきっかけにもなるんじゃないかな、と思います」

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