コロナ禍 今季のインフルエンザ流行は?
日本感染症学会は、今シーズンのインフルエンザ流行について、「大きな流行を起こす可能性もある」と予測しています。前シーズン流行しなかった日本、しかしアジアの亜熱帯地域では夏に流行が認められ、警戒が必要です。
日本感染症学会は「2021年~22年シーズンにおけるインフルエンザワクチンの接種に関する考え方」を発表しました。
■2019~20、20~21年のインフルエンザ流行は?
日本感染症学会の発表によると、2019年末~2020年初頭にかけてはインフルエンザA型の小さな流行が見られました。しかし、新型コロナウイルスの流行が始まった20年2月以降は、急速に患者報告数が減少したということです。
20~21年のシーズンは、新型コロナとインフルエンザの同時流行が危惧されましたが、インフルエンザの報告はほとんどなく、同時流行は見られませんでした。
■同時流行の回避、なぜ?
20~21年のシーズン、インフルエンザと新型コロナの同時流行が回避された理由について、学会は、手指衛生やマスク着用、三密の回避のほか、国際的な人の移動の制限などの新型コロナの感染対策が、インフルエンザの感染予防についても効果的であったと考えられるとしています。
また、インフルエンザと新型コロナのウイルスでウイルス干渉(=1つのウイルスに感染すると、ほかのウイルスには感染しづらくなる)が起こった可能性もあると説明しています。
■今季2021年~22年 世界のインフルエンザは?
日本は北半球に位置するが、今シーズンのインフルエンザの流行を予測する際、季節が逆転しすでに冬を過ごした南半球での状況が参考になるといいます。
オーストラリアでは、21年の流行シーズン、インフルエンザの患者数は去年と同じように極めて少数でした。
となると、2021年冬、北半球の日本でインフルエンザは流行しないのか?
ところが、WHOの報告によると、アジアの亜熱帯地域での状況は違うというのです。バングラデシュでは2020年後半、2021年初夏に、インドでも2021年夏にインフルエンザの流行が確認され、これについて日本感染症学会は、こうした国ではインフルエンザワクチン接種が普及しておらず、社会全体での免疫が低かったと思われるとしています。
■学会「大きな流行を起こす可能性もあります」
日本の今シーズンのインフルエンザの予測は?学会は、アジアでの状況等を懸念しています。
(1)こうしたインドなどで小さな流行が繰り返されることで、ウイルスが保存され、これから国境を越えて人の移動が再開されれば、ウイルスが拡散されていく懸念
(2)日本国内は、前シーズン、インフルエンザの患者は極めて少数で、社会全体の集団免疫が形成されていないと考えられる懸念。
こういう状況の下、ウイルスが海外から持ち込まれれば「大きな流行を起こす可能性もあります」というのです。
■インフルエンザと新型コロナの同時流行について学会は
この日本感染症学会の「インフルエンザワクチン接種に関する考え方」をまとめた、倉敷中央病院 石田直副院長に聞きました。
──前シーズン、インフルエンザの流行が見られなかった。ウイルス干渉については?
もちろん、ウイルス干渉という考え方はあります。しかし、今年、小児でRSウイルスの感染が拡がりました。去年は大変少なかったのです。RSウイルスについてもやっぱり集団免疫ができていないからと考えます。
だから、去年インフルエンザが流行しなかったからといって、今年もインフルエンザが流行しないとは言い切れません。
──インフルエンザと新型コロナの第6波との同時流行は?
今季、同時流行もありえるかもしれないということです。オーストラリアでは流行が見られなかった一方で、バングラデシュとインドでは小さな流行が見られている。
現在、国際的な交流が少ないですが、少し緩和されると、そういう国々からインフルエンザウイルスが拡がる可能性はある。昨年から集団免疫ができていない可能性があるので、そこにインフルエンザの流行が起きてしまい、新型コロナと同時流行する可能性はあります。
■学会は「インフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨」
学会では、2021~2022年シーズンもインフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨している。石田副院長も「流行がいつになるかは読めないので、早いうちに受けてほしい」と話しています。
インフルエンザウイルス画像提供:国立感染症研究所