天皇陛下「国文祭・障文祭」でお言葉 全文
天皇皇后両陛下は、和歌山県で行われている「第36回国民文化祭」「第21回全国障害者芸術・文化祭」の開会式に、お住まいの御所からオンラインで出席されました。天皇陛下は、「国民文化祭」に第1回から出席されてきました。
以下、お言葉全文です。
【天皇陛下お言葉全文】
「第36回国民文化祭・わかやま2021」・「第21回全国障害者芸術・文化祭わかやま大会」の開会式に、オンラインという形で、皆さんと共に出席できることをうれしく思います。
和歌山県は、日本最大の半島である紀伊半島に位置しており、半島を縦断する紀伊山地の山々に降り注ぐ雨が森林を育み、その森から湧き出る清らかな水がやがて雄大な川や滝となり、黒潮の流れる太平洋の大海原へと流れ込んでいます。
こうした自然豊かな環境の中で、世界文化遺産の「熊野三山」、「高野山」を含む霊場と、そこに至る「参詣道」が生まれ、また、「和歌の浦」は万葉の時代から景勝の地として多くの歌に詠まれるなど、奥深く趣のある文化が生み育てられ、永きにわたって受け継がれてきました。
この和歌山の地に、全国各地で様々な芸術文化活動に取り組まれている方々を迎え、国民文化祭、全国障害者芸術・文化祭が開催されることは誠に意義深く、関係者の皆さんが開催のために払われた努力に対し、心から敬意を表します。
私たちは、今もなお、新型コロナウイルス感染症により、人々の交流に制約を受け、芸術文化活動にも大きな影響を受けています。芸術文化に携わる皆さんの御苦労や、活動を続けていく上での不安もいかばかりかと思います。
この困難な状況に向き合い、今回、新型コロナウイルス感染症への対応に心を配りながらこの大会が開催されることは、芸術文化活動への大きな励みになることと思います。
そして、芸術文化は、たとえ困難な状況にあるときにも、私たちの心に潤いをもたらし、心豊かな生活を実現する手助けとなるものと思います。
今大会は、「山青し海青し文化は輝く」というテーマの下、県内全域で様々な芸術文化活動が行われ、障害のある方もない方も、世代や地域を超えて交流しながら、喜びや感動を分かち合えるような催しが実施されると聞いています。
このような取り組みを通じて、地域に息づく文化の価値や魅力が再認識されるとともに、多くの人々の交流の輪が新たな文化の創造へとつながっていくことを期待しています。
「国民文化祭・わかやま2021」・「全国障害者芸術・文化祭わかやま大会」が大きな成果を収めることを願い、私の挨拶といたします。
写真提供:宮内庁 2021年3月30日 御所