オミクロン株“拡大”すれば医療ひっ迫も
日本では15日、新型コロナウイルスの新たな変異株、「オミクロン株」の新規感染者数が最多となりました。一方、イギリスでは、今後、入院患者も急増して「医療ひっ迫の恐れもある」として、危機感が強まっています。
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■都内在住者の“感染”確認…市中感染はいない?
東京都は16日午後3時すぎ、「都内在住者がオミクロン株に感染していた」と発表しました。この感染者は海外から帰国した人で、自宅待機中に陽性が判明しました。16日時点では、陰圧装置のある病院の個室に入院しています。15日、ゲノム解析をおこなったところ、オミクロン株に感染していることが分かりました。
厚生労働省によると、15日、新たにオミクロン株への感染が確認されたのは15人で、1日に確認されたオミクロン株の感染者としては最多となりました。これで、日本のオミクロン株の感染者数は、合計33人となりました。
15日に新たにオミクロン株への感染が確認された人たちは、今月7日から12日に羽田空港、成田空港、関西空港に到着した20代から70代の男女15人です。アメリカ、イギリス、アラブ首長国連邦、タンザニアなどに滞在歴のある人たちで、全員が、空港検疫か待機施設にいる期間に判明していました。
今回は、15人全員が、別の飛行機で到着していて、新たに1091人が濃厚接触者となりました。
16日時点では、日本で市中感染は確認されていないです。
■イギリスでは“成人の45%”3回目接種終了も感染者急増
ただ、海外では、次のような例も出ています。
フィリピンでは15日、初めてオミクロン株の感染が2人確認されました。フィリピンの保健省によると、1人は先月30日に到着したナイジェリア人、そして、もう1人は、今月1日にフィリピン航空で日本から帰国したフィリピン人の男性でした。帰国した時には、せきなど風邪のような症状があったそうですが、16日時点では無症状で、検疫が管理する施設で隔離されているということです。
日本でオミクロン株に感染した可能性については、まだよく分かっていません。フィリピン保健省は、同じ飛行機に搭乗していた乗客の濃厚接触者を調べています。
このようにオミクロン株は急速に世界中に広がっていますが、中でも注目したいのがイギリスです。
イギリスのコロナ感染者の推移をみると、今年1月ごろは大きな波に襲われ、ロックダウンが続いていました。
その後、ワクチンの普及もあって急速に減少しますが、ここ数か月、再び増加傾向に転じ、15日には、新規感染者数が7万8000人あまりと、過去最多を更新してしまいました。
今年1月時点では、ワクチンが一般にはまだ、ほとんど普及していませんでしたが、今はほとんどの人が2回接種を終えている上、さらに70歳以上の高齢者では88%、成人では45%が3回目の接種も既に終えています。それにもかかわらず、これだけ増えているというわけです。
イギリス政府は、「深刻な脅威だ」と危機感を強めています。
イギリス ジョンソン首相
「オミクロン株は、イギリス全土で広がり続けています。入院患者数の急増も、避けられない状況です」
このようにジョンソン首相も警鐘を鳴らしていますが、急速な感染爆発の背景にはオミクロン株の拡大があるとみられています。
イギリス国内でオミクロン株がどの程度広がっているかを推定するため、PCR検査で簡易的に変異株の割合を算出したところ、今月1日には、オミクロン株が占める割合は1%に満たない0.49%で、ほぼデルタ株で占められていました。
しかし、その後、徐々に増えてきて、最新の12日のデータでは、およそ34%となっています。人口の多いロンドンでは、既に60%を超える勢いで、オミクロン株の感染が拡大していると推定されています。
■重症化率低くても“拡大”すれば医療ひっ迫の可能性
オミクロン株の感染力が強くても、「重症化はしないから大丈夫」という声があります。
しかしイギリス政府は「たとえ重症化率が低くても、医療を圧迫する可能性がある」と警鐘を鳴らしています。イギリスの首席医務官は、記者会見で次のように解説しています。
オミクロン株は感染力が非常に強いとされているので、例えば「2日間で倍になる」と仮定すると、感染者数は、ある日を1とした場合、2日後には2倍、4日後には4倍、6日後には8倍、8日後には16倍…と、雪だるま式に増えていきます。
入院患者数も一定数はいるので、感染者が倍々で増えていけば、これに比例して入院患者数も増えていくということになります。そうすると、医療ひっ迫につながる可能性があると指摘しています。
重症化率が低くみても、感染者の母数自体が増えていくので、安心はできないということです。
イギリス政府の医療部門トップは、オミクロン株について「まだ不明な点も多いが、これまでの知見やデータをみる限り、我々は深刻な脅威に直面している。相当数の患者が病院で治療を受けることになるのは確実で、クリスマス直後には、それが誰の目にも明らかになるだろう」と危機感をあらわにしています。
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イギリスでは急速にオミクロン株が広がっている現状がありますが、当然、それがそのまま日本に当てはまるか、どうかは分かりません。ただ、1つ確実に言えるのは、「重症化率がたとえ低くても、感染力が非常に高ければ、おのずと医療ひっ迫につながる可能性がある」ということです。私たちも対岸の火事と眺めるのではなく、感染が落ち着いている今こそ、最悪の事態に備えた準備を進める機会と捉えた方が良さそうです。
(2021年12月16日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)