【解説】真冬の避難生活3万4000人超 私たちにできる支援は…
鈴江奈々キャスター
「地震発生から4日目となり避難されている方の人数が増えています。石川県によりますと、県全体で3万4000人を超えていて、被災した地域では水や食料など様々な物資が不足しているという声が聞かれます」
「輪島市では徐々に支援物資が届いていますが、3日夜の時点で避難者1万1000人を超える人数に対して3000食しか食料が届いていないということです。毎日、3万食、水500ミリリットル5万本が必要ということですが、なかなか支援の手が届かない状況にあります。また救助の手がなかなか届かない状況も見られます。なぜ今、このような状況になっているのでしょうか」
東京大学大学院・客員教授 松尾一郎氏
「やはりマグニチュード7.6という大きめの地震と津波であったこと。広範囲で自治体が被災しました。揺れと津波で何が起こったかというと、幹線道路が使えなくなった。津波で海のルートも使えなくなった。まして空路、飛行機で飛べばいいといっても、空港も被災している。また2日の羽田の事故も大きく影響を与えていると思います」
「その中でも、国土交通大臣が3日の会見で、被災地の重要なトラック等、輸送含む道路の啓開を4日中に終わらせるのだという意思をきちんと伝えた。国の取り組みとして私は期待するし、加えて自衛隊はヘリで行けるはず。数千人(現地に)入っているということだけれども、もっと国民、私たちの安心のためには行政がどういう支援活動をしているのか、きちんと映像で示さなければいけない。報道機関を含め、国民の安心につながる(情報開示)、これを積極的に行っていただきたい」
鈴江キャスター
「陸路も含めて大きなダメージを受けていることで、なかなか支援が届かない状況となっています。そうした中で、テレビをご覧になっている皆さんも『何かできないか』と思っていると思います。石川県によると、企業・団体からのまとまった支援の提供は受け付けています。一方で、現地へ直接搬入したりすることは、救命活動などの妨げとなることがあるため今は遠慮してもらいたいとしています。また個人からの搬入、支援も控えていただきたいということです。こうした行政側の体制の中で、今、私たちはどんな支援ができるのでしょうか?」
東京大学大学院・客員教授 松尾一郎氏
「被災地としても、受け入れ側として、誰がそれを受け取るのか。加えて、それぞれの被災集落にどのように運び込むのかといったマネジメントができていないとダメなんです。ところが、自治体の職員も被災者なんです。家族がある。やはり命を守る取り組みをしなければならない。そういう意味では、全国の自治体が被災地に入っていく。そういう支援をしていくことが絶対必要だと僕は思います」
鈴江キャスター
「松尾さんは自治体の防災アドバイザーをされていますね」
東京大学大学院・客員教授 松尾一郎氏
「そうです。三重県・紀宝町も1月2日に給水車を運んで中能登町というところで給水支援をしているのですが、ものすごく活躍している。ブルーシートも持ち込んでいる。だから自治体間の防災協定がきちんとできているところはそういう支援ができる。何もできていないところは、県を含めて受け入れを拒否されることもあるので、この取り組みをもっと広げていくことが私は必要だと思います」
鈴江キャスター
「これまでも被災経験のある自治体職員の方の力が役に立っています」
東京大学大学院・客員教授 松尾一郎氏
「東日本大震、熊本地震含めてノウハウ、経験がある職員がいるわけですから、そういう方々は、応急危険度判定であったり、生活再建の支援だとか、そういうことができるわけですから、ぜひそういう取り組みを。そして国がその取り組みを支援する、推し進めていく、これをまさにやっていただきたいと思います」
鈴江キャスター
「石川県では日曜から雪が予想されるなど厳しい寒さとなりそうです。避難生活が長期になることも考えられます。冬場の避難生活でどんなことに注意が必要ですか?」
東京大学大学院・客員教授 松尾一郎氏
「冬場の避難所というのは、皆さん、経験すれば分かることですが、床が冷たいんですよ。何が起こるかといえば、床が冷たい…肌が直接触れる。そういうところでの寝泊まりを強いられる。そうするとエコノミークラス症候群を発症するんです。これは、熊本地震の例を見てもそうですが、実際に地震で直接亡くなった方の5倍、6倍の災害関連死が起こる。エコノミークラス症候群を含め、疾病、感染症に罹患(りかん)し、亡くなる方も多かった。それをなくすためには早く段ボールベッド含め、被災地に持ち込んで、避難所の環境をより良くすることが大切です」
東京大学大学院・客員教授 松尾一郎氏
「もっと重要なことは、親戚知人含めじいちゃん、ばあちゃん、お父さん、お母さん、石川に、被災地にいらっしゃるでしょう。これを避難疎開するということが必要だと思います。温かい食事、温かいお風呂、しっかり安全に、余震がないところで寝泊まりする。そういった取り組みが必要です。これは国しかできない。それをぜひ全国でやっていただきたいし、私たちも伝えていきたい」
鈴江キャスター
「なかなか陸路を使って遠くに行くというのが現状では難しい状況ではありますが…」
東京大学大学院・客員教授 松尾一郎氏
「だけど4日夜中に幹線道路を開通できれば、何とかバスで、被災者の中で高齢者の方をより安全なところに。東京でもいい。ホテルでも旅館でも、これは国が支援するしかないと思う。こういう取り組みをぜひやっていただきたい」
鈴江キャスター
「いわゆる広域的な避難ですね。そしてまた避難生活を車の中で過ごしている方もいると思うのですが、注意点をお願いします」
東京大学大学院・客員教授 松尾一郎氏
「軽自動車とかこぢんまりとした車に乗ると、寝返りが打てない。寝返りが打てないと運動ができない。そうすると大体、車の中で車中泊をされる方は水をあまり飲まない。トイレに行きたくない、行けないから。そうすると血液も濃くなる。肺血栓塞栓症になって、エコノミークラス症候群で亡くなる方も増えます。なので、車中泊をする場合は必ず1時間に1回は運動をする。水は拒否しない、トイレは常に使う。使い続ける。そういうことをぜひやっていただきたい」
鈴江キャスター
「車中泊でもそうですが、非常用電源ということで、発電するときの一酸化炭素中毒にも注意が必要です」
東京大学大学院・客員教授 松尾一郎氏
「やはり電気がないから、発電機でもって電気を起こしていろんな暖房器具を使ったりと、無理をしちゃう。ところが発電機はそこでガスが燃えているわけですから、一酸化炭素も含めて発生しているので、これは絶対に室内でやらない。練炭も室内でやらないことが必要です。そういう発電設備は外に置いて、室内ではきれいな空気の環境の中で過ごすということが必要です」
鈴江キャスター
「様々な点で注意が必要です」