東京・八王子市のまちづくり、こどもたちが提言 「こども基本法」で義務化
「こども基本法」によって、4月から国や自治体にこどもの意見を聞くことが義務化されました。小中学生が市長に提案する東京・八王子市の取り組みを取材しました。
■テーマは「日本遺産の魅力を生かしたまちづくり」
参加した学生「高尾山の魅力をもっと多くの外国人に知ってもらい、訪れてほしい」「私たちのような学生がガイドすることで、外国人と話す機会を設けることができる」
今月5日、市長らに提言をするこどもたち。東京・八王子市は、まちの将来像や地域の課題などについて、こどもの意見を聞く取り組みを2001年から続けています。
今回のテーマは「わたしたちにできる日本遺産の魅力を生かしたまちづくり」。6月、初めての会議では、各自が興味や関心を書き出し、詳しく調べたいことをグループごとにまとめました。
会議に参加した小学5年生のゆいとさんは緊張から、振り返りの発表を中学生の先輩に任せてしまいました。
7月には市内の博物館で、八王子市の日本遺産に関する情報を集め、提言に向けたグループごとのテーマを決定。しかし、この日も…。
ゆいとさん「(発表は)得意分野ではないんで」
周りの参加者「こんなところでバトンパスしちゃうの?」
あと少し、自信が足りないようです。
■発表に向け、八王子市の“危機”が判明
今回、ゆいとさんたちが調べている日本遺産とは、地域の歴史的魅力や特色を紡いだストーリーを文化庁が認定するもので、全国に104件あります。
八王子市の「霊気満山 高尾山~人々の祈りが紡ぐ桑都物語~」は都内で唯一の認定ストーリーで、桑都と称され絹産業で栄えた八王子の歴史や、高尾山信仰などに関連する30の文化財で構成されています。
発表に向け、ゆいとさんは市役所の文化財課で話を聞くうち、ある危機がわかったのです。
今月5日、日本遺産フェスティバルに合わせて開かれた、こどもたちの提言発表会。
ゆいとさん「絹の織物とかは、もうあまり使われてないから、現在はひとつの蚕農家さんしか、いなくなったそうです」
絹産業で栄えた桑の都・八王子で、養蚕業が存続の危機にあると知らせることができました。
■文化を守り、未来を担う自覚が芽生える
あるアンケートを行ったのは、小学6年生のひまりさん。学校で84人に日本遺産について聞いたところ、正しく知らない、もしくは、わからないと答えた人が57人にのぼったといいます。さらに…。
ひまりさん「日本遺産について調べるために、中央図書館を訪ねました。しかし、八王子の日本遺産が載っている本が、1冊しかありませんでした」
八王子の日本遺産にまつわる本を図書館に要望すると、市の教育長は…。
八王子市・安間英潮教育長「大至急、整備しますので、期待していてください」
こどもたちの意見が、まちを動かしました。
ゆいとさん「言いそびれたことがありまして、僕たちが最後の1個の蚕農家さんを守らないと。八王子の別名が桑都という名前なのに、蚕農家さんが1個もないっていうのはおかしい状況なので、僕たちが守っていこう」
意見表明によって、自信や勇気が育まれただけではなく、ひまりさんや、ゆいとさん自身に、まちの文化を守り、未来を担うひとりなんだという自覚が芽生えたようです。