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こどもの意見を聴く社会 小倉前こども政策担当相が施設の少年と交わした約束とは

2023年9月14日 9:40
こどもの意見を聴く社会 小倉前こども政策担当相が施設の少年と交わした約束とは

ことし4月、こども家庭庁発足と同時に施行された「こども基本法」は、すべてのこどもが年齢や発達に応じて意見を表明する機会を確保されることを基本理念のひとつにしている。こども政策の大転換から5か月あまり。こどもたちの声に耳を傾け受け止める姿勢がすべての大人に求められる中、小倉前こども政策担当相が離任に際しての会見で改めてその思いを語った。

こども家庭庁を担当する小倉将信前担当相が13日、離任にあたって会見を行った。在任中、特に印象に残ったこととして挙げたのは、なんらかの事情で親元を離れてこどもたちが過ごす、児童養護施設を訪問した際のエピソード。小学校から帰ってきて、すぐさま宿題を始めた施設の少年に、小倉氏が、何かしてほしいことはないかと尋ねると「スマホが欲しい」という言葉が返ってきたという内容である。

現在、児童養護施設では、こどもたちのスマートフォン代について、高校生が使用するものに限り、施設の費用として支出できることになっている。しかし、中学生以下であっても、学習や、部活動、それ以外の生活の場面で、こどもたちがスマートフォンでやりとりをするのは当たり前になりつつある。しかし、施設で暮らしているから、その輪に入れない。少年の「スマホが欲しい」の裏にはそんな背景があったのだ。

小倉氏は少年に「頑張ってかなえるよ」と答えたという。これをきっかけに、こども家庭庁は、スマートフォンの利用を高校生だけでなく、より広範囲に認めるため、来年度の予算に盛り込む調整を行うことになった。

こども基本法の施行で、ことし4月から、こどもや若者に関する政策を決める際には、こどもや若者の意見を聴くことが、国とすべての自治体に義務付けられた。まだまだ道半ばで、こどもの意見を聴く仕組みが十分に機能しているとは言い難い。そうした中でこのエピソードは、単なる心温まるエピソードではなく、「こどもの意見を政策に反映する」「こどもが声を上げることで環境は変えられる」という象徴的なできごとだったと言えるかもしれない。

小倉氏は、「どんな場所にいても、こどもたちが負い目なり引け目なりを感じないような社会をつくる責任が、大人にはある」と述べ、在任中、多くの困難を抱えるこどもや若者と対話をしてきた。そしてその中で小倉氏は、こどもたちひとりひとりに「意見や思いがないわけではない」という共通点を見出したという。しかし、一方で多くのこどもたちが、意見や思いを大人に発しても聞いてくれないのではないか、ましてや制度に反映されることはないのではないかという“あきらめ”を持っていたと明かし、これまで社会や大人が聴く耳を持ってこなかったことを指摘した。

振り返れば4月、こども家庭庁発足後すぐに行われたイベントでも、「こども政策は選挙のためのアピールなのではないか」と、こども記者が小倉氏に質問する一幕があった。こどもたちは、国や自治体、社会や大人が、本当に自分たちの意見を聴いてくれるのか、それを形にしてくれるのか、と期待よりもむしろ疑いの目で見ているのではないだろうか。だからこそ求められるのは、小倉氏が在任中幾度となく語ってきた、対等な目線で話を聴き、意見を尊重し、責任を持って政策に反映・昇華すること、そして反映できなかった場合なぜできなかったのかを説明することにほかならない。あの日の施設の少年のように、聴いてもらえることを待つこどもたちはまだまだいるに違いない。困難を抱える子ほど、話すことを諦めてしまう傾向もあるという。こうした状況を打破するためには、同世代の意見が社会を変えたのだと、こどもたち自身が実感できるような実績を積み上げることが何よりも重要だ。

小倉氏は会見の最後、こどもたちへのメッセージとして、「どの意見が優れていて、どの意見が優れていないということはない」とし、「ひとりひとりの意見が、参考にすべき貴重なものだから、どうか今の若者が、我々に意見を言うことをためらったり、遠慮したりしないでほしい」と述べた。そして「こどもや若者と一緒に、これからの未来をつくっていきたい」とし、「こども家庭庁が大人の組織ではなく、自分たちの組織であると当事者意識を持っていただいた上で、お付き合いいただけるとありがたい」と呼びかけた。

こどもたちも社会を構成する一員だ。その意見によって、こどもたち自身が暮らしやすい状況をつくるだけなく、大人たちが当たり前と思い込んできた慣習や制度が変わり、全世代が暮らしやすくなる可能性も秘めている。また、自分がどうしたいのか、よりよい地域、社会とは何かを考え、発信する、そして自分以外の意見も大切にして聞き合うといった人が育てば、真の民主主義につながるのではないか。

彼ら彼女らが臆することなく意見を表明できる社会、社会を動かせるかもしれないと希望が持てる状況になるのか。新大臣と歩む、こども基本法初年度の後半は、聞いた意見をひとつでも多く具現化することに期待したい。