AIを使わない日本人、注目の技術“自律型AI”で利用は広がるか
2024年のノーベル賞はAI研究が受賞しました。AIを使いイノベーションを起こす人がいる一方で、日本ではまったく利用しない人が大多数となっています。
今後、どうなっていくのか、注目の技術を専門家に聞きました。
(社会部 内田 慧)
■AI駆使し革命を起こした人
ノーベル化学賞を受賞したデミス・ハサビス氏。元は世界的なチェスのプレーヤーでしたが、コンピューターでチェスができることに関心を持ったことからAI研究の世界へ。程なくして開発した囲碁AI「AlphaGo」が2016年に人間最強の棋士を破り、世界を驚かせました。
その後、このAI技術を応用して、タンパク質の構造を予測するAI「AlphaFold」を開発。これまでのようにタンパク質の構造を都度測定するまでもなく、高精度にAIが予測するため、創薬などの分野で革新的なツールとなり、これがノーベル化学賞受賞の理由となりました。
■AIを使う人はどれくらい?
先端科学に限らず、AIを駆使して仕事の効率や暮らしの利便性を大きく向上させる人がいます。その一方で、AIに乗り遅れ、戸惑う人も出てきています。そして、実は日本こそ、AI付き合いが苦手な国の筆頭格になりつつあります。
総務省がまとめた2024年版の情報通信白書によると、生成AIを利用している人は、中国で56.3%、アメリカで46.3%、イギリスで39.8%、ドイツで34.6%なのに対し、日本は9.1%。まさに桁違いの低さです。
生成AIを利用していない理由として「使い方がわからない」が4割超。「生活に必要ない」も4割近く。日本はこのままAI利用で、世界から後れをとってしまうのでしょうか。
■AIは次の段階“自律型AI”へ
AIを使う時には細かい指示(プロンプト)を必要としますが、大まかな目的を設定するだけで、あとは自ら問題を見つけて行動する「自律型AI」の開発が進んでいます。
富士通は、サイバー攻撃から企業などのネットワークを守るAI“自律型AIエージェント”を2024年12月に発表しました。
“自律型AIエージェント”は会社のネットワーク構造を入力すると、複数のAIがそのネットワークを分析し、弱点を洗い出し対策を提案。人が対処した場合は数十日から数か月かかる作業を、このAIは最短数十秒で行うといいます。
富士通はまた、生成AIの問題点を探し出す“自律型AIエージェント”も開発しています。
生成AIに車の盗み方を質問すると、回答を拒否します。生成AIは通常、悪意を含む質問に答えないようプログラミングされているからです。しかし、悪意を隠し巧妙に質問することで、AIが答えてしまうことがあり得ます。富士通のAIエージェントは、生成AIのこのような弱点を見つけ出すことができるといいます。
今後、AIはどのようになっていくのか。富士通研究所所長の岡本青史さんに聞きました。
「(2024年は)社会生活のいろいろなところにAIが影響を与えた年だと考えている。ノーベル賞もAIで受賞と非常に画期的な年だった」「一方でAIに対するセキュリティーやAIが引き起こす電力問題など、イノベーションだけではなくて社会課題を作り出しているということが露呈した一年だった」「2025年はAIエージェントによって、AIが引き起こす問題、偽情報や、あるいは電力問題だったり、そういうものを(AIで)解決していく」
■一人ひとりにカスタマイズ
人工知能学会の会長で慶応大学教授の栗原さんも、これからのAIとして自律型AI、特に利用者一人ひとりに合わせてカスタマイズされるAI技術に注目しています。
「すべての人間は個性・くせがある。人工知能もいかに自分のことを理解するか。一人ひとりが自分専用のAIを持つ。自分にひとつドラえもんじゃないけれど、それが常に自分といっしょにいることによって、僕自身が何をしたいのか、ちゃんと理解してくれて先回りする。自律化の研究と合わせて、個人適用が進んでいくだろう」
こうなると、現状生成AIに奥手な日本人にも利用は広がっていくかもしれません。