吉本ばななさん、村上春樹さんの名前も──Kindleで“偽”書籍ナゼ? 出版社「こんなに恐ろしいことが…」/弁護士「冒とくだ」
誰でも本を出すことができるKindle上で、吉本ばななさんをはじめ著名な作家の名前を勝手に使った“偽の電子書籍”が出版される事例が相次いでいます。吉本さんは憤り、出版社側は危機感を募らせています。法的にどんな問題があるのでしょうか?
藤井貴彦キャスター
「小説『キッチン』などで数々の文学賞を受賞した作家の吉本ばななさん。彼女の名前で『世界には時間がない』という電子書籍が出版されました」
「それに対して吉本さん本人がSNSで、『私はこんな本書いてないのでもちろん法的に訴えますが、読者のみなさん間違えて買わないでください。とんでもないことです』と投稿しました」
「電子書籍などを出版するKindle上で、自身の名前で全く身に覚えのない本が出版されたと憤っています。どういうことなのでしょうか?」
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「吉本さんが訴えている作品はKindleから削除されていますが、他にもKindle上で名前を使われた著名な作家はいるようです」
「出版社の中央公論新社(文芸)はXで、『吉本ばななさん以外にも、村上春樹さん、東野圭吾さん、伊坂幸太郎さんなどの偽書籍も。ご注意ください』と注意喚起しています」
藤井キャスター
「Kindleではどういう仕組みで電子書籍が出版されていくのでしょうか?」
小栗委員長
「Kindleでは出版社が出版する本も扱っていますが、それ以外にKindleダイレクト・パブリッシングという方法で、書籍などを誰でも無料でセルフ出版できます」
「自身が書いた本のデータをサイトに送ると、作品の審査があります。ここでは差別・わいせつ表現などがないかなどの確認が行われます。これらの審査をクリアすれば、誰でも本を出版することができます。今回はこのチェックから漏れてしまったのかどうかです」
小栗委員長
「今回の事態に、出版社からは危機感を募らせる声も出ています。ある出版関係者は『こんなに恐ろしいことが起きているんだ』と驚いていました」
「講談社は『zero』の取材に対し、『出版社として著者の権利が侵害されることのないよう、これからも著者に寄り添う立場であり続けます』とコメントしています」
「作家の名前が、特に有名作家の名前まで勝手に使われるとはあまり想像できませんでした。名前やペンネームを勝手に使うことで法的に問題はないのでしょうか?」
小栗委員長
「著作権問題に詳しい田村勇人弁護士によると、名前自体には著作権がないため、著作権法違反には問えません」
「ただ名前が商標登録されていれば商標権侵害で罪に問われる可能性がありますし、著名人の名前を悪用して本を売ってもうけようとしているので、いわゆるパブリシティー権の侵害となり、損害賠償請求される可能性もあります」
「さらに、読者をだましていることにもなります。詐欺罪にもなり得るということで、『著作者に対する冒とくだ』と田村弁護士は話していました」
「私たち読者側でできることとしては、作家の公式サイトなどで出版歴などを調べればわかるかもしれないけれども、正直なかなか気づけないということです。日本テレビはKindleの運営元のAmazon側に問い合わせをしていますが、今のところ回答は得られていません」
かしゆか(Perfume・『news zero』水曜パートナー)
「作品を生み出す方々(にとって)は、これまで培われてきた功績や信頼などが傷つけられることになりかねないと思います」
「こういったことが起こらないように、(チェックする側は)名前の検索や同姓同名がいないかを調べる、いたらどうするか(検討する)など、セキュリティーを強化してほしいです。そうすることで著作者も買う側もKindle側も傷つくことがなくなると思います」
(2月26日『news zero』より)