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京都・丹後地方で在来種のタンポポの生態を探究 「丹POPO女子が見つけたこと」【ちゃれんじ探究クラブ】

2022年7月2日 15:42
京都・丹後地方で在来種のタンポポの生態を探究 「丹POPO女子が見つけたこと」【ちゃれんじ探究クラブ】

探究学習に取り組む高校生を紹介する「ちゃれんじ・探究クラブ」。初回のゲストは、京都府立宮津天橋高校宮津学舎3年の藤本和奏(わかな)さん。

藤本さんは「丹POPO女子の見つけたこと」と名付けた取り組みを通じて、京都・丹後地域の在来タンポポの生態を研究しています。どんな探究なのか日本テレビ報道局の加藤聡がききました。

 ◇◇◇

日本テレビ報道局・加藤
「生徒自らが課題を設定して情報を集め分析し、答えを導き出していく、いわゆる探究学習が今年の春から全国の高校で本格的にスタートしました。このコーナーでは、探究学習に取り組む高校生にお話を伺います」

「第1回目のゲストは、京都府立宮津天橋高校宮津学舎3年の藤本和奏(わかな)さんです。藤本さんはどんなプロジェクトに取り組んでいるんでしょうか」

藤本和奏さん
「私は『丹POPO女子が見つけたこと』というプロジェクト名で、私が住んでいる丹後地域の在来タンポポに関する調査や研究をしています」

加藤
「具体的にはどんな内容なんでしょうか」

藤本さん
「丹後地域を歩きまわって、『どんなタンポポがあるか』というのを調査したり、それがなぜそこに咲いているのかとか、そういうものを実験を通して調査しています」

■在来種のタンポポとの出会いが

加藤
「地元のタンポポに注目したきっかけは何だったんでしょうか」

藤本さん
「正直『あったから』という理由なんですが、私は中学生の時から生物多様性だったり、環境問題の解決だったりということに興味があって、外来種とか在来種などの生態系の問題があることも知っていました」

「ただ、在来種のタンポポを見たことがなくて、それでたまたま在来種のタンポポがあったから、コイツが外来種とかにやられてないんかなとか、そういうのに着目して調べてみようって思ったのが最初のきっかけです」

加藤
「在来種と外来種というお話がありましたが、もう少し詳しく教えてください」

藤本さん
「タンポポを横から見たとき、ガクのような部分が見えるんですけど、それがペトッて閉じているものが在来種で、ベランと開いているのが外来種の特徴です。かなり見分け方は簡単です」

加藤
「これが在来種。古くから日本にあるタンポポ」

藤本さん
「そうです。外来種の特徴を持つタンポポは、ペトッてくっついておらずに、バサッと広がっているような形になっています」

加藤
「赤い丸で囲った部分が外側にこう開いているということでしょうか」

藤本さん
「そういうことです」

加藤
「調べてみようと思ったのはどうしてなんでしょうか」

藤本さん
「4年に1度ぐらいのペースで、西日本でタンポポ調査が行われているんですが、かなり古い資料ですが、2010年に行われた調査の資料を見たときに、私が住んでいる丹後地域の部分だけか、ほとんどマークがされてなく、先行研究もないということなので、私がここのエリアを埋めてやろうと思ってやりました」

■タンポポの香りがする

加藤
「なるほど、具体的にはどんなふうに取り組んだんですか」

藤本さん
「顧問の先生の車に乗せていただいて、丹後中を走り回って、歩き回って探しました」

加藤
「いつ、どれぐらいの時間を使って調査したんですか。放課後とかですか」

藤本さん
「基本は土曜か日曜で、主にゴールデンウィークが結構有効に使えるんです。在来タンポポが咲いているのは、3月から5月とかなり限られていて、結構シーズンが決まっているので、その期間にみんなで調査するっていう形です」

「ただ、その調査していくうちに、こういうところに(タンポポが)あるなと、感覚ですけど、傾向が見られたりとか、あとは私は『タンポポの香りがする』って勝手に言ってるんですけど、そんなっ“ぽい”ところがあったら、もうそこを重点的にやるっていう形で」

加藤
「“ぽい”ところ?タンポポがありそうなところってどんなところなんですか」

藤本さん
「タンポポがありそうなところはすごく言葉で表しづらいんですけど、一番わかりやすく言えるのは、コンクリートがないところですね。あと、高い木がないところです」

加藤
「どれぐらいの範囲を調べることができたんでしょうか」

藤本さん
「ほとんど丹後全域を調査することができていて、その中で7種の在来タンポポを発見することができました。日本では在来タンポポは約30種類といわれていて、その中の7種類が丹後にありました」

■丹後で見つかった「在来」7種

加藤
「藤本さんが調べる前は、それが全く分かってなかったんですか」

藤本さん
「在来種は1種類だけは見つかっていました」

加藤
「調査したら7つもあったよってことなんですね」

藤本さん
「私が実際見つけたのは6つですね」

■白いタンポポ

加藤
「印象に残っている具体的なエピソードなどありますか」

藤本さん
「タンポポって黄色いイメージがあると思うんですけど、実は白色もありまして、丹後地域では白色のタンポポが2種類確認できました。シロバナタンポポとキビシロタンポポというのですが、私は元々こう黄色しかないって思ってたので、そもそも白いタンポポを見たことがなかったので、それを初めて見た時は『これは本当にタンポポ』なのかっていう当時は思いました」

「この2つの見分け方は私的には比較的簡単なんですけど、キビシロタンポポの方に関しては、いまだ丹後地域では3か所でしか見つかっていなくて、『キビシロタンポポだから、これはすごく希少なんだっていう風に実感できる自分、そういうことが分かってる自分って』と思った時が、一番うれしいです」

加藤
「なるほど。活動を通じて自分が学んだこととか、気付いたことはなにかありますか」

藤本さん
「調査をしていく過程で、人の生活と密接した、近い位置にタンポポがあるなっていう感覚がずっとあったのですが、調査をしている時に、その地域の方々に『何をしているの』って話し掛けていただいた時に、タンポポの調査をしているんだっていう色んなお話をさせてもらっていて、その時に『草を刈ったら、タンポポが増えるんだよね。不思議だよね』っていう風におっしゃっていて、その方が、タンポポが咲いているのを刈ったら、タンポポは無くなるから、なんでタンポポが増えているんだろうと不思議に思ってたんですけど、それはなぜかと考えた時に、仮に草刈りをしないでおくと、木々が生えてきてもモリモリと山のようになっていくんですけど、そこにはタンポポはなくて、なぜかというと、タンポポは光が大好きだからそういう森の中にはいないというのに、気付いた時に、だから、人々の生活のあるところにタンポポが多いんだなっということが理解できました」

「だから、環境問題とか自然を守るという意味から『自然を壊しちゃいけない』とか『木を切ったらいけない』とか聞きますが、それでも人が手を加えることを必要としている植物もあるんだなという気づきがありました。

■タンポポ【自分自身の探究】

加藤
「藤本さんの取り組みは、NPOカタリバが主催する『全国高校生マイプロジェクトアワード』で表彰されるなど、様々なところで注目、評価もされていますが、周囲の反響だったり、ご自身の手応えなどはいかがですか」

■アワード受賞

藤本さん
「率直に言うと『えらいことになったな』っていうのが一番ですね。私は周りの友達からは、おそらくタンポポが好きな高校生っていう感じだけだったと思うのですが、(賞など受賞してからは)『具体的にどんなことをやっている?』っていうのと、ただただ全国に行くほどすごいことやっているっていう風に、(周りの)認識がすごくグレードアップしたので『すごいね。すごいね』とか、『これは何ていうタンポポなの』っていう風に写真を送ってもらったりとかして、私はすごいことをしたんだなっていう風に実感しますね」

加藤
「藤本さんのプロジェクトの目標はどこにあるんでしょうか」

■藤本さん「ゴールはない」

藤本さん
「目先の目標だとマイプロジェクトアワードで発表するぞとか、小さな目標をずっと立てながら探究をしていたんですけど、正直なんかくさいことになりますけど、『探究にゴールはないな』って思っているので、何か探究をしていっているとタンポポを知るということだけではなくて、この活動に他者から見た時にどんな意義があるのかとか、私は何のためにこれをやっているのかとか、どんな価値があるのかという風に考えた時に、何か私自身がこじつけた、ただの主観なんじゃないかとか、すごく色々深い考えに辿り着いていて、その過程でそれを考えている自分が、すごく成長しているなと思っているので。自分自身の探究をしているような感覚になってきます。なので、ゴールはないです」

加藤
「探究にゴールはないということですね」

藤本さん
「はい」

聞き手:加藤聡(日本テレビ報道局)

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