73年の歴史に幕 小田原の動物園 最後に残ったサル7匹も引っ越し
神奈川県小田原市にある小さな動物園が73年の歴史に幕を閉じます。最後まで残ったのは園で生まれ育った7匹のサル。我が子のように育ててきた飼育員が思いを語りました。
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神奈川県、小田原城の天守閣のすぐそばにある「小田原動物園」。動物園と呼ぶには、少しさみしい感じですが、この地で生まれ育った7匹のおサルさんがいます。観光客にも人気で、長年、愛されてきました。
オーストラリアから来た観光客
「この辺りを歩いてみたらお城が近くにあったからこっちの方に来たんだけど、おサルさんがいたの!」
しかし、12月13日を最後に茨城県の動物園へと引っ越し、動物園も閉園となります。
司会者
「サルのお別れ会を開催させていただきます」
――さみしい?
子ども
「かわいかったのに」
子ども
「またどこかで会いたい」
小田原市民(30代)
「私も小さい頃から母に連れられてこちらの動物園に来ていたので、親子代々と見ていたサル」
“せんべつのバナナ”を持ってきた人もいました。
小田原市民(80代)
「子どもたちがあげてたりしてたからね、昔。50年以上かな。子どもが小さい頃から。他に動物も前はいっぱいいた」
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開園は1950年です。かつては日本最高齢のゾウ「ウメ子」やクマなど、70種類の動物がここで暮らしていました。しかし、小田原城が国の史跡に指定されたため、動物園は撤去されることになったのです。他の群れとの飼育が難しいというサルだけが約14年、ここにいました。
記者(2017年6月)
「雨を避けようと身を寄せ合っています」
雨にも負けず、雪にも負けず、仲良く過ごしてきたサルたち。多くの人の“人生の一部”でもありました。
元小田原市民(40代)
「遠足で来たりしました。さみしくなりますね」
小田原市民(70代)
「学校でむしゃくしゃすると気分転換に来ていた。サルに癒やされました。ありがとうを言いに来ました」
小田原市民(80代)
「向こうでもかわいがってもらって、楽しませてもらってください」
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受け入れ先が決まったサルと離ればなれになってしまう飼育員の蔦野さんは約28年、サルとともに過ごしてきました。
約28年飼育担当 小田原動物園・蔦野宗一さん
「さみしいのもあるけど、引取先が決まってホッとしている」
赤ちゃんザルを育てた時の“秘密の思い出”も教えてくれました。
――(おむつを着けた赤ちゃんザルと)写真に写っているのは蔦野さんご自身?
約28年飼育担当 小田原動物園・蔦野宗一さん
「25年以上前ですかね。おむつは作ってみたけど全然効果なかったです。人工哺育で育てたサルなので、人間と同じようにミルクで育てたんですけど」
「ここは泊まれないので家に持って帰ったりして。言っていいか分からないけど、当時はアパートだったのでペットダメだったので、隠しながら持って行って。ケースをゴミ箱で隠して、ゴミを出しているフリをして家に運んだ。そんな思い出があります」
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多くの人に愛された“お城の動物園”。子どもたちが7匹のサルに別れを告げました。
「城址公園にいてくれてありがとう。元気でね」