「ママに見えないね」褒めたつもり?「ぜんぜんイケるわ」「最低限の身だしなみ」…“趣味は美容”の男性アナと解決 美について“もやもやした言葉”
報道局ジェンダー班・白川大介プロデューサー:
直川さんにとって美とはどういう存在ですか?
福島中央テレビ・直川貴博アナウンサー:
自分を強くしてくれる “よろい” みたいな存在かもしれないです。いい服を着たとか、肌が今日化粧のノリがいいなという日って、背筋がシュッとする経験があると思うんですよ。
白川:自分に強さをプラスするための手段ということなんですね。今回は、「美に関して誰かに言われてるんるんした言葉」をテーマに視聴者の皆様から投稿を募集しました。その中からご紹介します。
──ネイルをしていて男性に「ネイルをしているんだね」とか「爪可愛いね」と気づいてもらえたこと
直川:ネイルいいねって言われるのが嬉しい気持ち、激しく同意です。東京でネイルをしているんですけど、男性が入店してOKなところと、女性専用というところがあるんですよ。新宿近辺はサロンが多くて、さっき調べてみたらあるサイトには全体で500件近くありました。その中で「メンズにもおすすめ」という項目にチェックを入れると、大体半分になるんですよ。どっちが良い悪いとかではないんですけれども、男性からしたら壁ですよね。
白川:るんるんした言葉ともやもやした言葉を集めたところ、この世の常ですかね、もやもやした言葉の方が多く寄せていただいて、こちらをいくつかご紹介します。
──「ママに見えないね」「子どもいるように見えないね」と、外見についての会話の中で耳にすることがあるのですが、モヤります。おそらく褒めているのだと思いますが、それだけじゃない気もするし、あなたの中の“ママ像”って何なんだい?という気持ちになります。
白川:自分がいい年齢の男性という立場上、極力誰かの外見についてジャッジしたりコメントしたりすることを避けているので、自分が言っちゃっているということはないと思うけど、周りの人が言っていても「それはやめた方がいいよ」とまでは思わなかったです。
直川:私も今回初めてそれが引っかかる材料になるんだなと思いました。むしろ褒め言葉になると思っていました。
白川:褒め言葉だと思って言ってしまっているパターンというのが、もうひとつあるのでご紹介します
──先日、久しぶりに高校時代の先輩(男性)に会う機会があったのですが、「変わってないね!ぜんぜんイケるわ~」と言われまして。
「おまえなんかこっちから願い下げだわ!!」と心の中で悪態をつきましたが、「若さを保っている、きれい」みたいな内容なので、言った本人も周りで聞いていた人間も、「褒めている」と受け止めているのだと思います。
なので、これについて反論したり、「嫌な気持ちになった」というと、下手をすると「自慢」ととらえられそうで心の中に留めておく他ありませんが、とてももやもやしています…
直川:私も「お前イケるわ」ってよく言われるんですよね。異性愛者の男性に。とても下品だし、女性が言われる機会が多い言葉なのかなと思いました。なにか立場が等しくなくて、言っている方が上ですよね。
白川:「お前なんかこっちから願い下げだわ」というのは、「なんで勝手に上下関係ができて、そちらが“イケる”か“イケない”かをジャッジして、そしてそれをこっちに雑に伝えてきているんだ」ということですよね。直川さんは言われたらどう反応しているんですか?
直川:恥ずかしいんですけど、プライベートの場合は笑ってごまかす。だめだとわかっているけど、自慢のようにも捉えられるのと、その場の雰囲気を悪くするので、流しています。
白川:言われた当人ってリアクションが難しいですよね。性暴力とか痴漢の時とかに使う「アクティブバイスタンダー」という言葉があって、第三者としてそこに居合わせた時にどう行動するかという研修を受けたこともあります。自分が周りにいる時に、「ちょ、ちょ、ちょーい!」って言うのを繰り返していくことで、少しずつその人たちの考えを変えていくというのが近道かもしれないなと私は思いました。
■「モテたくてキレイになりたい訳じゃない」自分の“好き”を基準に
──美容院で「こうした方が男性受けも良いですよね」と言われました。サービストークだとは思いますが、別に男性にモテたくてキレイになりたい訳じゃないんですけどね。
直川:私はこの容姿で言ってくる人はあまりいないんですけど、美容って、マジョリティーの人にとっては異性の目によるものが大きいと思うんです。
白川:基準がね。美とは何かというときに、「より高く異性から評価されるもの」という定義のパターンも結構ありますよね。直川さんは美を追求するとき何を基準としていますか?
直川:自分が好きになれるかどうかですね。例えば、私は結構眉毛が濃いですが、今のトレンドは薄眉ふんわりです。でも私はかつての芸名で言うとブルゾンちえみさんのようなエスニック感のあるメイクが大好きなんです。トレンドや流行にあまり興味がなくて、流されない性格だというのもあると思います。
白川:何が良しとされるかという基準が他者からの評価で決められている状況が一生続くことは結構大変だと思います。どこかで自分軸の基準にした方がいいし、「私はモテたくてキレイになりたいわけじゃありません」とはっきり言ってもいいのではないかと思います。
白川:次に「美で自分を好きになるためにやっていること」というテーマでこんな投稿をいただいています。
──気持ちが表情に出ている気がするので、口角を上げるように意識しています。姿勢もまっすぐにすると、自分に自信がついて、いつもの服やメイクも少しだけ輝いて見えます。
直川:私は姿勢と口角で目標にしている人がアンミカさんなんです。さんま御殿に出演した2回目でご一緒させていただきましたが、アンミカさんって背筋も収録2時間ちょっとあっても崩れないし、周りに笑顔が伝染するくらいに口角を上げているんです。見習いたいと思って、私もここ2,3年ぐらい口角は常に上げているように意識しています。
──仕事で使う服の一部はオーダーメイドで作ってます。服で自分の身体を支えてもらうことによって楽な姿勢で働ける、というのは自分らしくいられる「美」の一種だと信じてます。Body Positiveに生きていきたいです。
直川:スリムな人、ふくよかな人も含めて、今メーカーがすごいですよね。その体型の人をターゲットにしているブランドとかもあったりして。一言言いたいのが靴。私、足が大きいんですよ。
白川:何センチ?
直川:27センチ。ないんですよ、レディース。
白川:靴の話は、トランスジェンダーの人たちと取材とかでお話ししていると、やっぱり皆さんおっしゃることが多くて。海外のブランドとか、日本のブランドでも、大きめのレディース靴を主にトランスジェンダー当事者の人向けに作っているところも増えてきているので、ちょっとずつ変わってきているところかなと思います。
白川:今回美についてきいてきたんですけど、一方で美について頑張っていないとだめというのも、メッセージとしてちょっと違う気がして。どんな状態の自分も愛せるように、直川アナが心がけていることや、そういう人たちに伝えられるメッセージって何かありますか?
直川:私はたまたま美容が好きだっただけで、美容に関心がなくてもいいと思います。自分の個性とか自分らしさを見つけるのって、“好き”から派生することが多いと思うんです。
白川:自分を好きになるためのことが直川さんにとっては美容だったけれども、人によって違うんじゃないかということですね。
直川:「社会人として最低限の身だしなみ」とかってよく言われるじゃないですか。それぐらいの最低限を守っていればいいと思うんですよ。
白川:正直僕、“女性だけがマナーとしてメイクをしなきゃいけない”という社会人ルールの方もどうかと思うんですよね。同じ時間に出社するために、女性の方が全員ちょっとずつ早起きしているじゃないですか。なんかそれって全然平等じゃないなと思うから、美に対して頑張らないという選択肢もあるんじゃないかなって思ったんですよね。
直川:ありますよね。私がたまたま興味があって突き詰めた分野というだけで、注目していただいていますけれども、美容に限らず、“自分らしい”を“好き”っていうツールを通して見つけられたら、みんながいきいきします。
白川:美容でなくても、「自分を好きになるために、自分の好きなものを極める」。
直川:まさにそうですね。
日テレ報道局ジェンダー班のメンバーが、ジェンダーに関するニュースを起点に記者やゲストとあれこれ話すPodcastプログラム。MCは、報道一筋35年以上、子育てや健康を専門とする庭野めぐみ解説委員と、カルチャーニュースやnews zeroを担当し、ゲイを公表して働く白川大介プロデューサー。
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