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2日前まで避難も帰郷……輪島市19歳「新入職員」の思いを藤井キャスターが取材 「住宅解体」に市民が列 能登半島地震3か月

2024年4月2日 9:46
2日前まで避難も帰郷……輪島市19歳「新入職員」の思いを藤井キャスターが取材 「住宅解体」に市民が列 能登半島地震3か月
能登半島地震から3か月。輪島市役所で辞令交付式があった1日、藤井貴彦キャスターは、自身も被災しながら地元に戻ってきた19歳の新入職員を取材。仕事ぶりを追い、思いを聞きました。市役所には、公費で住宅を解体するために住民が詰めかけていました。

■被災地から中継…手つかずの輪島朝市

藤井貴彦キャスター
「能登半島地震で甚大な被害が出た、石川・輪島市に来ています。ここは朝市通り周辺です。大規模な火災が発生し、建物約240棟が焼けました」

「ある土産店はすすだらけで、もともとの店内がどのような状況だったかも分かりません。入り口を見ると、窓ガラスがあったものと思われますが、それが全て割れて抜け落ちている状態です」

「地震発生から1日で3か月が経ちますが、焼けた建物のほとんどが手つかずのままの状態で、輪島市では3人の安否がいまだに分からないままとなっています。また石川県内では今も(2次避難含め)8109人が避難生活を余儀なくされています」

「新年度を迎えた1日、市役所勤務を始めた輪島市出身の19歳の男性を取材しました。2日前まで避難生活をしていて、自身も被災者でありながら地元のために働く一歩を踏み出した、その思いを聞きました」

■入庁初日も「動きやすい格好」で

藤井キャスターが訪ねたのは、被害が甚大だった輪島市の市役所。元日に最大震度7の地震があった午後4時10分、犠牲になった方々に祈りがささげられました。

市役所では1日午前、4月から加わる職員への辞令交付式が行われました。坂口茂市長が「輪島市職員に採用する」と、職員らに辞令を渡しました。

藤井キャスターが取材したのは大宮正晴さん(19)。税務課に配属された、社会人1年目の新人職員です。

藤井キャスター
「まずは入庁おめでとうございます」

大宮さん
「ありがとうございます」

藤井キャスター
「(執務スペースにある)この机をもらえた今の感想は?」

大宮さん
「やっと今から働けるんだな、という実感がわいてきたという感じで…」

藤井キャスター
「4月1日というと、だいたいスーツを着てデスクに座るのではと私は想像していたのですが…。(カジュアルな)格好には何か理由があるのでしょうか?」

大宮さん
「現場に行ったりということで、スーツじゃなくて動きやすい格好になっているのでは(と思います)」

入庁早々、大宮さんが向き合う仕事の1つが、被害の状況を確認し、住民に「り災証明」を出すことです。市役所には、熊本・福岡・広島の各県など各地から人が集まり、罹(り)災証明チームを構成しています。

■自宅で被災…ガラスが割れて土砂が

大宮さんも地震が起きた日、自宅で被災した1人。自宅の室内を案内してくれました。「ここは後ろから土砂が入ってきて。ガラスが2枚くらい割れ、土砂が入ってきたという感じですね」

大宮さんは「何も考えられなかったですね。急すぎて。(地震)デカかったですし。あとは、家族大丈夫かなと思って」と振り返ります。

幸い家族は無事でしたが、土砂崩れで道路が寸断され、大宮さんが住む地区は一時孤立状態になりました。その後は金沢市に避難していましたが、輪島市役所で働くため、3月30日に自宅に戻ってきました。

■珠洲市と輪島市などの7860戸で断水

大宮さんは蛇口をひねり、「(水が)出ないって感じですね」。3か月がたった今も、珠洲市と輪島市を中心に約7860戸で断水が続いています。そうした中、戻ることを決めました。

大宮さん
「そこで離れたら地元がなくなるじゃないですけど、消えていくので。それ残すために市役所入ったのもあるので、自分の好きな地元を残していきたいなとは思って」

■早速現場へ…被害の状況を丁寧に計測

1日午後、大宮さんは早速、被害を受けた家の調査へと向かいました。「あからさまな被害の所とかは写真撮ったりして…」と先輩職員から指導を受けます。この日は教わりながら、家の傾きなど被害の状況を丁寧に測っていきます。

藤井キャスター
「大切な計測だったと思います」

大宮さん
「大事な作業というのは初めての自分でも分かったので、誤差とか生まないように慎重にと思いながらやっていました」

り災証明を申請し、市に調査を依頼した住人の浜谷毅さん(52)。家の中を見せてもらうと、亀裂が多くの場所で入り、割れていました。室内の引き戸も動きません。「もう1回あんな地震が来たら(家が)潰れる不安はあります」

調査の結果、もし半壊以上と判定されれば、取り壊しを公費で行う対象となります。

■公費解体の申請開始で…多くの市民が

市役所には1日、多くの市民の姿がありました。この日から、建物の公費解体に関する申請の受け付けが始まったためです。そのブースでは、職員が「こっちに向いて倒れている?」などと、住人から被害の状況を聞き取っていました。

公費解体は、住宅の所有者に代わって行政が家を解体・撤去するものです。申請に来た深田良明さん(68)は「30年超えたくらい。自分で建てた家だからそれなりに(思いは)あります」と言います。

■県内で2万4000棟が全壊または半壊

深田さんに、自宅に案内してもらいました。震災当時、2階にいたといいます。深田さんは、目線の高さにある2階部分を指差しました。

深田さんは「見ていたら、この桜の木がだんだん近づいてくる。屋根が、桜の木に当たる。(それで)桜の木が倒れてくる。で、見たらアスファルトの道路が見える。2階から。そんな状況です」と振り返ります。市から全壊と判定されました。

県内で全壊もしくは半壊した建物は2万4000棟近くに上ります。公費解体はそのうち、個人宅や店舗などが対象です。

深田さん
「早くやって、早く結論づけないと、自分たち前に進めないから。なので解体して更地にしないと、あと進めない」

前に進むために必要なことだと、深田さんは話しました。

■大宮さん「不安抱える市民の力に」

1日の仕事を終えた新入職員の大宮さんに、話を聞きました。

藤井キャスター
「お疲れさまでした。初日を終えてどうでしたか?」

大宮さん
「まだ全然分からないことだらけです」

藤井キャスター
「これからどんな社会人になっていきたいと思っていますか?」

大宮さん
「地震で不安を抱えている市民の方々も多いと思うので、そういう人たちの力にちょっとでもなれたらなと思います。(自分も)被災したからこそ大変さも分かると思うので、そういう面でちょっとでも力になれたらなと思いながら(やっていきたいです)」

能登半島地震から3か月。244人が亡くなり、3人が安否不明です。今も石川県内では8109人が避難しています。

(4月1日『news zero』より)