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経済的備え「地震保険」問い合わせが増加

2024年4月1日 18:03
経済的備え「地震保険」問い合わせが増加
提供:三井住友海上

能登半島地震発生から3か月。能登半島地震では住宅被害が多かったこともあり備えの一つである地震保険が改めて注目されています。損害保険協会によりますと相談窓口への地震保険に関する問い合わせや相談件数は去年の12月に比べて今年1月、2月はおよそ3倍に増加したということです。地震保険は必要か? 現状を検証しました。

■地震保険とは

地震保険とは、地震や津波によって、建物や家財に損害が出たときに保険金が支払われるものです。

地震保険単体で加入する事はできず火災保険とセットで契約する必要があります。地震により火災が発生し家が焼失した場合、火災だからといって火災保険だけでは保険金を受け取ることはできません。

■全国的に相次ぐ地震

今年に入り、全国各地で地震が相次いでいます。元日の能登半島地震、2月下旬からは千葉県東方沖で、一時、地震活動が活発となった他、3月は、福島県や埼玉県などで最大震度5弱が観測されました。

世界でも有数の地震多発地帯である日本において、今後も大きな地震が起きることが懸念されています。

高い確率で発生が予想されている大規模地震には、◎南海トラフ地震、◎日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、◎首都直下地震、◎中部圏・近畿圏直下地震があります。

一方で、2016年に起きた熊本地震は、30年以内の発生確率が1%未満とされていましたが発生しました。また、地下に隠れていてまだ見つかっていない活断層もあるとされています。

■住宅・生活再建にはお金かかる

突然、襲いかかってくる大地震。今回の能登半島地震のような大きな地震で自宅が全壊した場合、国などの支援金だけで自宅を再建するのは厳しいのが現実です。内閣府によると東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の新築費用は、平均して約2500万円、それに対して公的支援として受給できるのは、善意による義援金をあわせてもおよそ400万円にとどまり2100万円足らない形となりました。

また、この他にも家財の買い替え、引っ越し費用など、住宅・生活の再建には多くの費用がかかります。

■地震保険の意義

日ごろから2000万円といった大きな額の貯蓄をしておくことは、なかなか難しいと思われます。事前に出来ることはないのか。「経済的な備え」の一つとなるのが「地震保険」です。

地震保険にはある原則があります。それは「ノーロス、ノープロフィット」。つまり保険会社の利益を織り込んでいないのです。

地震保険は政府と民間の保険会社が共同運営しているもので、補償内容や保険料は法律で決まっているのでどの保険会社で加入しても同じです。

また、地震保険は損害のすべてを補償する仕組みではありません。建物と家財それぞれ火災保険の保険金額の30~50%で、建物は5000万円まで、家財は1000万円までといった「契約金額」の上限もあります。

■補償 調査

さらに実際に払われる保険金は損害の状況に応じて以下のように「契約金額」に対する割合で決められています。

・「全損」の場合は契約金額の100%・「大半損」で60%、・「小半損」で30%・「一部損」で5%

被災した際損保会社に保険金を請求すると、保険会社の専門の担当者が現地を調査して判断します。

一方で大規模な地震の場合は、甚大な被害が出た地域を一括して判断し、迅速な保険金の支払いを優先することがあります。

日本損害保険協会は今回の能登半島地震で火災による焼失や津波による流失が認められる地域(石川県珠洲市・輪島市・志賀町・穴水町・能登町の一部地域)では航空写真を用いて被災状況を確認し、地域単位で「全損地域」「一部全損地域」を認定しました。

共同調査を実施することで、認定地域とされた街区に所在する地震保険の対象は、現地調査を省略して保険金の支払いが可能となります。今回の能登での対応は東日本大震災以降、初めてということです。

■地震保険の支払い額 発表

能登半島地震で住宅や家財が壊れるなどした被災者に対し、損害保険会社が支払った地震保険金の総額は、3月8日時点で610億円に上ったと発表されました。過去7番目の規模となっています。

■地域によって加入率バラツキ課題

ただ「損害保険料率算出機構」によりますと日本は地震大国にもかかわらず地震保険の加入率は35%程にとどまっています。

能登半島地震で大きな被害が生じた石川県は県内でも地域によって差はありますが、世帯加入率は30・2%で全国の平均世帯加入率を下回っています。

過去の大震災の経験など、危機意識の違いから都道府県でバラツキがあるのが現状です。
(損害保険料率算出機構調べ「地震保険の世帯加入率」2022年)

都道府県別にみると、加入率上位 宮城53.6% 愛知44.7% 熊本44.2%

加入率下位 沖縄17.9% 長崎20.9% 島根21.8%

2016年に熊本地震を経験した熊本県は40%を上回っています。東京都は37.5%と全国では7位でした。

大きな地震を経験した地域は加入率が大きく伸び、大地震の予想確率の高い地域も加入者が多くなる傾向があるということです。

ある損害保険会社では能登半島地震発生以降石川県の地震保険の加入者数が例年に比べわずか2か月で1割ほど増えたといいます。

財務省の担当者は「地震はいつどこで起こるかわかりません。地震保険は官民共同の保険であり、被災後の生活再建を助けます。年度替わりで新たな生活の準備をする人が多い中で、地震というリスクへの備えとして災害が起こる前に加入の検討をお願いしたい」と話しています。既に加入している方も、補償対象・内容が十分か見直しすることが大切です。