福島第一原発 3号機爆発…黒い煙の正体と今後の廃炉作業
東京電力福島第一原発の事故から11年が経過します。爆発した3号機の「黒い煙」は約270メートル上空まで達しており、この「黒い煙」の正体も徐々にわかってきました。また「廃炉作業の今後」についても取材しました。
(DX取材部 川崎正明)
■「黒い煙」は約270メートル上空まで
去年、日本テレビは福島中央テレビが撮影した爆発の映像を最新技術を使って解析しました。映像の解析技術も進歩し輪郭、色の調整、コマ数を増やすなどした結果、今まで見えなかった「爆発の瞬間」などが見えるようになりました。
空高く噴き上がる煙は丸い形を保ったまま、一気に約270mも上昇していたことがわかりました。他にも上空にあがった大きなガレキを、近くに建つ煙突の高さから換算すると約32mあることがわかりました。
事故の分析・検証は原子力規制庁も行っており、日本テレビは解析した映像などを提供、国の検証チームは新たな取りまとめを行いました。
その結果、黒い煙の正体は、原子炉建屋内で「可燃性ガス」が発生し、そのガスが推進力を伴いながら上昇し、燃焼していったのではないかというものでした。
つまり、水素爆発を起こした“水素だけ”ではこんなに大きな「黒い煙」は出ないであろうということです。そして「可燃性のガス」の存在がクローズアップされたのです。
■「可燃性ガス」はケーブルやウレタン、塗料などから…
では、「可燃性ガス」はどこで発生したのでしょうか?
実は格納容器の中には総延長、数十キロメートルにわたってケーブルが張り巡らされています。他にも機械の保温材として「ウレタン」というスポンジのような柔らかい素材が使われています。また鋼鉄製の機械などには錆びないように塗料が塗られています。
これらケーブル、ウレタン、塗料などが高温になって溶けて燃え「可燃性のガス」が発生したのではないかと考えられました。
今年までに国の検証チームや東京電力は、実際にケーブルやウレタンを燃焼させる実験を行いました。するとプロパンやトルエンなどの化学物質が検出されたのです。
国の検証チームは、これらの化学物質が「黒い煙」の正体ではないのかとみています。今後、さらに調査を進めていくとしています。
■溶け落ちた核燃料「燃料デブリ」をどう回収?
廃炉に向けての最大の課題は核燃料が溶け落ちて固まった「燃料デブリ」をどう回収するかです。
福島第一原発では1号機から3号機まで3つの原子炉がメルトダウン。核燃料は原子炉圧力容器を突き破り、格納容器の底の部分に溶け落ちて固まっていると見られています。これが「燃料デブリ」と呼ばれるもの。周囲にあった金属製の構造物と混じり合い非常に硬いといわれています。
これは政府が作った廃炉の工程です。
2011年12月、原子炉が冷温停止状態になった時点を起点として、2013年11月、4号機燃料プールからの使用済み核燃料などの取りだし開始までを第1期。
燃料デブリ取りだし開始までの期間を第2期。
そして廃止措置終了までの期間(30年~40年以内)を第3期と国は示しています。
現在は第2期。この段階で1年遅れています。そして今年、2号機の燃料デブリ取り出しが始まる予定です。
今年は試験的な取り出しのため、取り出す量は“耳かき1杯程度”とされています。燃料デブリは1~3号機で880トンあるといわれています。それだけの量を今後、取り出さないとならないのです。
この先の第3期では以下の事が行われます。
・1、2号機プールから1007体の核燃料の取り出し。
・シールドプラグと言われる格納容器の蓋の部分に付着している高濃度の放射性物質セシウムの除去。
・汚染水・処理水対策。
・推計880トンの燃料デブリ取り出し。
・建屋解体。
これだけの事を行わないと廃止措置は完了しません。
40年かかると言われる廃炉まで最大であと29年。2051年までに廃炉完了にいたるのは現実的には厳しいと考えます。
日本では燃料デブリの取り出しを行った事がありません。取り出した後も極めて長期間にわたり強い放射線を出し続けます。デブリの保管場所も決めなければなりません。このように非常に高いハードルをたくさん抱えています。これが福島第一原発の現状です。