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チェルノブイリ原発で電力供給が停止 専門家「福島第一原発の状況と似ている」

2022年3月10日 2:22
チェルノブイリ原発で電力供給が停止 専門家「福島第一原発の状況と似ている」

ロシア軍によって制圧されたウクライナのチェルノブイリ原子力発電所で9日、電力の供給が停止したことが明らかになりました。放射性物質が大気に拡散される恐れもあり、“最悪のケース”はどういう状況が考えられるのでしょうか。専門家に話を聞きました。

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有働由美子キャスター
「ウクライナには原発が4か所、15基あります。閉鎖しているチェルノブイリ原発はロシア軍が先月24日に占拠していました。さらに、今月4日には、ヨーロッパ最大規模のザポリージャ原発が攻撃を受けて、占拠されています」


有働
「チェルノブイリ原発で、外からの電力の供給がストップしたという情報が入っています。IAEA(=国際原子力機関)は9日深夜、『安全性に重大な影響はない』と明らかにしました。鈴木さんはどう見ますか?」


長崎大学・鈴木達治郎教授
「もし、今、IAEAがそう言ったとしたら、現地の方々と連絡がとれたのかもしれません。そうでなかった場合でも、おそらく、すぐに重大な事故につながる可能性が少ないと判断したのかもしれません」

有働
「ウクライナはバックアップの非常用ディーゼル発電機があり、48時間使えるとしています。それ以上に停電が長引いた場合、どのような恐れがありますか」


鈴木教授
「原子炉はもう全部止まっていますが、使用済み燃料がプールに入っています。そのプールが冷却できなくなりますと、次第に水の温度が上がっていって、いずれ燃料が露出する。それによって、放射性物質が大気に拡散される恐れがあるということです」

有働
「大気に拡散される恐れがあるというのは、最悪のケースはどういう状況が考えられるのでしょうか」


鈴木教授
「最悪のケースは、どういう原因かまだよくわかりません。もし、意図的に電源喪失させたり、あるいは、作業員の復旧作業を妨害するようなことがあれば、例えば、プールを損壊させたり、水を抜いたりして、冷却能力を意図的に落とす恐れがあります。その場合は、非常に短期に使用済み燃料が露出して、大量の放射性物質が大気に拡散される恐れがあります」

「これは、福島第一原発の4号機の状況とほぼ似ています。あの時は、水が入っていたので良かったのですが、状況がわかるまでは、水が無くなってしまったと(仮定)すると、東京も含めかなり広範囲に放射性物質が拡散されるという恐れがありました」

有働
「チェルノブイリ原発は首都・キエフから110キロ、国境からは16キロということです。先生は先ほど『大量に』とおっしゃいましたが、広い範囲のおそれもあるということでしょうか。そうならないためには、何が大事になってきますか?」

鈴木教授
「まずは、電源復旧ですね。48時間以内に電源復旧ができるかどうかが鍵になります。それから、作業員の活動が自由にできているかどうか。これをもし、ロシア軍が阻害するようなことがあれば、いずれそのうちに、他のことで障害が出るかもしれません。この2つが鍵になると思います」

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有働
「9日時点でのウクライナの原発などの状況をここで整理したいと思います。小栗さん」

小栗泉・日本テレビ解説委員
「ウクライナではロシア軍によって、今問題のチェルノブイリ原発、ザポリージャ原発が占拠されました。また、ウクライナの原子力規制当局は6日、『東部・ハリコフにある核物質を扱う研究施設が、ロシア軍の砲撃を受けた』と発表しました。さらに、『ウクライナ国内第2の規模の南ウクライナ原発に向けても、進軍しているのでは』という情報があります」

小栗
「核政策に詳しい一橋大学大学院・秋山信将教授は、ロシア軍が原発を攻撃する狙いについて、次の3つを主にあげています」

・エネルギー供給源支配下に
・“侵攻の障害”施設を管理下に
・“原発さえ標的”恐怖心をあおる

小栗
「また、ロシアは、『ウクライナが核開発を行っていた』と架空のシナリオを作りだして、『軍事侵攻の正当性を作ろうとしている』という見方もあります」

有働
「この状況を、辻さんはどういうふうにご覧になっていますか?」

辻愛沙子・クリエイティブディレクター(『news zero』パートナー)
「原発で何かが起きているだけで、現地の方は不安が大きいと思います。さらに、ロシア軍が制圧しているとなると、復旧の作業も進むのかという恐怖も大きいと思います。どんなロジックがたとえあったとしても、絶対にあってはいけないことだと思います」

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有働
「鈴木さん、今後チェルノブイリについて、警戒しておくべきことは何でしょうか?」

鈴木教授
「ロシア軍の意図がよくわからないですが、作業員がちゃんと作業できるように、ロシアがそういう方向で動いてくれれば、いいですけど。そのためにも、IAEAが直接、ウクライナの作業員の方々と連絡をとって、状況を把握することが大事だと思います」

(3月9日放送『news zero』より)