福島第一原発…廃炉はいま 今年「燃料デブリ」取り出しへ 課題の“処理水”は…
事故からまもなく11年を迎える東京電力の福島第一原発。26日、廃炉の現場に日本テレビのカメラが入りました。
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福島県いわき市にあるレストランでは、地元の海で取れた魚を使った海鮮丼やメバルの煮付けが提供されていました。
お客さん
「すごくおいしいです。この子が煮魚がすごい好きなので」
新鮮な海の幸をはぐくむ福島の海で今、ある計画が進行しています。
それは、福島第一原発から出る「処理水」を海に流す計画。事故から11年を迎える原発の中は、どのような状態なのでしょうか。
構内では今も、1日約4000人の作業員が廃炉作業にあたっています。
今年、2号機では、溶け落ちた核燃料「燃料デブリ」の取り出しがいよいよ始まる予定です。しかし、その量はわずか耳かき1杯分程度。全体で約880トンあるといわれる燃料デブリをすべて取り出す技術は確立されていません。
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今回、原子炉建屋を間近から歩いて撮影することが許されました。
地面の上に鉄板を敷くことなどで放射線を抑えています。建屋の壁はパネルがはがれているなど、当時のままのところもあります。
取材した時の最大の放射線量は、毎時149マイクロシーベルト。この場所に7時間近くいただけで、一般の人が受ける放射線量の1年分を浴びることになるのです。
今、廃炉作業で大きな課題となっているのが、たまり続ける「処理水」の処分についてです。
溶け落ちた燃料に触れ、放射性物質を多く含む汚染された水。これを「ALPS」と呼ばれる設備などを通して処理したものが処理水です。
しかし、セシウムなどの放射性物質を取り除きますが、最後まで「トリチウム」という放射性物質は取り除くことができません。そのため、タンクを作ってため続けているのです。
その数、現在1061基。これには限界があると言います。
東京電力HD 福島第一廃炉推進カンパニー リスクコミュニケーター 木元崇宏さん
「タンクをこれ以上作れない現状からすると、かなり厳しい状況になってきていると」
去年4月、国は処理水を、国の基準より大幅に薄めた上で海へ放出する計画を決定しました。
トリチウムは自然界にも存在する放射性物質です。原発を運転することでも発生するため、日本を含め、世界各地の原発で基準を満たすよう薄めた上で、これまでも海に流しています。
処理水は来年の春から約30年かけて海に放出される予定です。海への放出は、どのようにして行われるのでしょうか。
処理水は、新たに作られた測定・確認用のタンクにためられます。ここで濃度を測定し、基準を満たしていると判断されると、放水立坑と呼ばれるプールのような場所に送られます。
その途中で、大量の海水と混ぜ合わせられます。薄める海水の割合は処理水の100倍以上とされています。このプールで再び濃度を測定した後、海に放出されるのです。
放出先は沖合約1キロ。海底トンネルを伝い水深12mの場所から海中へ。この場所は漁業権が設定されず、漁が行われていない区域です。
しかし、漁業関係者の合意は得られていません。
小名浜機船底曳網漁業協同組合 柳内孝之理事
「我々のような水産業に携わる人たちとの合意形成っていうのがなされた後に、対処すべき問題だと思いますね。まずは延期というか中止をしてほしい」
地元の鮮魚店では、放出後の風評被害を懸念しています。
いちよし商店 芳賀弘治店長
「正直、やめてほしいですよね。震災の時でも相当な打撃があったのでね、それからまた打撃というと、本当にどうしていいかわからなくなっちゃいますよね」
国は4月以降、海のモニタリングを強化し、トリチウム濃度の推移も詳しく記録していくことにしています。測定地点も、今までの4倍の約50か所に広げる方針です。
約1年後に迫る処理水の海洋放出。安全の担保はもちろん、地元からの十分な理解と合意を得ることが求められます。