「電子処方せん」全国で導入へ……メリットと安全性は? 178施設のみでスタート 「そこまで求めていない」「急では」の声も
薬局に紙を持参する必要がない「電子処方せん」が26日から全国で導入されます。その利点や使い方、セキュリティー対策などを考えます。ただ現状では導入を決めていない医療機関が多く、国は2025年3月までに全ての医療機関と薬局で始めたい意向です。
■紙が不要に…薬局がオンラインで確認
有働由美子キャスター
「医療機関で処方してもらい、紙で持っていく処方せん。これが電子化され、26日から全国で導入されます。診察を受けた際に医師が作った処方せんを薬局がオンラインで見ることができ、紙の処方せんがなくても薬を買えます。どんなメリットがあるのでしょうか?」
■「重複」「併用」避けられるメリット
小野高弘・日本テレビ解説委員
「1人1人の薬の処方データ3年分がサーバーに記録され、どの病院でもどの薬局でも見られるようになります」
「患者は複数の病院にかかることがありますが、ある病院で処方された薬の情報を別の病院が見ることができ、重複を避けようという判断ができます。また、併用は危険なのでやめようという判断もできます」
■利用する患者は…どう手続き?
有働キャスター
「今は、薬局にはお薬手帳を持って行ってチェックしてもらっていますが、忘れてしまうこともあります。電子処方せんを利用しようとすると、どんな手続きをすればいいのでしょうか?」
小野委員
「健康保険証をマイナンバーカードとひも付けます。そのマイナンバーカードを使って窓口で本人確認すれば、電子処方せんが発行されます。健康保険証を使った場合、医師や薬剤師は過去の処方せんの内容までは確認できない仕組みです」
「なぜなら、健康保険証は顔写真もついておらず、セキュリティーはそれほど高くないからです。個人情報である過去の薬の情報までは開示できないということです」
有働キャスター
「サーバーがハッキングされて個人の処方せん(の情報)が流出するということを考えると恐ろしいですが…」
小野委員
「厚生労働省に聞くと、電子処方せんはハッカーから守るためにインターネットからは分離して、限られた人しか見られなくするといいます。ただ、それが各医療機関の電子カルテとはつながるので、病院や薬局のセキュリティーも大事になるそうです」
有働キャスター
「大病院のハッキングは実際ありました。セキュリティーは本当にしっかりしてほしいと思います」
■多くの医療機関が導入せず…理由は?
小野委員
「(電子処方せんは)準備ができたところからスタートですが、26日から始められるのは全国で178の施設だけです。まだ導入しないという医療機関が多く、理由を聞きました」
「都内のクリニックは『メリットは理解するが、患者もそこまで求めていないのではないか』と指摘。埼玉県のクリニックは『新型コロナウイルス第8波の対応もあり、新たなシステムの構築は作業の負担が大きい』と話しました」
「都内の薬局は『今回の導入は急ではないか。どんな準備が必要かも分かっていない』と訴えました。政府はこうしたところへの理解を進め、2年後の2025年3月までに全ての医療機関や薬局で開始したい考えです」
有働キャスター
「始まるといっても、一番身近なかかりつけ医で浸透するかどうかなど、課題がありそうです。高齢化社会を考えると、診察や薬のことを的確に管理するのは必要だと思います。多くの人が安心して利用できるよう、しっかり説明しながら進めてほしいと思います」
(1月23日『news zero』より)