【全文公開】天皇陛下「過ごした日々、鮮やかに…」オックスフォード昼食会でお言葉
28日、イギリス・オックスフォードを訪れた天皇皇后両陛下は、オックスフォード大学パッテン総長主催の昼食会に臨み、天皇陛下がスピーチを行われました。陛下のお言葉全文は以下の通りです。
(表記は宮内庁発表のまま)
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天皇陛下のおことば
(パッテン・オックスフォード大学総長主催昼食会)
パッテン総長
トレイシー副総長
御来賓の皆様
パッテン総長から温かい歓迎のお言葉を頂くとともに、私と雅子のためにこのようなすばらしい機会を設けていただいたことに、心から御礼申し上げます。
モードレン・ブリッジを通り過ぎ、荘厳な街並み、空に広がる「夢見る尖塔」を眺めるにつれ、私がオックスフォードで過ごした日々が、鮮やかに蘇(よみがえ)ってきました。入学時の新しい生活への期待と不安の入り交じった複雑な気持ち、帰らざる人となられたハイフィールド先生とマサイアス先生とのやりがいを感じるとともに愛に溢(あふ)れたチュートリアル、マートン・コレッジでの昼食後や夕食後のMCR(Middle Common Room:大学院生・博士課程履修者等用のコレッジ内談話室)で仲間と飲んだコーヒーの香り。オックスフォードのありとあらゆるものに、瞬く間に過ぎ去っていった二年間の思い出がぎっしりと詰まっています。
この昼食会の後には、私より5年遅れてベイリオルで2年間学ぶ恩恵にあずかった妻の雅子が、名誉法学博士号を授与していただく栄誉に浴します。雅子と私は、オックスフォードで経験した何ものにも代え難い日々について、しばしば楽しかった思い出を語り合います。唯一避ける話題は、マートンとベイリオルのどちらがオックスフォードで最古のコレッジかという問題です。このように、オックスフォード大学が私と雅子に与えてくれている比類ない豊かな機会とすばらしい思い出を、これからも大事にしていきたいと思います。また、日本の若者達が、オックスフォード大学のみならず海外へ留学して広く世界に学び、私たちと同様のすばらしい経験を得られることを希望します。そして、このオックスフォードで日常的に見られるような、国を越えた人と人とのつながりが、やがて世界中の国々や人々との前向きな関係を紡ぎ出すものに発展していけば、私にとって大きな喜びです。
私がオックスフォードを離れた後も、日本とオックスフォード大学の関係に様々な進展があったことを、大変嬉(うれ)しく思います。私が1991年に新館建設予定地の鍬(くわ)入れ式に参加した日産日本問題研究所は今や全英随一の日本研究機関へと成長を遂げ、また、オックスフォード大学と日本企業との間では、糖尿病や代謝疾患、金融工学に関する産学連携も進んでいると聞きます。
オックスフォード大学は、数百年の長きにわたって継承されてきた伝統の重みと、知的好奇心と深い教養により生み出された「新しいもの」を見事に融合させることにより、世界をリードし続けてきました。これからも、全てのコレッジやそこに活動する英国や日本を含む世界中から来ている学生や学者・研究者などがお互いに切磋琢磨(せっさたくま)し合いながら、日英両国のみならず、世界の未来を導き続けていくことを願います。